23 トラブル
私は慌てて先生の方に向き直った。
「は、はるにいの話はおいといて。
それで、その日から二カ月半にわたってママに会いに行きました。
いつも平日の十時に坂西公園で、三十分くらい会ってました。
最初は何度も続けて飛ぼうかと思ったんですけど、一度過去に飛ぶとすごく疲れてしまって。一日に三十分ってはるにいが決めて、毎晩行くことにしました」
「タイムマシンは精神にも大きな疲労感を与えますからね。その方がいいです」
先生は大きく頷いた。
「だんだん仲良くなれて、いろんな話ができるようになってすごく、嬉しくて。
本当の友達みたいにいっぱいおしゃべりできて本当に楽しかったです」
「トラブルは? なにかありましたか?」
「はい。・・あの、私が一人で飛んだ時、ママと話してて時間を忘れちゃって。
気づいたらもうタイムリミットの一時間になってて。
走ったんだけど、とても家まで間に合わなくて、道の途中でボタンを押したんです」
「ええっ!?」
二人が驚きの顔で私を見る。
「あ、でも大丈夫でした! はるにいが助けに来てくれて。
目が覚めたら朝で、自分のお布団の中でした。はるにい、ずいぶん捜し回ってくれたみたいで、すごい怒られちゃって・・」
「だから、注意書きにも記しておいたでしょう! 気をつけるようにと。
何事も無かったから良かったものの、もし、事件や事故に巻き込まれていたらどうするんです?」
わ。
先生のこんな大きな声、初めて聞いたかも。
「ご、ごめんなさい」
私は肩をすくめて謝った。
「さくらちゃんは結構無茶するタイプだよね。ハル先輩、焦っただろうなあ。
無事でよかったよ、ホント」
秋斗君の手が伸びてきて、そっと私の手をポンポンとなでられた。
「あと大きなトラブルは・・池に落ちたことですね」
「えええっ!?」
今度は先生が一人で驚いて立ち上がった。
私は、はるにいが一年前のパパに会うために釣り堀で会っていたこと、場所を誤って、池に落ちて死にそうになったこと。
秋斗君が助けてくれたことを話した。
「高木君が・・・」
先生はまだ驚きで目を大きくしている。
「はい。ホントにあの時はもう駄目かと思ったから、秋斗君には感謝感謝です。
どうもありがとう」
改めてお礼を言って秋斗君に頭を下げた。
「おれもびっくりしたよ。あの日あの時間にあそこにいたのはホントに偶然だったんだ。いつもはもう少し遅くまで遊んでるから。
通りかかって池の方を見たら、誰かが落ちるのが見えて、慌てたよ。
水中では無我夢中だったけど、水から上がってさくらちゃんだって分かって、二度びっくりした。
助かったから笑って話せるけど、もう絶対落ちないでね」
「はい。スミマセン」
続けて私は、ママにちゃんと夫婦で話し合うこと、仕事も自分に合った職業をちゃんと探すように勧めたことを話した。
「すごいですね」
「無理して合わない仕事を続けてたことでストレスが溜まってイライラして、 それがパパとママがケンカしてた原因だったみたいなんです。
パパもクールであんまり話しとかする方じゃなかったし、ママも悩みを一人で抱え込むタイプで。それが長年積み重なってすれ違っちゃったみたい。
だから、二人でなんでも話し合わなきゃ駄目だよって言ったんです。
子どもが生意気言って、って言われちゃうかと思ったけど、ママもパパも、ちゃんと私達の言ったこと、受け止めてくれました」
「本当に、すごいですね」
「戻って来て、パパとママが仲良く晩酌してるのを見て、もう私達、嬉しくて嬉しくて。感動しましたよ。泣きまくりでした」
あの時、大泣きして大好き大好きって叫んでも、あんまり驚かずに受け止めてくれたパパとママ。
私のこと、気づいてたって言ってた。
未来から来たちえりと私が重なる日を待っていたのかな。
だから、次の日、ママは私にビーズの指輪を見せたのかな・・。
二人で私のこと、色々考えてくれてたのかな。そう思うとくすぐったい。




