再会──“無能”と見下していた男の前で、女は剣を置いた
第4話:
『再会──“無能”と見下していた男の前で、女は剣を置いた』
森の入り口で、彼女は俺を待っていた。
──絢瀬 美琴。
かつてのクラスのエースにして、勇者パーティの女剣士。
冷たく、美しく、誰よりも“自信”と“優越”に満ちていた女。
「……やっぱり……貴方だったのね」
美琴の声は震えていた。
かつて俺に向けていたあの高圧的な口調は、もうそこにはなかった。
「久しぶりだな。……いや、“もう会うつもりもなかった”相手にしては、元気そうじゃないか?」
皮肉を込めた言葉に、美琴は視線を伏せた。
「……ごめんなさい。あの時、私は貴方を――」
「“無能”“荷物”って笑ったよな?」
俺の言葉に、美琴はぴくりと肩を震わせる。
「でも、どうした? その鎖。ずいぶんと似合ってないな?」
彼女の首には、奴隷の証――魔力抑制の鉄輪が巻かれていた。
「……全部失ったの。王都で……仲間だと思っていたパーティの男に裏切られて、身ぐるみを剥がされて、私は……こんな……」
「へぇ、裏切られたのか。……皮肉だな。俺も似たような目に遭ったんだ」
静かに、俺は彼女の目を見据えた。
「なあ、美琴。お前、力が欲しいか?」
「……え?」
「復讐したいとは思わないのか。自分を捨てた連中に。見下した奴らに、後悔させたくはないのか?」
彼女の目に、一瞬、強い光が宿った。
だがすぐに伏せられた。
「……私なんかに、その資格……」
「資格? そんなもん関係ない。やるか、やらないかだ。
俺はお前に“機会”をやる。お前がそれを掴むかどうかは自由だ。だが一度でも裏切ったら──」
腰に帯びたグラムの刃が、ギラリと冷たい光を放った。
「その首、容赦なく落とす。いいか?」
沈黙のあと、美琴は深く頭を下げた。
「……私を使ってください。命も、剣も、全部……貴方に預けます」
その瞬間、【支配契約:同意】のシステムウィンドウが俺の目に浮かぶ。
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【従属契約成功:絢瀬美琴があなたの従者となりました】
【スキル「剣術Lv3」「斥候術」「威圧」獲得可能(共有スキル)】
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(ふっ……面白くなってきた)
俺は、美琴の肩に止まっていたリュミエルと目を合わせた。
「これで、役者はだいぶ揃ってきたな」
『うん。あとは、どこから壊していくか、だね』
「……まずは勇者パーティ。次に、王都。最後に──あの“召喚主”どもを叩き潰す」
グラムの柄が脈動するように熱を帯びる。
『行くぞ、相棒。復讐劇は、まだ始まったばかりだ』
次回予告(第5話)
『王都潜入──“裏切り者”のレッテルを貼られた少年が、英雄に化けて帰還する』
復讐の矛先は、勇者と王族へ。
王都での潜入と新たな布石、そして“魔剣使い”としての名が広まり始める──!