君をもっと知っていれば
ザーザー
雨が降っている。
とても大粒な雨だ。
「なぜだろう。なぜ僕は雨の中を走っているんだろう。」
前方100m先くらいに白い服を着た女の子がいる。
ナギはその女の子を追いかけていた。
「はぁはぁはぁもう少しで追いつける。」
そう思った途端辺りが白い光に包まれた。
ピピピ──
スマホのアラームがなっている。
「んーもう朝かー」
起き上がりスマホのアラームを止めた。
「早く止めないと詩ちゃん起きちゃうからねー」
詩とは京都に住んでいて、ナギが今絶賛ネット恋愛中の彼女のことである。
ナギは起きたらそのままリビングに行った。
リビングに行くとお母さんが朝ごはんを作っていた。
「お母さんおはよー」
「おはよう今日は学校でしょ早く支度しなね」
「はーい」
ナギはお母さんが用意してくれた目玉焼きご飯に醤油をかけ食べ始めた。
「んーやっぱお母さんの料理は美味しいな」
と心の中で呟いた。
「ご馳走様ー」
ナギはご飯を食べ終え部屋に戻った。
「今日は何を着ようかなー」
「そうだ!詩ちゃんに前かっこいいねって言われた服にしよ!」
そうしてナギは服を着てリビングに行った。
「行ってきます!」
と言ったが誰も反応してくれなかった。
少し残念そうにナギは家を出た。
「あーあ今日も学校少し緊張するな」
ナギは家では元気だが学校では不安なことが沢山あった。
まず、友達がいない。
話せる人もいない。
先生ともろくに話せない。
ナギは人見知りでコミュ障でもあった。
そんなナギが唯一話せる異性が京都に住む詩だった。
学校終わり──
「あー今日も学校つまんなかったなーやっぱり詩ちゃんと話してる時がいちばん楽しいんだよな」
ナギと詩は遠距離恋愛なので毎晩電話するのが日課だった。
「それはおもしろすぎでしょナギくん」
「えへへーそうかなー」
「ナギくんってさかっこいいから学校でもモテそうだよねちょっと不安になっちゃう」
「いやいや僕はモテないよー詩ちゃんの方がモテそうだよ僕の方が心配になる」
「大丈夫だよ心配することなんかないよー」
まるでふたりは出来たてホヤホヤのラブラブカップルである。
「ねね詩ちゃん」
「なにー?」
「冬休みにさ一緒にUPJ行かない?」
「UPJか・・・」
「んー、いいよ!行こ!」
「やった!楽しみだね!」
「そうだね・・・」
月日が経ちUPJ当日になった。
詩とは新大阪駅集合なのでナギは東京駅から新幹線に乗った。
「久々の新幹線テンション上がるなー」
ナギは詩に会うのも楽しみだったが新幹線に乗ることも楽しみのひとつだった。
「この牛すきやき弁当まじ美味しいなー」
「気づいたら食べ終わっちゃったよ」
ナギは食べたあと音楽やゲームをし時間をすごした。
そして──
「着いた!新大阪!」
「くー長かったなーさすがに腰が痛いや」
「30分前に着いたから詩ちゃんはまだついてないかな」
ナギは詩に連絡してみる。
「今どこにいるー?」
「今新大阪着いた!ごめんねー遅くて」
「大丈夫だよ!僕が早すぎただけだから!」
「もう着いたのか楽しみだな詩ちゃんに会うの」
と心の中で呟いた。
ドキドキしながら待っていると・・・
「お待たせ、、」
「あ、詩ちゃん、、かわいいね、、」
少し照れながら
「ありがと、、」
「じゃあ行こっか」
ふたりはUPJに行った。
荷物はホテルに預かってもらいUPJに入園した。
「楽しいね詩ちゃん!」
「そうだねめっちゃ楽しいー」
お昼時になったのでふたりは昼食を取ることにした。
ナギはかっこいいところを見せるために、事前に行く店を決めていた。
「詩ちゃん!僕前々からお店決めてたからそこに行っていい?」
「そうなんだ!いいよ!」
すると突然詩がふらつき始めた
「大丈夫?」
「大丈夫だよ少しめまいがしただけ」
「そっかなら大丈夫か!行こ!」
そうしてふたりはお店に入った。
お店の雰囲気はレトロな感じの雰囲気だった。
「すごい素敵な雰囲気だね。私こういうお店大好き」
これを聞きナギは心の中で喜んだ。だが、詩がメニューを見た瞬間顔色が変わった。それにナギはいち早くいづいた。
「詩ちゃんどうしたの?」
「いやなんでもないよ!」
「ほんとに?」
「うんただ、あまり好きな物じゃなくて・・」
「そうなのごめんね」
ナギは絶望した。
「僕は何をしているんだろう。もっと詩ちゃんの好みを知っていれば良かったのに・・」
ナギは後悔しながらそのお店を出た。
結局詩はそのお店に食べれそうなポテトがあったのでそれを食べて満足した。
そして・・夜
ふたりは冬の夜空に浮かぶ星を見ていた。
「綺麗だね」
「そうだねとても綺麗だね」
ナギは詩の手を繋ごうか迷っていた。いや、恥ずかしくて繋げないでいた。
ナギはなにかあと一歩背中を押してくれる何かがあればと思ったがそんなものはなかった。
ナギが戸惑っていると詩がナギの手を持ち上げギュッと掴んできた。
「ナギくん私ナギくんに伝えないといけないことがあるの」
あまりの急なことに返事が遅れたがナギは首を傾げながら
「何?」
と聞いた。
