41 タイムマシンを作ったのは
先生の独白は続いた。
「私は自分の思いを抑えきれなくなり、意を決して思いを告げました。
そうしたらあなたはこう言ったんです。
自分は誰も愛せないと。
幼いころに両親が離婚して以来、人を好きになることができないのだと、悲しそうに笑いました」
ハッとした。
それはつまり、そういうことだ。
タイムマシンというものがなくて、パパとママがあのまま離婚していたら、そうなっていたら、なるはずだった私の姿だ。
「私は・・・あなたの為に何かできることはないかと考えました。
もしあなたのご両親が別れる事なく幸せに過ごしていれば・・・。
もし過去に戻ることができたら、 過去を変えることができたら・・・。
私はそう考えて、途中で諦めていたタイムマシンの発明に、もう一度取り組んだんです。
発明は成功して、私は過去と未来とを自由に行き来できるようになりました。
あなたとの会話で、ご両親が離婚したという大体の年は分かっていました。
ですが、具体的にどうすればいいのか、私には何も思い浮かびませんでした。
人と接することの苦手な私が、あなたのご両親を説得するなど、・・・とてもできるわけがありません。
だから、 過去のあなたに任せようと思って、あの日あの場所にタイムマシンを置いておきました。
賢いあなたなら、きっとタイムマシンを使って、目の前の問題を解決するだろうと思いましたから」
そうだったんだ。
あのタイムマシンは、偶然私が拾ったんじゃなくて、・・・私が拾うように、先生があそこに置いておいたんだ。
「私にとっては過去であるここで、教師という立場を得ました。
少々大変でしたが。
あなたの様子を見ていて、あなたのご両親の問題が解決されたのを確認してから、一度未来に戻りました。
・・・未来であなたに会って、私は本当に驚きました。
あなたは、・・私が、見たこともないくらい明るい顔で楽しそうに笑っていて、
以前の暗い表情など微塵もなくなっていました。
私のタイムマシンで過去を変えた成果に違いないと、私は自負しました」
先生はぐっと自分の拳を握り、でもすぐにその手を力なく下ろした。
「・・・でも、あなたは、私にとっては手の届かない存在になっていました。
容姿はますます綺麗になって、性格も・・誰にでも笑って声を掛け、誰からも好かれている。本当に・・・眩しいくらい、美しい女性になっていました。
私は改めてもう一度、あなたに恋をしました」
未来の自分のことなのに、浅井先生は真っすぐ私の目を見て話す。
まるで私が、先生にとっての未来の私であるかのように。って同じなのか。
私は、私なんだから。でも先生にとっての私は未来の私であって・・
ダメだ。ワケ分かんなくなってる!




