scene4 カイル・フォン・アルセウス
MVPとなったラザンヌが人々の賞賛を浴びる中、男子生徒の一人がこちらに近づいてくる。
美しい金髪の髪、整った顔立ちには品があふれ庶民ではないオーラが漂っている。
カイル・フォン・アルセウス
この国の第二王子
そして最後にヒロインとともに私を殺しに来る敵...。
鼓動が早くなり自然と表情は硬くなる。
「ディアナそんな怖い顔してどうしたんだい?何か不満でも?」
素敵な笑顔とともに話しかけてくる。
「なんでもありませんわ...しいて言えば私が活躍できなかった事かしら」
適当な嘘で距離を置く。
「それは異なことを言うね。…わざとだよね?外したの?なぜラザンヌに手柄を立てさせた?あなたなら勘単にとどめを刺せたはずだ」
見抜かれている?
「何の事かしら…?」
「あなたはリリアを撃つことが出来た…なぜライフルを撃った?」
認めてはいけない。
王子に認められてもいけない。
この演習で活躍したディアナが王子に認められ評価されるのが本来のシナリオ。
認められ評価される事が最終的な死につながっている。
「そんな器用な事出来るわけありませんわ」
あくまで否定...。
王子は深くため息をつく。
「まあ...そういう事にしておこうか...今の段階はね」
そういうと王子はその場を去って行く。
危険だ。
この場では王子に評価されないことが目標だった。
私の否定は意味がない。
評価されている。
着実にシナリオに沿って進んでいる。
焦りが顔に出る。
「ディアナ様~痛かったぁ!さすがディア様ですねぇもう全然かなわなぁい」
深刻な心境を切り裂く無垢な声。
「私は何もしていないわ」
焦りは禁物...冷静に...私は何もしていない。
「またぁわざとですよねぇ。私の銃口をちょっとだけそらせる程度にかすめるような弾道...あんなすごく正確に撃てるのに何で私を撃たなかったんですかぁ?ディアナ様の活躍が見たかったのにぃ…」
…気づかれている...?
なんで?
「だってぇディアナ様の魔力でライフル撃ったら私たちぃ全員瞬殺ですよねぇ。だって身体から漏れてますよぉ...魔力」
…魔力…この時点でのリリアに魔力を感じるような能力はないはず...
この時点でのヒロイン、リリアのレベルは低い。
たいして何も出来ない...ディアナの弾道に気づくような能力も魔力もないはず。
「ディアナ様の活躍が見たかったのにぃ」
「リリア...私にそんな力はありませんよ」
そう否定してその場を離れようとする私にディアナが近づき腕にしがみついてきた。
満面の笑みで私の顔をのぞき込んでくる。
その行為自体が私の不安を煽っている。
「ダメですよぉ。ちゃんと...悪役...してくれないと」
リリアの表情から感情が消えていた。
どこまでも冷たく凍った表情。
それは機械的で無機質、必要な事だけを伝えるデータとしての情報。
世界が世界として成立するための機能...歯車の中に組み込まれる感覚。
その先にあるものは...死。
心の中を黒い影が覆った。




