40 先生の目的
次の日の学校の帰り道。秋斗君と一緒に下校中。
今日は部活がない日なので時間が早い。
今日の授業の話をしてたら、話題は自然に浅井先生のことになった。
「さくらちゃん、浅井の目的ってなにかな?」
「未来を自分の望むものに変えるためだって言ってたわね。どういうことかな。
好きな人に告白したいとか。あー、でも好きな人は未来の人なんだっけ?」
どっちがどっちなのかよく分からなくなる。
「待てよ。十二年後から来たって言ってな。・・・先生は二十五歳だから、十三歳の浅井が、今現在ここにいるってことか?」
「あ! ホントだ。同い年ね」
「なんか裏がありそうだな。先生に聞いてみるか。ホントのこと教えてくれるかは分からないけど。ナゾの多い人だなあ、浅井は」
本当に、謎だらけだ。
何を考えてるか分からない普段の態度も、たまに怖いくらい真剣に見つめてくるあの視線の意味も。
メールしたら、その日は先生も早帰りの日で、もうすぐマンションに着くと言うので、私達も行くことにした。
このモヤモヤを早く解決したい!
*****
「十二歳の私は、ここにはいません。正確には、日本にはいません。
アメリカの学校に通っています」
浅井先生は昨日とは打って変わって私達の質問にサラッと答えてくれた。
いつものリビングで。ココアとクッキーとチョコを出してもらって、私は早速チョコレートに手を伸ばしていた。
「アメリカとか、すっげー!」
「すごい。さすがタイムマシンを作っちゃう人は違いますね。天才なんですね、浅井先生は」
「・・・天才、ですか」
先生はちょっと遠い目をした、ように思えた。
「天才なんて、人より少し、記憶力が良くて計算するのが早いだけですよ。
人間としての能力は、はっきり言って底辺です」
・・・? どういうことだろう。
先生の言っていることが理解できずに首を傾げる。
そんな私を見て先生は少し笑った。
「浅井先生、あんたの好きな人って、さくらちゃんだろ」
秋斗君がまたしても爆弾を落とした。
しかも、よりによって、そんな。
私が硬直してる間も秋斗君は冷静に続けた。
「見てればわかる。あんたのさくらちゃんを見る目、好きですって言ってるようなもんだよ。バレバレ。
・・・あんたの、好きな綺麗で素敵な人は、未来のさくらちゃんだろ?」
驚きすぎて、チョコを手に持ったまま固まってる私。
「本当、さすがです。何もかもわかってしまうんですね」
浅井先生はふう、とコーヒーに手を伸ばして口をつけた。
「高木君の言った通りです。今から十二年後の未来で、初めてあなたに会った私は、一目であなたを好きになりました。
さくらさん。・・・あなたは綺麗で、知的で、美しくて。
同い年でしたが、私は大学で臨時の教授の助手として、あなたの研究の指導に当たっていました。・・・何度か、言葉を交わしました」
先生は目を閉じて、ここにはないものを見ながら話している。
先生にとっては過去の、私達にとっては未来の話を。
「・・・あなたはいつも、寂しそうでした。
固く心を閉ざし、人との接触を拒否していて、いつもひとりでいたんです」
それは誰の話?
秋斗君と私は目を見合わせて首を傾げた。




