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ハロウィーン 秘書 編

 エリックの形だけの秘書になって1ヶ月たった。


 私、ダコタは東京のファッションショーにモデルとして参加する為に

実費で(エージェントに所属してなかった)日本へやってきた。


 そして日本でエリックと出会い、そのまま日本に滞在している。


 若くして成功した彼はブランド物に身を包み、ルックスも申し分無かった。

私は結婚願望は強いほうでは無いが、エリックはまさに私の理想の結婚相手だった。

 

 でもね、ルックスが良くて収入がある男の多くは複数女がいる。

エリックもその一人。

 

 で、エリックの本命は伽羅・パーカーという日本人の血を半分引く女だった。


 出会ってまだ少ししか経ってない私を彼が本気で好きだなんて思うほど

私はうぶじゃない。

 でも私はすっかりエリックに参ってしまった。

 伽羅の存在を聞かされた時、正直ショックだった。


「僕達はお互い縛らない約束だから、彼女は君との事は怒らないだろう」

 とエリックは言う。

 

 だったら私はなんなの? 彼女が居ない時の遊び相手?

と悲しくなったけど、怒って彼から離れたく無かった。

 だから、平気なふりをした。

 

 多分、私は1番のカノジョでは無いんだろう。

エリックの話しぶりや彼の部屋に置かれた写真立てを見る限り本命は伽羅だろう。


 まだ写真以外で彼女を見たことは無いが、今日ハロウィーンパーティーで

伽羅を見ることが出来る。

 エリックには数日前から「パーティーには参加してもいいが、君はあくまで秘書としてだ。

泊まるんなら部屋は僕とは別だよ」

と釘をさされた。

 

  わかってはいたがショックだった・・。

心のどこかで私は自分が公認の恋人として彼の周りに紹介されるのを期待してたのかも

しれない。

   

 エリックと二人で準備の為にパーティー会場となるホテルに昼頃着いた。

たいがいのゲストは夕方5時前に来る事になっている。


 エリックの親しい友人達と参加希望の会社のスタッフと伽羅とその友達達は

費用は経費でなんとかまかなうが、

 エリックに近づきたいビジネス関係の人たちは参加費を自分で出さないといけない。

 

 招待状を送らなくてもパーティー好きのエリックはよく節目にパーティーを

開いており噂を聞きつけた者達の何人かは参加費を払ってでも参加したがった。

 そのほとんどは欧米人達であったが、中にはエリックの会社と契約したがっている

アジア人達も居た。

 

  伽羅は友人達と平凡な車でやってきた。

 車を見てちょっと拍子抜けしたわ。

でも車から出てきた本人はやっぱりすんごくゴージャスだった。

長い足をさらして長い髪は明るい色に染めている。   

モデル経験があるのもうなづける。

周りの男達がちらちらと彼女を見ていた。

 

 ホテルのロビーで私が彼女に挨拶しようと近づこうとしたら

私を人睨みしてエリックがささっと彼女の所へ向かった。

  

 私はとりあえず彼女との接触を諦めた。

パーティーできっとチャンスはあるわ。

 

 パーティーが始まる前に参加者達はハロウィーンの仮装の準備をしだした。

衣装は自前かもしくはこちらが用意した仮装衣装から選ぶか。

 もちろん、こちらが用意した衣装はお粗末なものが多い。

 

 だから私は自前の衣装を持ってきた。


 私はシンプルだけど体のラインがぴったりで少し透け感のある自前の白いシャツ

を金色の光沢のある布地に黒いドクロプリントがある上下揃いのきわどいビキニの

上に着た。

 お腹が見えるようにシャツを胸の下でしばり

股下の凄く浅いハーフパンツをはいてビキニのTバックの紐をわざと見えるようにした。

おへそにはダイアモンドのピアスがきらめいている。  

 後ろから見たら私のお尻が少し見える。

ドクロプリントのバンダナを頭を包むように巻き、眼帯をつけて

腰におもちゃのガンベルトと銃をまいた。

 素肌が見える部分には肌をつやつやに見せる為のラメ入りローションを塗った。

靴はあえてそっけないヒール付きサンダル。 

これでセクシーな女海賊の出来上がり!!


 こんな私を見たらエリックは今夜私をほおっておけないハズ!!

私はシングル部屋を飛び出した。

 

 プールサイドに音楽がかかりパーティーが始まった。

ほとんどの参加者達は揃っていた。

私がプールサイドに登場すると会場の男達の視線が一瞬一斉に私に向かった。

口笛の音も聞こえた。

 エリックは既に色んな人達に囲まれて奥のソファーに座っていた。

今年の仮装パーティーのテーマは『海』

 エリックはパイレーツ・オブ・カリビアンのジャック・スパロウのような海賊の格好を

していた。

 他の人達も海賊ルックや海の魚の帽子をかぶっただけの人や海軍の格好など色々

いたが、アジア人参加者達は仮装しないでスーツを着て奥に固まっていた。

 ちなみにゲイはセイラーの格好するというルールがある。

彼らの出会いの場にもなっているのだ。

 