「実はね私もうなぎくんと会えないの」
ナギはポカーンとしていて詩が何を言っているのか理解するのに時間がかかった。
「なんでよなんで会えないの?」
「私親の転勤が決まって海外に引っ越すことになったのだからもう会えないかな」
「それでもいつも通り電話とかはできるよね?」
「電話も難しいかなナギくんは知らないかもしれないけど海外にいる人と日本にいる人同士じゃ電話できないんだよ?」
「そうなの?なんでよ」
「元の回線が違うらしいのだからできないかなナギくんもう私たち別れないかなもうナギくん辛いでしょ」
「僕は辛くないよ!だから別れたくない!」
「もう!!私が辛いの!!」
ナギの言葉を遮るように詩が言った。
詩が声を張り上げたのは初めての事だったのでナギは驚いた。驚いてる隙に詩は走って出口の方に行ってしまった。ナギは追いかける気力が残っていなかった。突然予期もしないところで振られたのだ。唯一話せる人。唯一の親友であり恋人であった人を失ったのだ。
「君は静かで優しい人だと思ってただけど違った。やっぱり君のことはわかんないよ」
ナギは1人寂しくホテルに止まった。
次の日の朝──
朝起きて外を見ると雨が降っているイマイチテンションの上がらない朝だった。
「昨日詩ちゃんが言ってた電話ができないって本当なのかな」
とふと思ったので調べることにした。
すると・・・
「え、嘘じゃん!電話できるじゃん!じゃあなんで詩ちゃん嘘ついたんだろう本当に嫌われちゃったのかな」
と思っているととある人から連絡が来た。
それは詩の親友であるたくみだった。
「おい!今お前どこで何してる!」
「今ホテルのベットでダラダラしてるよー」
「何やってんだ!今すぐマップに示してるところに来い!」
と言われたのでマップの場所を見ると冷や汗をかいた。そこは病院だったのだ。
ナギは今までにないくらいの速度で走って駅まで行った。
「なぜだろうなぜ気づかなかったんだろう僕は・・たくみくんのあの焦ったような言い方と示された場所を聞けば嫌でも察しがついちゃうじゃん」
「詩ちゃんがあの場で僕のことを振ったこと。海外に転勤になっただけなのにもう会えないと言ったこと。これが結論なら今までのことが1本の線みたいに繋がる。多分詩ちゃんは持病を持っていてそれが悪化し今まずい状況にあるんじゃないかな」
ナギはより一層足を早めた。
「詩ちゃん僕は君ともっと話したいよ」
ナギは病院に着いた。
到着したのは連絡を貰ってから1時間半後だった。
たくみから病室の部屋は教えてもらったのでそこに行き部屋に入った。
ガラガラ──
「詩ちゃん!」
ドアを開けると詩の両親とたくみが涙を流してこちらを見つめていた。
「ナギ君、こちらにいらっしゃい」
ナギは詩が眠っていると思われるベッドに近づいていく。
すると、気持ちよさそうにベッドに横たわっている詩の姿があった。
だが、昨日とは違いやけにやせ細っていた。
「詩はもう行っちまったよ最後にお前の名前を言ってたよ」
それを聞いた途端涙が止まらなくなった。
ナギはとても悔しかった何も彼女のわかってあげられなくて悔しかった。
「僕は詩ちゃんの彼氏だったのに持病持ちだったなんて今まで知らなかったなんで気づいてあげられなかったんだろう」
「あーもっと君と話したかったな詩ちゃんもきっと同じだったのかなあーあもっと君を知っていればよかった」
涙が止まらない。
ナギは後悔しかない。
なぜ気づいてあげられなかったのだろう。
なぜ最後まで一緒にいてあげられなかったのだろう。
「最期に話したかったな」
ナギは複雑な思いで病院を出た。
俯いてゆっくり歩いていると──
「ナギくん」
声をかけられた気がしたので顔を上げた。
「これは現実の世界?」
なんと顔を上げると詩がいた。
「詩ちゃん?なんでいるの」
詩は何も答えずナギから逃げるように走った。
それをみてナギは追いかけた。
雨を降っていることも忘れて無我夢中で走って追いかけた。
追いつけたら何かあるかもしれない。その事を願って。
あれからどのくらいたっただろうか30分はたっていると思う。
そろそろナギの体力がそこを尽きるくらいのところで詩が足を止めた。
それに伴いナギも足を止めた。
「ここは・・」
「夢中で走っていて気づかなかったけどここは僕と詩ちゃんが初めて会った場所だ今でも覚えてる1年半前の頃この場所で出会ったんだ僕たちは」
詩はナギの方を向き軽く微笑みナギに何かを伝え消えてしまった。
それを見てナギはまた泣いた。
「詩ちゃんやっぱりそうだったんだね僕を心配させない為に海外に行くって言ったんだねごめんね詩ちゃんごめんね・・」
ナギはその場に倒れ込んだすると雨がいつの間にか雪に変わっていた。
「あーいい景色だね詩ちゃん」
ナギは詩がまた現れることを信じてその場を後にした。
数年後──
「今でも思い出す。詩が亡くなってしまったこと」
ナギは今でも思っているところがあった。
あの時こうしていればよかったな・・と
「君のことをもっと知っていれば」
そうボソッと呟いた。




