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36 生活能力ゼロ

先生のマンションに来るのは今日で六回目。

浅井先生に会うことにあんなに文句言ってた秋斗君だったけど、おれも一緒なら別にいいって感じで、来たら来たで先生とあれこれ話したり本を借りたり、私より楽しんでるんじゃないかって思える。


そう言えば、ここに来ると、お昼ごはんはいつも出前を取ってくれる。

ピザ、ラーメン、うどん、ピザ、って感じだから今日はラーメンなんだろうか。

奢ってもらって文句を言うつもりはないけど、先生、飽きないのかなあ。

外食やデリバリーばっかだと、食費だってかなりな額になってるはず。

このマンションも高そうだし。

プリントの整頓のお手伝いをしながら、気になったので聞いてみた。


「先生ってお給料けっこう高いんですか?」

先生は唐突な私の質問に、パソコンに向かっていた手を止めてこっちを向いた。

「どうしました? 急に」

「僕も聞いてみたいな。ここのマンションも高そうだし、パソコンも何台もあって、図鑑とか本もめちゃめちゃある。

あ、発明品で特許取って金持ちになった、とか?」

秋斗君も同じことを思っていたようだ。


「いえ。私の発明品はまだどれも特許を取ったり実用できるような段階ではないので。

唯一成功したタイムマシンも色々問題があって公表はしていませんし。

なので発明で得たお金はないです。

ですけど、試作品を作ったり材料や資料を 買ったりと、発明には多くの資金が必要なので・・・」

先生は言葉を濁している。

・・・? そんなに言いにくいこと?  まさか、偽札を作ってるとか?


「で?  結局どこから金は出てるの?」

相変わらず秋斗君はずばっと突っ込んでいる。


「・・・大変申し上げにくいのですが、タイムマシンが完成してすぐに、未来に行って、その、・・・宝くじで」

「たからくじぃ!?」

私と秋斗君の二人の声がハモった。

先生は苦笑いして頭を掻いている。

「すみません。その・・・手っ取り早く大きな金額が欲しくて」


何故か私達に頭を下げる先生を見て、秋斗君は笑い出した。

「ははっ。浅井先生って、ホント・・・なんでめちゃめちゃ賢いのに、そういう 発想はおれ達と同レベルなの。

その時さくらちゃんがいたら、そんなんじゃ駄目よって怒られちゃうよ?」

「本当に、そうですね。すみません」

なんでそこで私が出てくるの、と突っ込みたいところだけど、

ぐっと堪えておいた。


「でもまあ別に、当然だと思うけど? 

タイムマシンがあったら宝くじで大儲けしようってのは、誰でもみんな考えることでしょ。謝ることはないよ、先生。

なんかすごい、親近感沸いた。ハル先輩が聞いたら大ウケしそう」

確かに大爆笑するでしょうね。なんてったって真っ先に宝くじを提案した一人ですもの。

秋斗君は先生をからかいながら大笑いしてる。つられて先生も笑ってる。

・・・この二人のやりとり、見てると面白いなあ。




もうすぐ十一時半。先生は時計を見て携帯を取り出す。

「お昼ですね。なにかとりましょうか」

やっぱり今日もデリバリー。

先生が手に持つチラシは予想どおりラーメン。

ラーメンはもちろん好きだけど、なんだかもう飽きたかな、って。


「あの、よかったら私、なにか作りましょうか?」

「え? いいんですか! あ、でも・・・食材も器具も何もないですし」

「なにも?」

そう言えばここを片付けた時、キッチンは妙に綺麗に片付いてると思ったけど。

先生に案内してもらって、もう一度キッチンを見てみる。

ガス台のうえにコンロはない。ナベもヤカンもフライパンもない。

お茶碗もお皿もフォークもない。

・・・この人、どうやってここで生活してるんだろう。


その疑問に答えるようにキッチンの隅に置かれたいくつものゴミ袋。

ちゃんと分別してるのはエライ。

でもゴミ袋の中にはお弁当とカップラーメンの容器ばかり。

そりゃ、電子レンジと電気ポットがあれば十分だって思うよね。

でも、これは人として、いいんだろうか。


ちなみに秋斗君が開けた冷蔵庫の中は、コンビニのお弁当が二つ、それと水やジュースのペットボトルがずらりと並んでいた。


「すごい。これはある意味すごいね。大学生の一人暮らしよりすごい。

ひどいな。生活能力ゼロ」

秋斗君は呆れを通り越してなんか感心している。

「炊飯器もないんですか? あ、箸すら?」


あはは・・と小さな声で笑う、先生。

ないな、これは。


ナベやフライパンがないからパスタや炒飯は作れないけど、パンを買ってきて、サンドイッチくらいならできるかな。

「簡単な物で良いなら作ります。コンビニやデリバリーばかりでは飽きるし、なんか身体によくないですし。

すぐ近くに私がよく行くスーパーがありますから、お買い物に行って来ます」

「おれも行くよ、さくらちゃん」

「あ、では、これで、お願いします」

先生は財布からお札を出して私にハイ、と渡した。


「いっ、いちまんもいりませんよ! 千円くらいで」

「へ? そうなんですか? まあ、足りないよりは多めに持って行った方がいいでしょう。お願いしますね」

私のポーチの財布に、万札が入るなんて、初めてかもしれない。

多くて五千円札。


・・・先生、金銭感覚ズレてるなあ。

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