 私がゆっくりとプールのある庭を歩くとエリックが私にウインクしてくれた。

今晩私の部屋に彼が来てくれるかもしれない。

そう思うと嬉しくて顔がほころぶ。


 彼の所に行こうとするとさっそくバイキングの格好をした知らない欧米人の男が英語で声をかけてきた。

「やあ、君すごいイケてるね」 

 

 そのとき周りの視線が庭に入る入り口に集中してるのが見えた。

そこに居たのは伽羅だった。

 彼女は黒いマントを着ていたが、それを脱ぎ捨てた。

すると周りがハッとして静まり返った。

私は思わず「ビッチ・・・」とつぶやいてしまった。

他にも「オーマイ***」「ファ**」などや卑猥な言葉をつぶやいている人がちらほらと・・・。


 だって彼女の格好ってほとんど胴体は裸なのよ。

肘まである黒い手袋、

膝まである黒いニーハイブーツ

頭には大きな羽飾りの着いた黒い帽子

手には乗馬鞭

首には白い羽で出来た長いストール

でも肝心な体を隠すのはサスペンダーと黒いレザー風ホットパンツのみ。


 誰かがシャッターのフラッシュをたいた。

エリックがすばやく走って伽羅の体をマントで包み会場から連れ去った。


 あっという間の出来事だった。

 

 私は嬉しくなった。

だってあんな非常識な事を日本でやったんだから

(パーティーが盛り上がって皆ぐでんぐでんに酔っ払ってる訳じゃないし)

きっと伽羅はエリックに怒られてるに違いない!

 もしかしたら今頃エリックから別れを告げられてるかも!


 私も走ってエリックが泊まる5階のスイートに向かった。

都会よりはこじんまりとしたオーヴェルジュホテルなのですんなり部外者

でも入れるのだ。

スイートの扉は開いてなかった。

ドアに耳をそばだてても怒鳴りあう声も聞こえなかった。

 

 私は一体何してるんだろ?

なんだか恥ずかしくなって庭に戻った。

 

 しばらくホスト不在のまま皆パーティーを楽しんでるようだった。

私は会社の人達とお義理程度に会話を交わし、ナンパ男達と会話をしながら

料理やお酒を飲みながらも早くエリックが戻って来ないかと待ちわびた。


 ナンパ男の会話に適当に相槌をうちながらパーティーを見回した。

 

 目立ってたのは派手な仮装の人達だけじゃなかった。


  赤いドレスの仮装をしてない背が低く小太りの日本人らしき女が

(なんかの仮装なのかもしれないけどわからないわ)

一生懸命ホテルの若いボーイに話かけてたり

  爽やかな日本人新婚カップル風の男女が中世のお姫様と海軍将校の格好で二人の世界にひたってる。

 女のほうは女優だろうか? 

 テレビで見た事があるような気がする。

 それぐらいオーラがあって美しかった。

 夫とおぼしき連れの男も背は高く無いが美しかった。


 あとゲイの水兵さん達、日本人かどうか解らないけどアジア人の水兵の仮装をしてる人もいた。

彼は他の水兵達とはしゃいでいた。


 あと他のアジア系の中国、シンガポール、韓国陣達は隅で固まっていた。

彼らは仮装はしてなかった。


 段々と参加者達は酒に酔ってきたのか騒がしくなってきた。

2時間経った。

するととうとうエリックが会場に戻ってきた。

 再び入り口にみんなの目が集まった。

彼の隣には人魚か海の女王か何か知らないが上品な白い大ぶりのうろこのようなスパンコールが

付いたマーメイドドレスを着た女性がいた。

 一瞬誰だか解らなかった・・・

伽羅だった・・・。

 さっきと全然違うエレガントな装い、透明感のあるメイク。


 なんだか私は嫌な予感がしてきた。

 

 その予感的中。

エリックはマイクで

「皆さん、パーティーの主催者不在ですいませんでした。

皆さん、乾杯しましょう、グラスを持ってください。

では今日参加してくださった方々に感謝と皆さんの今後の発展を願って乾杯!!」


 皆が一斉にグラスをかかげた。


「そうそう皆さんに私事ですが、先ほどここにいる僕の恋人、伽羅・パーカーと

先ほど婚約しました」

 拍手や口笛がとんだ。

私はショックでぼーぜんとしていた。

 

 エリックに婚約の理由を聞きたかったが彼に近寄れそうに無い。

今彼の周りには彼らを祝福する人達で溢れている。

  

 ヤケ酒を決め込んだ。

酔った勢いで朝起きたらナンパ男の部屋で目を覚ました。

 

 エリックと顔を合わせずらくなって彼の会社のスタッフに秘書を辞めると

告げると私はそのままアメリカに帰った。

 

 あれ以来私は彼と会ってない、お互い連絡も無し。

未だになぜ彼は伽羅と婚約したのかはわからずじまいだ。


 それから4年後に私は別の男性と結婚した。

 

 <END> 

 


 

 

  






  


 

 


 

 

 

  

 

 

 

 

 

 


 

 

   


  

 


 

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