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呪いの公害性

 ここまで様々な検証を行ってきましたが、いずれも今回の検証に向けた下準備でした。

 必要な情報が集まったので、いよいよ本題に入ろうと思います。


 十五年前に「読むと死ぬ話」の存在を知った時、私は疑問を抱きました。

 この悪質な呪いを拡散したら一体どうなるのか。

 ひょっとして世界が滅びるのでは。


 疑問は興味となり、すぐに願望、そして衝動へと変わりました。

 取り返しの付かなくなった世界を見てみたい。

 ただそれだけのために、己の人生を捧げて「読むと死ぬ話」の収集を試みたのです。


 「読むと死ぬ話」は、いずれも月日の経過で埋没する運命でした。

 しかし私が集めたことで消失を逃れ、現在で返り咲くことに成功しました。

 インターネットの普及により、拡散の環境は完璧に整ったと言えるでしょう。

 故に私は一連の検証を始めました。


 実を言うと、拡散自体は既に終わっています。

 まず手持ちの「読むと死ぬ話」の写真と動画をSNSに大量投下しました。

 ネット掲示板や動画投稿サイトにもアップロードしました。

 さらに部分的に改変したバージョンを作成し、これもインターネット上に公開しました。

 誰でも編集可能な百科事典サイトにも上書きする形で載せました。

 あらゆるページや新聞の広告で「読むと死ぬ話」の文章と画像の掲載を依頼しました。

 印刷した「翻訳版」を手当たり次第にポスティングしてもらいました。

 「読むと死ぬ話」を自費出版の書籍として発売しました。

 国外の人々もターゲットにするため、多言語で記された「現物」もインターネットにアップロードしました。


 思いつく限りの手段を実行しました。

 いずれも大量に雇ったバイトにやらせました。

 歴史上、ここまでの死を振り撒いた人間はいないでしょう。

 すべてを完了させた私は今、清々しい気分です。


 前回の検証で、死の回避は不可能に近いと分かりました。

 果たして世界は滅びるのでしょうか。


 私はその結末をゆっくり待とうと思います。

 先ほど両目を焼いて視覚を捨てたので、拡散された呪いで自滅することはありません。

 この文章も音声入力で作成しています。

 実際に世界がどうなるのか目で見て確かめられないのは残念ですが、そこは我慢しようと思います。


 これを読んでいるあなたもご注意ください。

 「読むと死ぬ話」はインターネットに拡散されたことで不滅の呪いとなり、今も世界中に蔓延っています。

 降りかかる死が呪いの影響なのか、もはや確認する術はないでしょう。

 当たり前の現象として浸透し、受け入れられてしまうかもしれません。

 それならそれで構いません。

 死が訪れるその時まで、どうか人生を謳歌してください。

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