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8 作戦実行

「あ、もうこんな時間! すごい集中してたわね、私達」

秋斗君は壁の時計を見て、うーんと伸びをした。

「どうもありがとう、さくらちゃん。家まで送ってくよ。あとは帰りながらもうちょっと話そう」

「うん」



階段の踊り場で、思わぬ人とすれ違った。

「瀬川さん」

声を掛けられて固まる。

「・・え? あ、さい・・先生」

最近、みんなの協力のおかげで、授業以外会わずに済んでいた科学の浅井先生だった。


バチリと目があって、自然と秋斗君の後ろに半分隠れる。


「こんなところでお会いするなんて奇遇ですね。勉強ですか?」

先生は相変わらずのぎろっとした目で、私と秋斗君を見る。


「・・高木君と仲が良いんですね」

「はい。おれ達はいつも一緒ですよ」 秋斗君が即答する。

先生と目を合わせたくなくて視線を下げてたら、先生の左手に包帯が巻かれているのに気づいた。

「・・ケガ、されたんですか?」

午前にあった先生の授業では包帯なんてしてなかったなと思って、思わず聞いてしまった。

「ああ。さっき、実験の練習をしていてちょっと。大丈夫ですよ」

先生は包帯の巻かれた左手をさすり、私に視線を合わせ・・


「ありがとうございます、瀬川さん」

少し目を細めて、ほほえんだ。

初めて見た、先生の笑顔らしい笑顔。

思ったよりずっと優しい感じで、意外過ぎてびっくりした。

「それじゃ、おれたちはこれで失礼します」

秋斗君が会話を終了させ、思考停止状態になった私の手を引く。


「はい、さようなら。気をつけて帰るんですよ」

後ろから小さく、浅井先生の声を聞いた。




*****


浅井先生の問題はとりあえず置いておくことにして、作戦はすぐに決行することにした。秋斗君にとって不安なことは一秒でも早く解決させたいし。


次の日、土曜なので九時頃に家を出た。

もちろんはるにいはまだ家で寝てる。

秋斗君の家に着くと、お母さんも不在のようですぐに部屋に通してもらった。


「今日は家の両親、会社に最後のあいさつに言ってるんだ。

辞めさせられたっていうのにご丁寧に二人揃って菓子箱持ってお礼を言いに行くなんて、可哀想すぎだよ」

秋斗君が悔しそうに言う。

これはもう、一分でも早く解決しないと。今回の手紙の忠告でダメなら、次の手を考えないといけないし。


昨日二人で書いた手紙をもう一度読み返して、封筒にいれて糊付けする。

カバンから取り出したタイムマシンは、やっぱりパカパカしている。

若干、不安ではあるけど、やるしかない。

「秋斗君、日付は?」

「五カ月前のこの日、おれはサッカーの試合があって、父さんも大事な取引の契約が取れたって、夜、お祝いで外食したんだ。

だからその日の二週間くらい前なら、まだ契約する前だし取り返しがきくんじゃないかな。」 カレンダーを指差しながら確かめる。

「そうね、何ヶ月も前だと忠告の意味がわからないかもしれないものね」


「時間は、いつにする?」

「夜・・の方がいいのかな?」

「でも、もし見つかったら夜中に私も一緒だと怪しすぎじゃない?」

「じゃあ、おれ達が学校からまだ帰って来てない三時頃、とか?

見つかっても今日は 早かったからって言い訳できるし。あ、その時間は母さんもよくスーパーに行ってることが多いな。タイムバーゲンやるらしくて」

「決まりね」

私はタイムマシンの日付と時間を合わせる。

点滅はしてるものの、ちゃんと数字も変わるし、これは大丈夫っぽい。

場所はこの部屋のベッドとは逆のこっちの壁際。

ここだったら家の中に出れそうだし、もし二人でぐーぐー寝てるとこをお母さんに見られてもベッドで寝てるよりは アヤしくないし。


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