ドラゴンバスター
「だから倒せるか倒せないか聞いてるの!」
私こと「名もなきドラゴン」はあきれ果てていた。
この冒険者はモンスターと会話ができるようだ
まあ珍しい能力でもない、ありふれている
珍しいことといえば、私を倒すために、私から弱点を聞き出そうとしているところだ。
「たとえばだよ?ドラゴンの固い皮膚にはたった一枚だけ柔らかい鱗があり
そこに剣をさすとたちどころにドラゴンは倒れる、みたいな?」
本当にあきれる、私は名こそないが5000年ドラゴンをやっている
討伐されずに生き残っているのだ
「もしかして、体内に入り込めば内側から簡単に・・・!!」
それをやろうとした冒険者は例外なく消化してきた
「ブレスを吐き終えると、その体は弱点があらわになる、とか?」
わたしはコミュニケーションをとるのがめんどくさくなってきた
「そこの冒険者、私の弱点がそんなに知りたいか?」
「もちろん知りたい!!」
「そうだな、ここから北東にあるワイバーンの巣に私の弱点がある」
私は適当なことを言い、冒険者を追い払った
ワイバーンがいるというのは本当だ、そのワイバーンに殺されてしまえと思った
しばらくしてその冒険者は、なんとそのワイバーンを引き連れて戻ってきた
「ワイバーン!いっしょにこのドラゴンの弱点を探そう!!」
「いいねぇ、面白そうじゃないか!」
私は一向に面白くないんだが・・・。
まさかワイバーンに倒されずそれどころか仲間として引き連れてくるとは
冒険者とワイバーンは気が合ったらしく
十年も二十年も私の前で弱点を探し続けた。
弱点というものは私には確実にある「寿命」だ
もうお迎えがきてもおかしくない年齢だ
私の視界は徐々に閉じていった
最後まで一人と一匹の声が聞こえる
その声は何故か心地よい・・・。
翌日ギルドのクエスト表には大見出しで
「ドラゴン討伐」の文字が掲載されていた
討伐主である冒険者はクエスト係に言った。
「私はまだあのドラゴンに勝ってない!!
なにが寿命だ卑怯者!!」
あの世という世界から私はあの冒険者の様子を見ていたが
まだ私に執着しているようだ・・・呆れた。
その冒険者は「ドラゴンバスター」という不釣り合いな称号を得て
今日も違うドラゴンに話しかける
「だから倒せるか倒せないか聞いてるの!!」