表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/43

『お前には期待していない──最弱と呼ばれた鑑定士、異世界に立つ』

第1話:『お前には期待していない──最弱と呼ばれた鑑定士、異世界に立つ』


目の前が白く染まっていく中、俺の意識はどこか遠くに引きずられていった。

まるで夢の中を漂っているような、不思議な感覚だった。


「ようこそ、勇者たちよ!」


声が響いた瞬間、視界が一気に開ける。

そこには、金色の装飾が施された大広間。豪奢なシャンデリアと、大理石の床。俺たちの目の前には、王とおぼしき人物と数名の兵士たちがいた。


「な、なにこれ……マジで異世界転移じゃん……!」


ざわつくクラスメイトたち。

周囲を見渡すと、俺を含めたクラス全員が揃っている。教室にいたはずの俺たちは、今、ファンタジーRPGのような世界に召喚されたらしい。


「異世界召喚……チートとかあるやつ……?」


「うおっ、マジで来たのかよ……やべぇテンション上がってきた!」


「皆さんは、我が国を脅かす『魔王』を討つために、この世界に呼ばれました」


厳かに語る王の言葉に、誰もが息を呑む。

そして始まった“適性診断”。この世界では、召喚された人間に「職業」と「固有スキル」が与えられるらしい。


次々と光に包まれ、仲間たちの頭上に情報が浮かび上がる。



【職業:聖騎士】

【スキル:神聖剣Lv3・自己再生Lv2】


「おおっ、俺すげえ! これ勇者パーティのメインだろ!」



【職業:賢者】

【スキル:大賢者の叡智・魔力増幅Lv4】


「ふふん、頭脳派は俺に任せろ」



誰もが強力な職を得て、興奮と歓喜の声を上げる。

そして、俺──佐藤和馬の番が来た。


頭上に表示された職業とスキルを見て、周囲の空気が一変する。



【職業:アイテム鑑定士】

【スキル:鑑定Lv1・識別Lv1】



「……は?」


「何それ、鑑定士って……地味すぎない?」


「鑑定って、ただアイテムの説明見るだけだろ? 戦闘スキルすらねーじゃん!」


「いやマジで空気読めよ、こんな大事な時に最弱職とか……」


クラスの空気は一気に冷たくなる。

王の表情にも、露骨に「失望」の色が浮かんでいた。


「……彼は不要です。辺境の村にでも送り、労働でもさせておいてください」


それが、王の言葉だった。

仲間たちは俺の目を見ることもせず、まるで“バグ”でも見たかのように視線を逸らした。


──誰も、俺に期待していなかった。



◆ ◆ ◆


「ったくよ……マジでクソみてぇな人生だな、俺」


馬車に揺られながら、俺はそう呟いた。

行き先は辺境の村。魔王どころかモンスターすらあまり出ない、忘れられた地。戦力外通告を受けた俺は、護衛すらつけられず、ただ放り出されたのだった。


(……けど、これで終わる俺じゃねえ)


【鑑定】──このスキルには、まだ俺にしか知らない“裏”があった。


異世界に来てから、俺は気づいていた。


普通の鑑定士がただアイテムの性能を見るだけなのに対して、

俺の【鑑定】は、アイテムの“心”が見える。


──いや、正確には「アイテムと会話ができる」。


それに気づいたのは、村に着いた初日の夜だった。


村の納屋の隅に転がっていた、錆びついた一本の剣。


俺がその剣に触れた瞬間、頭の中に声が響いた。


『……ようやく、俺の声が聞こえる奴が来たか』


俺は驚いて、思わず尻餅をついた。


「な、なんだ今の……? 剣が、喋った……?」


『俺はかつて、魔王に仕えていた伝説の魔剣【グラム】。この百年、誰にも使われず、捨てられていた。だが、お前には見えるんだな。俺の本質が』


それが、すべての始まりだった。


そして次の日。納屋の地下に隠されていた宝箱からは、喋る盾、喋る指輪、喋る杖が次々と見つかり──


すべてが言った。


『お前にしか、俺たちは力を貸さない』


辺境の村で、俺だけに語りかける“伝説の装備”たち。


──最弱と言われたアイテム鑑定士。だが今、俺の足元には、世界を変える力が転がっている。


「……上等じゃねぇか。見てろよ、クラスの連中。お前らが笑った“最弱”が、世界をひっくり返してやる」


そしてその言葉通り、俺はこの村から世界最強への道を歩き出す。


次回予告(第2話):


『魔剣グラムのチュートリアル──“相棒”は元・魔王の右腕だった!?』

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