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35 ずっとそばにいたいよ

自転車の後ろの荷台のところに座布団代わりにってマフラーを置いてくれる。

私はスカートだし横向きに座った。

「しっかりつかまって。行くよ」

秋斗君の背中にぎゅっとしがみつく。


自転車を漕ぐ秋斗君は、何もしゃべらない。

沈黙に耐えきれなくて、控えめに声を掛けた。

「・・秋斗君?」

秋斗君は前を向いたまま小さく「ごめん」と答えた。


「おれ・・二人が大ピンチだったって言うのに何もできなくて。

ホント、情けないよ」

自転車だから顔は見えないけど、きっとツラそうな顔をしてるって分かる声。


「さくらちゃんが、おれに連絡しなかったのも、しかたないって頭ではわかってるんだけど、くやしいんだ。

おれじゃなくて・・浅井を頼ったことも。おれは、なにもできないのに、

浅井はタイムマシンでさくらちゃんを色々助けてる。

おれがもっと頼りがいのある大人だったら・・」


「秋斗君っ!」

私はえいっと自転車から飛び降りた。


秋斗君は突然の私の行動に驚いて、キキッとブレーキをかけ自転車を止めた。

「あ、危ないな、さくらちゃん!」

私は回り込んで秋斗君の目の前に立った。仁王立ちで。


「どうしてそんなこと言うの!?

私は、秋斗君のこと、めちゃくちゃ頼りにしてるよ!

大人とか関係ない! 私が好きなのは秋斗君なんだからっ!

それに秋斗君が大人だったら、私と付き合うと、ろ、ロリコンになっちゃうよ!

いいの!?」


私のあまりの剣幕に秋斗君は目を真ん丸にして呆然とした。

・・・私も冷静になるとなんか恥ずかしいことを叫んだ気がする。


「ロリコンはイヤだな。やっぱり同じ、中学生同士がいいよ」

秋斗君は笑いを堪えきれずに、ぶぶっと吹き出した。

「も、もう、笑わないで。秋斗君が変なこと言うからだよ」

「だって、浅井に負けるのはヤだからさあ」

横を向いてぷくっと頬を膨らませる秋斗君。

軽い口調がさっきの重苦しい空気を吹き飛ばしていた。


「過去に飛んだのは私一人だよ。先生はタイムマシンを貸してくれただけ」

「そっか。・・・でも、浅井の前で、泣いたんでしょ?」

「あ、あれは戻って来て安心したら、涙が止まらなくなっちゃって・・・」

「うわ、本当に?」

自分で聞いておいて驚く秋斗君。あ、私もしかして墓穴掘った?

「・・・」

「・・・浅井。許さん・・・」

秋斗君は背後に建つ先生のマンションの方をキッと睨んだ。


「あの・・・あのね、秋斗君。先生、けっこう良い人だと・・」

「それ、それ! さくらちゃん、最近、浅井に気を許し過ぎだってば」

思わずフォローを入れようとすると、それ自体にダメ出しが入った。


「そんなこと言ったって。・・・もう、秋斗君こそ、気にし過ぎだってば。

先生にはちゃんと好きな人がいるって写真も見たでしょ。すごい好きだって、一途な感じだったじゃん」

確かにねーって同意してくれるかと思ったら、秋斗君は腕を組んでちょっと

考え込んでしまった。

「・・どうしたの?」

「そのことだけど。なんか、ひっかかるんだよね。あの写真の女の人。あれって、もしかして・・。

・・・とにかく、浅井には警戒して。

おれがいないところで会わないように。オッケー?」


「はーい。了解しました」

明るく元気に返事をしたら、逆に大きくため息をつかれた。

「・・・本当にわかってんのかなあ。

さくらちゃん、なんか警戒心ってものがあんまりない感じだし」


「じゃあ、秋斗君。いっつもそばにいてよ」

「もちろん、できることなら四六時中ずーーっとそばにくっついていたいよ」

「な・・」

冗談で言ったことに、間髪入れずに真面目な声で返されてしまった。

真っ赤になった私を見て、秋斗君はくすくす笑う。

「・・・からかった?」

「ううん。大マジメ」


そこから家まで、自転車を押して歩きながらずっとおしゃべりして帰った。


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