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思考の壁、その先には。

「ユウキー。ご飯できたよー。」


下の階から母さんの僕を呼ぶ声が聞こえた。僕は下の階にも届くように「はーい!」と声を張り上げた。手元にある読みかけの本から部屋の壁掛け時計に目をやると時刻は午後6時を過ぎていた。

ああ。今日もこうして1日が、流れるように終わっていくんだな。むしろこれは時間がどうのというよりも僕自身の1日の過ごし方に問題があるのではないか。そう考えつつしおりを本に挟み、部屋を出て階段を降りていく。肌寒い季節に変わりつつあるので、足の裏から伝わる床板はその冷たさを増していた。


階段を降りていく途中から、母さんの作った夕飯の良い匂いが漂ってきた。リビングに顔を出すと母が言った。

「早く冷めないうちに食べてね。」

そう言いながら母さんの手には僕が普段使っている茶碗一杯に白いご飯をよそう。上にはゆらゆらと白い湯気が立っていた。



「ごちそうさま。」

僕は食べ終えて空になった茶碗等を持って流しに向かった。

「もういいの?おかわりあるよ。」

母さんは僕より少し遅れて食卓についたのでお碗の中にはまだご飯が入っていた。大丈夫。そう一言添えて、僕は自分の部屋に戻った。

毎日の夕食時に父さんの姿はなく、いつも母さんと二人きりの晩ごはん。思えばこのことを悲しいと感じたことはない。物心ついたときには父さんとはすれ違いの毎日で、顔を会わせるのはいつも朝の短い時間。別に喧嘩をしているわけではないし、嫌ってもいない。

ただ、そこにいないだけ。


僕は部屋に戻って机の上の単行本に手を伸ばした。本の背表紙を指先に掴んで手元に引き寄せる。しかしその時に挟んでおいたしおりがするんとページの隙間から落ちる。重力に従ったアルミ製のそれはかつんと音を立てて、僕の足元に転がった。

僕はその場にしゃがみこんで、落下したしおりはそのままに読みかけの本を開いて、流し読みながらページを繰った。

自分が今まで読んでいた物語に記憶が刺激されていく。はっきり記憶に刻まれたシーンだったり、雰囲気だけが脳内に感触として残っていたり。やがて記憶に新しい場面でページを繰る手は止まり、僕はその先を読まずして落としたままのしおりを拾い上げ挟む。


ベッドの上に文庫本を投げて、椅子にどかっと座る。

自分は何がしたいんだろう。ふとそんなことを思った。机の上に頬杖をつく。虚しい。苦しい。思考が一気に一杯になるけれど、大したことは何も考えていない。はずなのに。


「はあー…」


丸一日を読書で過ごしたことによる反動なのか、優しい母に対して優しくできない自分へなのか。


毎週のこの曜日のこの時間はこんな訳の分からない思いで思考が一杯になるから少し嫌だ。また明日から続く学校と同じくらいに。

久しぶりの投稿です。ちょっと自分で打っておいてアレですが、自身でも「???」と思う部分があります。


設定なしのまま、こうして次話投稿させてもらいましたが無事に完結するんでしょうか…。話が四方八方飛び出しつつあるので怖いですね。


まぁいいや。←

完結までスロウペースで、やれるとこまでやってみます。

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