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31 たすかった

坂北公園の十五時五分前に飛んだ。

このマンションから走って五分ちょっと。

・・・大丈夫。ちゃんと間に合う。走りながら自分に何度も言い聞かせた。



公園に着くと、小さなグランドで遊ぶはるにいの姿。

一緒にいるのは大きい子も幼稚園くらいの小さい子もいる。

みんなでサッカーをやってる。近寄って行くとすぐに私に気づいた。


「あれ? さくらじゃん。どうしたんだよ? 

お母さんとクッキー作ってんだろ?」

いつものはるにいだ。

さっきの集中治療室でのはるにいを見た後だからか、涙が出そうになった。

私の表情に、はるにいは眉を寄せ、声のトーンを下げた。

「おい、さくら? ・・・なんかあったのか?」

あ、いけない。時間が迫ってるんだ。

私ははるにいの腕をぐいっと引 いて、みんなのところから離した。


「はるにい、よく聞いて。私、今タイムマシンで来たの。

今からだいたい五分後の三時十分にこの公園の道路で事故が起こるわ。

誰かが飛び出して、それを庇って、 はるにいが車に轢かれる」

「・・マジ?」

はるにいの表情が凍る。

「信じて。たぶん一緒に遊んでいるこの子たちの誰かがボールを追いかけて車道に出るんじゃないかと思うの」

「わかった。サンキュ、さくら」

はるにいは私の頭をくしゃっと撫でて、子ども達の方に走って行った。


「おい、みんな! ボールは置いて、ちょっと集まれー! 今から輪になってハンカチ落としやろうぜ!」

はるにいの掛け声に、みんながわーいと集まった。

はるにいは私にパチッと目配せした。 うまい、はるにい。これなら大丈夫。

中学生になってハンカチ落としはないわーって普段なら思うけど、

輪っかになってやる遊びなら、公園の外に出にくいし。


これで事故は回避できただろう。

時計は十五時九分。私はぐるっと公園を見回した。


!!! うそっ・・・!


目に飛び込んできたのは、グランドとは逆の遊具の横の出入り口の辺りに、とてとてと外に向かって歩く、足元のおぼつかない赤ちゃんの姿。

迷ってる場合じゃない!

私はその子に向かって思いっきり走った。

間に合って!


「・・きゃあ! あやめっ!! 車がっ!」

後ろで女の人の悲鳴。

赤ちゃんは道路のど真ん中、私の目の前でコケた。

お願い、届いてっ!!

飛び込むように手を伸ばして赤ちゃんを抱き寄せる。

夢中で腕の中に抱え込んだ。


その瞬間、

すごい力でぐいっと引かれて、私は後ろに倒れ込んだ。

目の前ギリギリを大型トラックがビュンと走って行く。



た、すかった・・・



「おまえが・・轢かれてどーすんだよ、バカ」

はっとして振り返ると、はるにいの膝に乗っている私。

私の腕の中の赤ちゃんはぎゃーぎゃー大泣きしている。

あまりに一瞬のことで、何がなんだか分からなかったけど、とにかく助かった。


腕に抱く小さな命も、背中に感じるはるにいの命も、無事だ・・。

ほうっと息をつく。


「あやめ!」

慌てて走って来た赤ちゃんの母親が、「すみません、ありがとうございます」

と何度も何度も頭を下げた。

赤ちゃんをぎゅうっと抱き締め、涙を流す母親の姿を見て、助けられて本当によかったと思った。


「さくら」

はるにいが私の頭をぐしゃぐしゃぐしゃーっと思いっきりなで回した。

「わっ」

「ありがとな、さくら。俺を助けるためにわざわざ来てくれたんだろ?

サンキュ」

照れてるのか、横を向いてるはるにい。

「私の方こそ、助けてもらっちゃった。ありがとね、はるにい」

「まったくだ。俺がいなかったらお前ぺちゃんこだぞ。

相変わらず何にも考えずに突っ走ってくからビビったぜ。

ま、俺が足が速くてよかったな」


グラウンドから子ども達が、わらわらと走って来てる。

兄ちゃん、おねーちゃん、だいじょうぶー?とか叫んでる。


「じゃ、もどるね。気をつけて、ね。はるにい」

「ん。お前もな。あ、浅井に礼言っといて」

「はいはい。またね」

手を振って、私は先生のマンションに走って帰った。


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