第四十四話
第十三試合
対戦相手は華雄だった、
「草薙、賭け金の話だがな。」
「華雄将軍あんたも賭け金を釣り上げるのか?」
「いや、私と交わした約束があったな?」
「ああ、あれね。」
「私が勝ったらあれを無かったことにして貰おう。」
「で?俺が勝ったら?戦わずに降ってくれるのかい?」
「お前が勝てば我が主君董卓様にお前を推挙しようではないか。」
「はははははははは、誰がそれ考えたんだ?勝っても負けてもお前にしか利点がないじゃないか?董卓の謀臣って言えば李儒か?それともその手の策は李粛あたりか?」
「草薙お前何か勘違いしているな、董卓様の軍師は賈駆だぞ。」
「賈文和が董卓の軍師なのか?」
「賈駆を知っているのか?」
「面識はないがね、存在くらいは知っている。」
(この時期に賈詡が董卓の軍師だとすると前後関係なんてごちゃ混ぜだろうな。)
「どうした?受けるのか受けないのか?」
「俺が董卓殿に仕えるのかどうかは別として、良いよ、受けてやるよ。」
(うちの武将達が狭量なのが裏目に出たわねぇ。)
馬騰が心の中で嘆いてみても既に動き出した流れはやすやすとは変わらないだろうことは理解していた、
「双方異存はないか?」
「「おうっ!」」
「試合始めっ!!」
華雄の構えは先日と一緒、
長大な戦斧を後ろに引き構える、下段からの逆袈裟の構えだ、
対して将は構えもしなかった、
華雄はまたしても頭に血が昇る事となった、
ブンブンと戦斧を振り回すが将はまるで興味のないもののように軽く躱す、
時折戦斧に棒をぶつけては跳ね返すだけであった、
「貴様っ!!私を舐めているのかっ!!」
「レロレロレロってか?」
将が舌を突き出して上下させ華雄を煽る、
「なんだなんだこの間となんにも変わってねぇのかよ?そんな調子じゃ当たりっこないぜ。」
「クソッ!!」
ブンッ!!
会場にいるもの全員が聞こえるほどの轟音がするほどに戦斧が振られるものの将はそれをなんともなく躱す、
「多少馬鹿にされたくらいで頭に血が昇りすぎなんだよ、そんなんじゃいつか簡単に死ぬぞ。」
「ええいっ!!黙れっ!!黙れっ!!黙れぇっ!!」
ブンッ!!ブンッ!!ブンッ!!
と戦斧が振られるがこれも将にとってはどうということもなかった、
最後の一振りが大振りであったことを見逃さずその懐に入り込み華雄を投げ飛ばす、
「クソッ!!」
華雄が起き上がる前に華雄の手を打ち据え戦斧を弾く、
将が棒を華雄の顔面に突きつけ、
冷たい目で華雄を見下ろし、
「もうちょっと冷静になれっ!!」
ギンと華雄を睨む、
華雄は一気に自分の熱が冷めるのを感じた、
「何を焦っているのかは俺には解らないけれども、そんな調子じゃ実力の半分も出ないぞ、戦斧を拾ってかかってきな。」
将が棒を構える、
華雄が戦斧を拾い将に向かっていく、
戦斧が振るわれる前に華雄の小手を、足を、胴を、
ありとあらゆるところを打ち据えられていく華雄、
「どうすれば?」
肩で息をしながら華雄が将に問う、
「ん?」
「どうすれば私はお前に勝てるようになる?」
将は言葉とその棒でもって答える、
「冷静さを失わないことっ!!客観的に物事を判断することっ!!」
一言ごとに打ち据えられていく華雄、
「そしてっ!!俺より弱いと…」
「認めることだな。」
最後の一撃を鳩尾に受けた華雄は意識を失った。




