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29 カラオケ

カラオケの部屋はけっこう狭いけどきれいで、ソファもふかふか。

最初は美穂がノリノリの曲を歌って、次に関口先輩は静かなバラードを歌って、美穂に 「最初の曲のチョイス間違ってるでしょ!?」って突っ込まれてた。

「オレはオレの歌いたい曲を歌う!」ってマイクで言い返してたけど。


次は秋斗君が歌った。

イントロで分かる。私も好きなアーティストの曲だ。

そう言えば、秋斗君とは音楽の話とかほとんどしたことはない。

・・上手だなー。声が似てる。

「ほら、次はさくらよ。アキトの歌に聞き惚れてないで何か入れないと」

美穂にリモコンを渡されて焦る。何にしよう。

「あれ、歌ってよ。さくら、上手いじゃん」

慌てふためいてる私の手からリモコンを取って、ピピピとあっと言う間に入力された曲は、いつも私が歌うお気に入りの曲。さすが美穂。


秋斗君の顔を見ると緊張しちゃうから、なるべく席の方を見ないようにして、画面をずーっと見ながら歌った。

歌い終えると、目が合った秋斗君がにっこり笑ってくれて拍手をくれた。



その後も美穂が仕切ってテンポ良くノリのイイ曲が何曲もかかって、私も一緒に歌った。

時計をみると、あっという間に一時間過ぎてる。


「さて、ここからはカップルターイム! アキトとさくらはここ使っていいから。

わたしとカズヤは隣の部屋に行くね。思う存分、ラブバラードでも歌い合って。

じゃ、一時間後に外でね! バイバーイ!」

「アキト、個室は防犯カメラついてっから、するならキスまでだぞー」


え?っと聞き返すスキもなく、美穂は関口先輩と腕を組んで出て行ってしまった。

「え、ちょ、ちょ・・」


二人きりになったカラオケルームは急に静かになった。

というか、恥ずかしくて秋斗君の顔が見れない。

そこに、聞いたことのあるピアノの優しいイントロが流れて顔を上げる。

「ちょっと恥ずかしいけど、さくらちゃんの為に歌うよ。聞いてね」


秋斗君が歌うラブソングは、とびきり甘くて、心臓が飛び出そうなくらいどきどきした。さっきよりずっと、なんていうか色気があって大人っぽかった。

歌の中間のイントロの時、私のすぐ隣に座って、ちゅっとキスされる。


「二人っきりのカラオケってイイね。誰にも邪魔されずにくっつけるし。

・・・それにしても先輩、なんの心配をしてんだか。

防犯カメラがなくたって、こんなとこでこれ以上のことはしないよ。ね?」


赤くなって固まる私を面白がるように、秋斗君はぎゅっと抱きしめたり、またキスをしたり・・・。

カップルでカラオケするって、こんな、こんなすごいことだったの?

この空間に一時間も・・。私の心臓、もつかしら・・?


「はい、次はさくらちゃんだよ。そうだな、好きーとかあいしてるーとか、いっぱい言う歌詞の曲がいいなあ」

なんてとんでもないリクエスト付きでマイクを渡された時は、くらっと眩暈がした。





楽しいダブルデートはあっという間に終わってしまった。

秋斗君はいつも通り優しくて、でも新しい一面も見れたりして。

・・・思い出すだけでドキドキしちゃうけど、でもまた行きたいな。

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