第二十一話
みんな大好きあの勢力です。
時間は少し遡る、
天水・董卓の居城・太守の間
帰ってきた華雄が報告のために来るという、
扉が開き華雄は入口で包拳礼を取り頭を下げ、そしてそのままの姿勢で文武百官の前を通り董卓の前までやってくる、
華雄の後ろには盆の上に包を乗せた文官が付き従う、
「華雄ただいま戻りました。」
華雄の正面に座しているのは冕冠を冠り天女のような装いに淡い菫色の髪の可憐な少女、この少女こそが天水太守董卓である。
その脇には緑の髪、強気そうな目つきでメガネをかけ、軍師服に身を包む少女が立っている、
この少女が現在この董卓軍の筆頭軍師、賈駆である。
華雄は自身の主君である董卓から声がかかるのを待つ、
「良く戻りました、華雄将軍、面を上げて報告を。」
「はっ!!」
董卓の言葉を受け返事と共に包拳礼のまま頭を上げる華雄、
【どう報告したものだろうか】
華雄は帰り道ずっとそればかりを考えていた、
先ほどはありのまま報告すると決めたもののどのように説明したものか自分の中で上手く纏まらなかったのだ、
何しろ燐郡所属の武将に(実際には将は馬騰配下ではないのだが華雄がその事実を知るはずもなく、馬騰と行動を共にしていた将の事を馬騰配下であると認識していたのである。)
(馬騰の許可を得てはいるものの)勝手に勝負を挑みそして負けたのだ、
更に自分がした約束とはいえ戦場で見えた時には軍を引く事を突きつけられたのである。
そして華雄が出した結論は、
【自分に腹芸は出来やしない、隠しても何れはボロが出るに違いない、ならば洗いざらい話してしまったほうが良い、処罰を受けるのは致し方なし。】
とまぁ結局は帰る前に決めた通り【ありのままに話す】という、あまりにも漢らしい結論だった、
…
女性だけど。
そして華雄は報告する、
部下の報告で武威方面に落ちたと思われる流星の調査に向かったこと、
流星が落ちたのは武威の領内であると思われること、
馬騰の言葉では馬騰も流星を見つけていないとのこと、
そこで見つけた姓を草薙、名を将という男に勝負を挑んだこと、
勝負に対して負けた時には草薙の頼みを一つ聞く約束をしたこと、
勝負に負けたこと、
草薙の要求は【自分と戦場で見えた時には軍を引く】という要求だったこと、
郡境近辺を荒らしていた楊奉率いる賊を草薙が壊滅させたとのこと、
馬騰はその証人であること、
そしてその賊の首を馬騰から預かったこと、
戻ってきて確認をしたところ首は楊奉で間違いないとのこと。
「…以上です、私の勝手な振る舞いで董卓様にご迷惑をおかけしました、処分は如何様にもお受けいたします。」
華雄がもう一度頭を下げた、
文武百官は驚いていた、
最近、張遼や呂布が伸びて来たとはいえ、一騎打ちではまだまだ華雄の方が勝率が上だったのである
そのため暴走する機会が多かったものの誰もが直接注意するのは憚られていた状態であったのだ、
そのため余計に増長するという謂わば悪い連鎖に陥っていたのだが、
その華雄が董卓に詫びるだけならばともかく、剰え処分も受けると言い出したのだ、
誰もが華雄に何があったのかを問いただしたいのは山々ではあったが主君である董卓より先に発言するわけにもいかず皆が董卓の言葉を待っていた。
「華雄将軍、面をあげなさい、何時もの貴女と雰囲気が違うようですが何があったのですか?」
董卓が華雄に問う、
面を上げ華雄が答える、
「今日私は敗れました…私は最近張遼や呂布に負けることが増えてきました、二人が伸びてきていることを認めたくない自分がいました、負けても自分が油断したから、そんな風に自分を欺いていました、しかし今日私に勝った草薙に言われました…草薙も師から言われたそうです。」
「続けてください。」
穏やかに続きを促す董卓、
「【負けるのが恥なのではなく、負けたことを認められない、そういった心根こそが恥ずべきものだ。】と、私はその言葉を聞き、頭を殴られたかのような衝撃を受けました。」
そう言うと華雄はまたもや頭を下げた、
「私は草薙との勝負に負けました、たとえ死罪を賜ろうとも自分のしたことですから何も異論はございません…が、もしも、今後董卓様が草薙と見えた時には一度引いてはいただけぬでしょうか、華雄の最後のお願いでございます。」
そう言うと華雄は更に頭を下げたのだった。
「頭を上げなさい、そして華雄将軍、貴女のした約束の為とはいえ何故貴女は初めて会った草薙という人物の為にそこまで報いようというのですか?」
董卓が華雄に問う、
「曇った我が眼を覚まさせてくれたからです。」
頭を上げ堂々と正面を向いた華雄の顔は晴れやかだった、
「華雄将軍、貴女のとった軽はずみな行動は死罪となってもおかしくないものです、しかし、我が領内を騒がせていた楊奉率いる賊を討ち取った草薙なる人物の情報の齟齬の確認を取るためにも処分は一時保留します、解りましたね。」
「はっ。」
董卓の言葉を受け華雄は頭を下げた。
「さて、その草薙さんの件どうしたものでしょうか?誰か意見のあるものは?」
董卓の問いにまず答えたのは筆頭軍師賈駆であった、
「いくつか疑問があるわね、その草薙の求めたものが何故軍を引かせるということなのか?そもそも見えた時とはどの時機を見定めているのか?解らない事だらけだって云う事くらいは解るけれども、どうしたって憶測の域を出ないというのが正直なところよね。」
