ジーグの居た世界で:1
「あはは…全て…無くなったのか…」
ある人物が、広大な白い砂漠の中心で、
途方に暮れていた。
彼女の周りには、
生物がひとつも存在していなかった。
文字通りの孤独だった。
もちろん彼女の他にも人間は存在していた。
しかし、今となっては跡形もなかった。
彼女の自らの判断ミスのせいで、
こうなってしまったのだった。
結果は変えることは出来ない。
「結果は変えられない」
「なら、最初からやり直せばいい」
「だが、どうやれば…」
独り言を話している。
相手でもいるかのように。
まるで自分の中に二人の存在が、
互いに言葉を発しているかのように。
「確か君は、
今までの経歴を知らないと言ってたね」
「ああ、私はさっき生まれた。強いて言うなら、
名前は…『悪竜』。
君の心の中の破片だよ」
「だから私は今、こんなに感情が薄いのか」
「そういうこと。聞かせてくれよ。
君の見た全てを」
この話は、彼女が目にしたこと。
時刻は数時間前のことであった。
私達と幻想郷は、暗黒に包まれた。
初めは、空に浮かんだ謎の黒い球体だった。
「何よあれ、風船?にしては大きいか」
「にとりの作った産物でしょうね。
気にすることはないと思うが」
それは甘かった。
その球体は、1時間で二倍の大きさになった。
そして、その球体に接近した。
「球体…じゃない…空間?」
「待って、まだ触れるな」
「じゃあ颯花、どうするのよこれ」
「知らん…霊夢が何か思いついてくれてると、
そう思ってついていったんだが…」
「…」
試しにその球体へ木の棒を投げてみた。
その球体に触れた途端、
木の棒は中へ吸い込まれた。
出て来たのは白い灰だった。
「黒が白を…吐き出したって…?」
「駄目だ、まだ情報が少ない…。
パチュリーに聞けばいい。
あいつの情報量なら何とかなるはずだ」
そして、颯花は紅魔館へと向かった。
霊夢には触るなとだけ言っておいた。
「なあパチュリー…気になることがあるんだが」
「なになに?想い人?」
「違う。今から話す。
神社の真上に、黒い球体の様な空間が出来た。
その空間に物を投げたら白い灰で戻って来た」
「黒い球体…白い灰…他に何かないかしら?」
「そうだな…音か…?
鳴き声の様な…それと、暗黒の向こうに、
赤い人影が…視力的に良く見えなかったが」
「待って、そこへ連れてって」
「ああ…分かった」
「…!…。…みんなに戦闘の準備を知らせて」
「溜めるな…早く言え。霊夢、頼む」
「とりあえず、あの赤いのがこっちを見てる」
「全部話せ…!何が起きてる…!」
「…。
あと5日ほどで、それを見た者は存在が消える。
黒い球体の向こうの世界の住人と、
触れる者を拒む球体が、
自ら身体を膨張し、自分から触れてくる」
「…?何かの伝説…なのか?」
「最初に確認されたのは、別の世界のとある国。
生命が消えた後の、奇跡的に残っていた日記。
そこに記載されていた」
「生命の存在が消えるか、全て白い灰となるか。
その二択という訳か?
球体が膨張し、全てを包み込むのが先か。
赤い人影が生命を狩り殺す…か」
「あくまで日記、信憑性は低い。けど
5日で一国の人材が全て消えるのは、
全くもっておかしな事。実際ならありえない」
「ありえない事が…現実に起きているのか…」
「よし、全員集まったわね」
霊夢はそう言った。
周りを見るといつの間にか人が集まっていた。
「まずは私が結界で囲んでみるわ」
霊夢は球体を四角い結果で囲んだ。
しかし、球体は結界を軽く飲み込み、
内部から白い灰が出るだけだった。
「…。次、妹紅。燃して」
「えっ意味あるのか?」
「いいから…まずは属性攻撃で確認する
少しでも小さくなったらそのまま破壊する」
「あっああ…」
妹紅は炎で球体を焼き尽くした。
しかし、変化はなかった。
「次は水、にとり」
「おうよ!」
水で包み込んだが、内部に吸い込まれ、
再び白い灰となった。
「…チルノ」
「あたいの出番ね!」
その残った水分を凍らした。
しかし、そのまま球体が大きくなり、
飲み込まれて白い灰となった。