併読の影響力
前回の検証は簡潔にまとめましたが、実際は相当な高揚感を覚えていました。
十五年の努力によって、人間の運命を操る力を手に入れたのです。
コントロールできるのは死因だけとはいえ、興奮するのも仕方のないことでしょう。
無論、ここで調子に乗るような真似は厳禁です。
迂闊な行動ですべてが台無しになっては本末転倒ですから。
一連の検証で多数の死者が出たせいか、私は警察から目を付けられているようです。
なるべく疑いがかからないように努めましたが、それも限度があります。
現代の法律では私を裁けません。
しかし、警察が非合法な強硬手段を取ってくる可能性は否めません。
今後は時間をかけてさらに用心深く行動しようと思います。
さて、本題に移ります。
一人の人間が複数の「読むと死ぬ話」を読むとどうなるのでしょうか。
翻訳作業をしていた大野さんは、おそらくすべての物語を読んでいます。
その彼は胃袋を吐き出して餓死しました。
「要約メモ」によると、いくつかの物語では登場人物が餓死していますが、胃袋は吐き出していません。
胃袋を吐き出すシーンはあるようですが、それはまた別の物語に出てきた描写でした。
複数の物語を読むと、呪いが正常に発動しないようです。
これは詳しく検証しなければなりません。
そのために私は三つの「読むと死ぬ話」を厳選しました。
一つ目は、主人公が刺し殺されるAというストーリーです。
二つ目は、主人公が大岩に潰されて死ぬBというストーリーです。
三つ目は、主人公が恋人と海で心中するCというストーリーです。
次に四人の被験者を集めました。
私は彼らにそれぞれに異なる指示を出しました。
宮部さんにはA、B、Cの順番で全文読んでもらいました。
木梨さんにはC、B、Aの順番で全文読んでもらいました。
我妻さんにはA、A、Bの順番で全文読んでもらいました。
矢田さんにはAの全文、BとCを途中まで読んでもらいました。
読む順番の影響、同じ話を繰り返し読んだ際の変化、さらに読んだ物語の比率を変えた際の変化を調べました。
被験者は一週間ほどで全員が亡くなりました。
以下に結果を記載します。
宮部さんは通り魔に腹を刺された後、落下してきた鉄骨に潰されて死にました。
後日、恋人が入水自殺しました。
木梨さんは友人とショッピングモールで買い物中、いきなり互いを刺し合いました。
一分後、崩落してきた天井に潰されて即死しました。
我妻さんは昼間の交差点の真ん中で、念仏を唱えながら出刃包丁で自分の腹を滅多刺しにして自殺しました。
この様子はSNSで拡散されていました。
矢田さんは線路に転落し、新幹線に轢かれて肉体が爆散しました。
こちらもSNSでたくさんの動画がアップロードされています。
正直、どう解釈すべきか悩む結果です。
明確な法則性が見られません。
読んだ物語の死因は関連していそうですが、矢田さんの例がそれを否定しています。
木梨さんと我妻さんも、読んだはずの物語を無視した死に方をしています。
恋人を含めた結果ですが、しっかりと三種の死因が混ざっているのは宮部さんのみでした。
今回の検証を無理やり結論付けるなら「複数の物語を読んだ場合、死因のランダム性が上がる」という感じでしょうか。
物語を読んだ際の印象や知識量、死の前後の行動も関係あるのかもしれません。
協力いただいた四人には申し訳ないのですが、明瞭な特性は突き止められませんでした。
狙った死因を誘引するなら、一つの話を読ませるのが確実のようです。