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12 先生からのお願い

「本当に浅井先生が、あのタイムマシンを作ったの?」

さっきも聞いた質問を、秋斗君がもう一度聞いてみてる。

わかるわかる。なんかこう、信じられないんだよね。

ただの変な科学の先生だと思っていた人が、タイムマシンなんて世紀の大発明をしてるなんて。

「はい、そうですよ」

浅井先生はあっさりと答える。


「まだ試作品の段階ですけどね。

確率的にはほぼ九十九パーセント、正確にタイムスリップが可能です。

場所のズレはまだ改良の余地がありますが。

私が持っている物と、同じ物をもう一つ実験用に作りました。

誰かに拾ってもらう為に道端に置いておいたんです。

・・それを、あなたが拾ったんですね? 瀬川さん」

「はい」

先生の説明に納得する。

だからあんな丁寧に書かれた説明書がつけてあったんだ。

「本当に助かりました。もう帰れないかと思ったから。本当になんてお礼を言っていいか・・」


本当に、もう駄目かと思った。だから今こうして現在に戻って来れたこと、先生に感謝しないと。

「いえ。充電について、なにも書いていなかった僕にも責任がありますし。

一応タイムマシンの相互性を利用して探そうと思ったんですけど、なかなか上手くいかなくて。タイムリミットギリギリ、間に合ってよかったです」


先生は顔を覆う、うっとおしそうな髪を掻き上げて、私達をじっと見つめた。

「あの、お礼をと言っていただけるなら、・・お願いがあるんですけど。

瀬川さん、高木君、お二人に私の研究を手伝ってもらいたいんです。

助手というか・・。一人ではなかなか上手くいかないこともありまして」

「はあ・・・」

先生にお礼はしなくちゃ、と思うけど。

助手・・なんてできないでしょ。科学も特別得意じゃないし。


先生は私の心を読んだように続けた。

「あ、助手と言っても難しいことをお願いするわけではありません。

とりあえずは、この部屋を片付けてもらいたいというか。

あ、もちろんタダで、とは言いません。少しですがバイト代を出します。

どうでしょう?」


私は秋斗君の顔を見た。

どうしようか。

ピンチを助けてもらった先生に、お願いです、なんて言われたら断るのは申し訳ないように思える。

「・・部屋を片付けるくらいなら」

「さくらちゃん」

秋斗君は私の手を引いてそっと耳元で囁く。

「この部屋に来るなんて危ないよ。何されるか」

「でも、タイムマシンのおかげでうちのパパとママは離婚の危機を免れたんだし、お礼はしないと。秋斗君だって・・・」


あ!!!

と二人で顔を見合わせた。

そうだ。秋斗君のお家はどうなったのだろう。

「急いで戻らないと!」

「うん!」

私達はすぐに立ち上がった。

「なにか急用ですか? では、もし手伝っていただけるのなら、明日ここに来てください。何時でも構いませんから。待ってます」

先生はそう言って、にっこり笑う。

いつもの不気味なやつじゃなくて、ちょっと優しい感じの笑い方で。


「あ、はい。それじゃあ、失礼しますっ!」

私と秋斗君はもう一度お辞儀をして、先生のマンションを飛び出した。

全力で走って秋斗君のお家へと急ぐ。


どうか、うまく行ってますように!と 祈りながら走った。

がぽがぽの靴で私は何度もこけそうになったけど、繋いだ手の強張りが秋斗君の緊張を表しているようで、私も必死で走った。


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