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10 予想外の人物

玄関に行くと、私は自分の靴がないことに気づく。当然だけど。

だってまさか外に出るとは思ってなかったし。

「さくらちゃん、足いくつ? おれの昔履いてたやつじゃ大きいかな?」

「ちょっとくらい、だいじょうぶ。お借りします」

秋斗君から借りた靴はぶかぶかだけど、そんなこと構ってられない。

急がなくちゃ。


私達は玄関は中から鍵をかって裏口から出ると、大急ぎであの通りに向かった。


「タイムマシンがあっても、それを使って未来に戻る訳には行かないよ。

あれはさくらちゃんが拾って、使わなきゃいけないんだから。

せっかく苦労して変えた未来が、また戻っちゃったら大変だし」

「ホントだ。じゃ、どうしよう?」

「とにかく、なにかヒントがあるかもしれない。まさか電池とかバッテリーが落ちてるとは思えないけど。もしかしたら、タイムマシンを発明した持ち主に会える可能性もゼロではないし。とにかく行ってみよう」


私の家と秋斗君の家がそんなに遠くなくてよかったってつくづく思った。

走ればその場所まで十分くらいで着く。

まだ学校が終わってない時間だから、 生徒の誰かに会う心配もないし。




そう思っていたのに、またしても超予想外の人物に遭遇した。


秋斗君は急に私の手を引き寄せた。

「ちょっと待って、さくらちゃん。あれ!」

信号の向こう、秋斗君が小さく指さした先にいたのは、白衣姿の浅井先生だった。


「う、嘘でしょ? なんで学校にいないの? あの先生」

「なんでこう、ちょいちょい会うかなー」


見つかったら怒られる、と、咄嗟に私達はこっち側の信号機の陰に隠れた。

浅井先生、なんで白衣姿? 

それに、・・なんだろう、なにかオカシイ。

変な感じ。 違和感を覚える。

私は陰からじっと先生を見た。

「あ、あれ、・・おかしいよ」

「午後の授業はないのかな。それにしても外で白衣は目立ち過ぎだって」

「違うの。あの左手!  包帯してるわ。

だって、先生がケガをしたのは昨日で、 今ここは五カ月も前なのに!

な、なんなの、あの人?」

自分で言ってて怖くなった。勝手に身体が震える。

秋斗君は私の手をぎゅっと握った。


「あいつだ・・! 浅井先生ががタイムマシンを作った本人なんだよ。

科学専門だし。だからあいつも過去に来てるんだ。そうとしか考えられない」


秋斗君は、私と顔を合わせて強い口調でそう言った。私もうんうんと頷く。

それしかこの状況を説明できない。



信号が変わる。浅井先生は横断歩道を渡り、どんどんこっちに近づいてくる。

しっかりと繋いでいる秋斗君の手もじっとりと熱い。

きっと私も嫌な汗をかいてる。喉もカラカラだ。

「行くしかない」

「・・・うん」

もうこれに賭けるしかない。

どちらにせよ私達がここにきてからもう三十分以上は経ってる。

早くしないと、帰れなくなってしまう。

信号のど真ん中で、浅井先生は、私達に気づいてにっこり笑った。


「やあ。こんにちは、瀬川さん、高木君。

あ、こんなところで止まっては車に轢かれてしまいますよ」

スタスタ歩く先生の後に続いて、歩道まで行くと私達は先生の正面に回った。


「浅井先生、答えてくれ。タイムマシンを作ったのはあんたなのか?」

秋斗君の口調は強く、つかみ掛かる勢いだ。

先生は私に視線を合わせにっこり笑ってこう言った。


「ええ。そうですよ。あれを作ったのは私です」


「た、助けてください。動かなくなってしまって、帰れないんです」

私は液晶の消えたタイムマシンをカバンから取り出して、先生の前に差し出した。


「ああ、燃料切れですね。そうだと思って、探していたんです。

このまま私のうちに来ませんか。こんなところでは何も出来ませんし。

うちに帰れば燃料の補給もすぐです。安心して下さいね」


では、行きましょうと、先生は私達の返事も待たずにくるっと背を向けて歩きだした。今日の先生はよくしゃべる・・。

私は秋斗君と顔を見合わせるけど、もうこれは着いて行くしかない。

どうか先生が、悪人じゃありませんように・・!

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