18 聞かせて
「高木君は、星座や宇宙に興味があるんですね」
「・・・そうみたいですね。私も初めて知りました。とても嬉しそう」
リビングのソファに座ってる秋斗君は、熱心にさっきの図鑑を見ている。
先生は独り言みたいにボソボソしゃべるから、よく聞いていないと何を言っているのか分からない。 先生の顔というか頭に近づいているこの距離だから聞こえるけど。
「私もタイムマシンの原理を考えるのに、宇宙や月や惑星のことを色々と
学びました。うちの本棚で埃をかぶってしまってるより、読んでもらえたら嬉しいです」
「タイムマシンなんて、どうやって作ったんですか? 本当にすごい大発明ですよね」
「原理や仕組みを説明するとちょっと難しいですからね。聞いてるとまた寝てしまうかもしれませんよ」
先生がくすりと笑ったのがわかる。
う。もしかして先生の教科書での授業中、たまに、猛烈にうとうとしちゃう時が あるんだけど、バレてる?
私は、あははと笑ってごまかした。
「瀬川さんの好きなことや興味があることは何ですか?」
「え?」 私の、興味があることって、なんだろう?
まさか先生からそんな質問があるとは思わなかった。改めて聞かれると悩むかも。
長い髪を左手で少しすくってはチョキチョキチョキ。
また少しすくってはチョキチョキチョキ。
「・・・今は、母と料理をしたり手芸をしたりするのが楽しいです。
まあ、一緒に何かをするのが嬉しいだけなのかもしれないですけど」
ふと、昔のことが頭に浮かぶ。
あのキッチンで、いつも、一人で料理してた。はるにいもたまに手伝ってくれたけど、あの人料理は苦手だったから、めったにやりたがらなかったし。
唯一の得意料理が、卵のスープ。それと、ココア。
「・・・以前の母は仕事ばっかりでいつも家にいなかったから。
だから、料理も掃除も洗濯も・・・私がやらなきゃいけないこと、で。
だから、やっててもちっとも楽しくなかったんです。
でも今は、 ずっと一緒にいてくれるから、何をやっても楽しいんです」
「以前の、というのは・・・?」
「あ、タイムマシンで過去を変える前の母のことです。
私の家族は、先生の作ったタイムマシンのおかげで、家庭崩壊の危機を乗り越えられたんですよ。ホント、感謝してます」
髪を切りながらだけどお礼を言うと、先生は急に後ろを振り返った。
「わ、あぶな・・」
「瀬川さん、もしよかったら、詳しく聞かせてもらえませんか?
タイムマシンを使って、あなたが何をしたのか」
「え・・?」
「わお、さくらちゃん、ずいぶんバッサリ切ったね」
秋斗君の声にハッとして手元を見る。
わあ!?
「す、すみませんっ! 先生!
ちょっと考え事しながら切ってたら、かなり切っちゃいました。
短くなり過ぎちゃいましたよね? ごめんなさい!」
先生の頭はイメージしてた長さよりずっと短くて、
まさに短髪って感じになってしまった。




