24 デート
話をいったん休憩にして、おやつタイム!
待ちに待ったプリミアのチョコと。なんとココアが出てきた。
わお。最強コンビ!
まだ包装も取られていない箱をハイと渡され、いそいそと中を取り出す。
パカッと箱を開けると、つい声が漏れた。
「おお・・・っ! すごいっ!」
「どれでもお好きなものをどうぞ」「いいんですか!?」
返事を先生の声にかぶせてしまった。あ。秋斗君が笑ってる。
どれにしようか、たっぷり悩んでから一つを口に頬張ると、香り高い濃厚な味。
「はー、おいしー」
「さくらちゃん。おれにも、おれにも」
「どうぞ」
「ん」
箱を渡そうとすると、秋斗君は手を床に着いたまま、あーっと口を大きく開けた。
ええー? あーんしてってこと!?
一向に口を閉じる気配のない秋斗君。
思い切って二番目に美味しそうなチョコを一粒つまんで、秋斗君の口に運んだ。
「ん。おーいし。ありがと、さくらちゃん」
ぺろりと自分の唇をなめてにっこり笑う秋斗君。ドキドキが止まりません。
先生の入れてくれたココアはちょっと薄め。もうちょっと濃い方が好きだなあ、なんて入れてもらって文句言ったら失礼だよね。
先生と秋斗君もコーヒーを飲んで話が再会した。
「過去から戻って来て、今までと様々なことが変わっているというのは、
どういう感覚でしたか? その、違和感というか。拒否反応みたいなものは?」
「そうですね、最初は二つの記憶があって正直変な感じでした。
でも、だんだん前の方の記憶が薄くなっていく感じです。
悲しかったこととかさみしかった記憶はだんだん薄れてぼんやりしてきて、楽しくてあったかい記憶に塗り替えられていく・・。
不思議なんですけど、それもちゃんと受け入れられるんです。ああ、こんなことあったなあって」
本当にそれは不思議な感覚で。
言葉で表すのが難しい。
「インパクトの強いものは忘れることができないみたいで、今でもハッキリと覚えています。けど、それもアルバムの中の出来事みたいで・・。
昔自分が現実として体験したことなのに、それを第三者として見ているような。
・・・上手く、説明できないんですけど。すみません」
浅井先生は私が話している間ずっとパチパチと滑らかにキーボードを叩いていた。
「いえ。とても参考になりました。ありがとうございます。
私もタイムマシンは何度も使ってみているのですが、あなたのように明確に目的を持って使用してはいないので、記憶の塗り替えなどはあまり経験していないんです。
今は問題なさそうですが、頭痛や吐き気など体調の変化を少しでも感じた時には知らせて下さいね、瀬川さん」
「はい、先生」
その後も、使った時の感じや、帰ってきた時の疲労感、寝てしまうことについてなどいくつか質問されて、答えていった。
途中から、秋斗君は先生の本棚から読みたい本を探しに席を立ったけど、先生は黙々と質問をしてはパソコンに打ち込んでいた。
「ところで・・。高木君とは、タイムマシンで池に落ちた時から、より親密になったのですか?」
「え? あ、そう、ですね。それがきっかけと言えるかもしれません。それ以来、母のことで相談に乗ってもらったり、・・しましたから。
それが、なにか?」
「ああ、いえ。なんでもありません。あなた達がとても仲が良いようなので、羨ましく思っただけです」
「? はあ・・」
最後の質問はよく分からなかったけど、それで今日の訪問はおしまい。
秋斗君は先生に図鑑かなにかを何冊か借りて、私は残りのチョコをもらって、二人ともニコニコ顔で先生のマンションを出た。
*****
最近のデートはほとんど科学館。なんてったって市内の小中学生は入館料タダ。
しかも結構遊べる。
自転車で十五分くらいの距離だし、秋斗君は昔からちょいちょい行ってる常連さんらしい。
展示室ではこれがおもしろいとか、あれはこうだとか色々案内してくれる。
一番素敵なのがプラネタリウム。
私も秋斗君の影響で星とか天体のことが好きになった。
星とか宇宙の話をしてる秋斗君は、キラキラ目を輝かせていて、ほんとに好きなんだなって思う。
平日の夕方はプラネタリウムを見に来る人も少なくて、座席はガラガラ。
今日も、ほとんど貸し切り状態。
大きな星空を二人で見上げて、秋斗君が解説にさらに解説を加えてくれる。
おもしろい雑学なんかも。
幸せな時間だなあって、しみじみと感じちゃう。
「この前してた名前の話、ハル先輩に聞いちゃった」
へへって笑って秋斗君が言う。
うわー、はるにい、言わないでって言ったじゃないのよお。・・まあ、言うと思ってたけど。ニヤニヤ笑ってたし。
「・・・あの、・・・ごめんね、勝手に」
「全然構わないよ。っていうか、聞いた時、めちゃくちゃ嬉しかったよ」
前を向いてた秋斗君がこちらを見る。
どきんと心臓が大きく打つのが聞こえそう。
「だって、とっさに出てきた名前がおれのだったんでしょ? すごいうれしいよ」
私の手に秋斗君の手が重なる。
「さくらちゃんもおれのこと、前から気にしてくれてたってことだよね?」
うわあ、バレた。恥ずかしい。
ちらりと顔を上げると、すごいにっこり笑顔で笑う秋斗君。
え? そんなに喜んでくれるの? こんなことで?って思うくらい。
「・・・うー。ハイ。かなり前から見てました。ゴメンね」
「え? なんでゴメン? 」
「だって、自分の知らないうちからジロジロ見られてたとか、イヤかなって」
「ええ? さくらちゃんだよ? 嬉しいに決まってんじゃん。そりゃ、他のヤツならイヤだけど」
なんて言われた。うう。
きっと私の顔、真っ赤になってるだろうけど、ここは真っ暗だからわからない、と思いたい。
その後に観たプラネタリウムで。
いつか大人になったら、空気が澄んでて星がすっごく綺麗に見える遠いところに旅行に行きたいねって。秋斗君が言った。
うんって頷いたら、約束だよって、指切りをして、
・・・そっと、キスをしてくれた。
満点の星の下で、秋斗くんがくれたファーストキス。
大人になっても、ずっと覚えていたいな。




