「隣のトナカイさん」10円小説家で検索
「隣のトナカイさん」10円
ピンポーン。
「あのすいません」
図太いおばさんの声が聞こえる。
「誰だろ(こっちは一日の休みが貴重だってのに)」
「はい」
ガチャ、扉を開けた。
「回覧板です、隣のトナカイさんから」
「え、トナカイさん」
「トナカイさん。では」
「トナカイさん誰ですか」
「お隣さん」
「俺は内藤ですけど。隣は別の名前だった気がしたが」
「確かに渡したからね」
近所のおばさんは、回覧板を渡すとそそくさと去っていった。
「もう、なんだよあのおばさんは」
回覧板を開くのはめんどくさいので、明日にした。
次の日、仕事から帰ってポストを見る。
隣部屋の住人の名前を見て驚いた。
「と・な・か・い」
「…」
何かの陰謀なのか。はたまたふざけてやってんのか。あの回覧板を見ればわかる。そうだあの回覧板を。
部屋に入り、回覧板を開いた。
「間違っていた。全て間違っていた」
翌朝。
ピンポーン。
「あのすいません」
青年の声が聞こえる。
「はい(誰この人、彼氏じゃないしストーカー? )」
チェーンロックを掛け、扉を開けた。
「回覧板です、隣のトナカイさんから」
「え、トナカイさん? 」
「トナカイさんって誰ですか」
「お隣さん」
「私は、斉藤ですが、隣の人は誰だっけ」
「よろしく」
近所のお兄さんは、回覧板を渡すとそそくさと去っていった。
完