その言葉を受け応えたのが、
紫色の髪に緑の瞳の美人、身に纏うのはサラシと袴姿に羽織を引っ掛けただけの華雄以上に露出が高い、張遼である、
「うーん、賈駆っち憶測だけでもええから教えてくれへん?」
「いいわ、まず、郡境で賊討伐などで鉢合わせた時に自分の手柄とするために引け、という可能性、これが一番可能性が高いうえにわかり易いから対処しやすいわね、けれども現在楊奉以上に大きな賊は無いから、そこが少し引っかかるところね。」
賈駆の話を聞き多くの者がウンウンと頷く、
「次に草薙という人物が戦を引き起こすつもりがある、という可能性ね、漢を倒して国を起こすという反乱を企てているということ、けれどもこれは可能性としては低いと思うわ、反乱を起こすのならば電撃的に事を起こす必要があるもの、それを華雄将軍に教えるような真似をしたのだとしたら、何時、誰が朝廷に告げ口をしないとも限らないもの、反乱を起こす前に討伐対象にされかねないわ。」
賈駆の話を聞きやはり多くの者がウンウンと頷く、
「あとは草薙という人物がいることボクたちに知らしめる為っていうことも考えられる、でもこれはボクたちの対応がどうなるのか読みきれないと何の意味も無くなるから可能性は少し低いかな?でも軍を引けだなんて晋の文公を引き合いに出している気がするわ。」
「晋の文公って?誰のこと?」
張遼が答える、
華雄も「さぁ?」と首をかしげる、
「あ・ん・た・たちー、春秋くらいは読みなさいって、だから言っているでしょう、後できっちりお説教するとして。」
余計なことを言ったと顔をしかめる華雄と張遼であった、
しかしそれを無視して賈駆は話を続ける。
「話を続けるわ、晋の文公は春秋五覇の一人なんだけど、亡命中に亡命先の楚の成王から「国に帰り、君主になれた場合には私に何を返してくれるのか?」そう聞かれたときに「もし王と戦うこととなった時には三舎引く。」と答えたそうよ、これは相手に一目置くっていう意味なのよ、これを引き合いに出しているのだとすれば草薙っていう男は春秋を知っているっていうことになるわ、あんたたちより優秀っていうことになるわね。そして草薙は華雄将軍に自分に対して一目置くようにっていうことを示したかったのかもしれないけれども…あまり効果はないようね。」
賈駆の言葉を受け華雄や張遼はグウの音も出ないようだ、
「董卓様、ここはやはりご自身の目で確かめるのが一番ではないかね?」
そう答えたのは130cm程の低い身長で、
目は少し釣り上がり、足元まで伸びた黒髪が特徴的な少し薹が立った女性である、
後進である賈駆に筆頭軍師を譲り現在は政の最高顧問を務める李儒であった、
彼女は董卓の母である董君雅の義理の妹であった、
「うむ、馬騰とは旧知の仲、楊奉の懸賞金を授ける、とでも言えば断りきれるものではないだろう。」
そう続けたのはこちらは対照的に190cmはあろうかという高い身長でさらに爆乳、
燃えるような赤い髪、
切れ長の赤い瞳は左目だけしかなく右目は目の上から頬にかけて刀傷があった、
こちらも後進である華雄に譲り現在は軍部の最高顧問を務める牛輔であった、
彼女も董卓の母である董君雅の義理の妹であり、
三姉妹の末妹であった、
彼女たちは先代の董君雅が亡くなった後、
董卓の後見人として彼女を補佐すると共に若い娘たちが育つためにと自ら筆頭軍師、筆頭武官を退き最高顧問という形で全体の補佐に努めていたのだった。
董卓が決定を下す、
「では、私、賈駆、華雄将軍、張遼将軍、呂布将軍、あとは供回りのものを連れて武威にまで会いに行ってまいります、四人はそれぞれの才覚でもって草薙なる人物を見定めてください、李儒叔母様と牛輔叔母様は私たちが出ている間の天水をお願いいたします。」
さてここで初めて名のでた呂布であるが、
赤髪に触覚のような一対の髪の毛が特徴的で、
少し日に焼けた肌にはあちこちに刺青が入っており服装は太極を基調としたのであろうか?白黒の二色を基調としたものであった。
彼女はこの手の朝議や軍議はとことん疎くほとんど会話もしないといった状況であった、
それ故に先ほどの華雄や張遼のような藪蛇状態は起きないのであるが…
「では、馬騰殿にはこちらから書状を送っておきます、行って来いで返事は5日ほどで帰ってくると思われますので、それまでに準備を整えておくこと、華雄将軍・張遼将軍・呂布将軍の三人は春秋位には目を通しておくように、賈駆、あんたがお目付け役だよ、三人には帰ってきたら春秋の理解がどれくらい出来ているのか試すからね。」
李儒の言葉に三人はがっくりと肩を落としていた。
「では各自準備を行なっておいてください、三人とも頑張ってくださいね。」
そう言って董卓は微笑み、
解散を宣言した。
みんな大好き董卓勢力、
李儒や牛輔は本来董卓の娘婿ですがこの作品では董君雅の義姉妹、
董卓にとっては叔母という扱いとなっています。
こんな感じでオリキャラが大量に出てきます、
もう少しすると作品として一時落ち着く予定なのでオリキャラ紹介はするつもりでいます。
作者がオリキャラの設定を思い出すためにワードを起動するのが面倒だからといった理由では無いと思いたい。




