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朝から酒を飲んで、野球をしようと公園に向かった。そしたら俺達のベンチに、汚ぇ男が寝そべっていたんだ。いつからそこにいたのかは分からない。仲間の一人が言うには、朝からずっとそこにいたらしい。でっかいゴミ袋だと思っていたってよ。
俺達は特に気にせず酒を飲みながら野球を続けた。それなのに、悪いのは汚ねぇ男の方だ。余計な事しやがって。公園で遊ぶのは子供の権利だろ? 違うのか? 昼間に少しくらい騒いで何が悪い? 昼間から寝ている方が悪いんじゃねぇのか?
うるせぇんだよ!
擦れた怒鳴り声は、意外に大きく公園内に響いた。
ピッチャーをしていたあいつの動きが止まる。投げる途中のモーションだった。
なんだとこの野郎!
あいつは怒鳴り声と同時に持っていたボールを投げた。なかなかのコントロールだ。小学生の頃は野球チームのエースだったんだ。全国大会に行ったとか行けそうだったとか、よく分からない自慢をしていたな。
そのボールは、汚ねぇ男には当たらなかった。けれど寝ていたそのベンチには当たったんだ。
何すんだガキ共が!
汚ねぇ男は立ち上がり、叫んだ。素早い動きだった。俺にはまだ、寝ていた男の残像が見えていたくらいだったからな。
コジキのくせしやがって上等じゃねぇかよ!
あいつはグローブを叩きつけ、汚ねぇ男の前に駆け寄った。俺達も全員、慌てて駆け寄ったよ。あいつは少し短気なところがある。皆知っている。絶対に喧嘩だ。ワクワクしてな、少しでも近くで見物しようって思った。万が一あいつがやられそうになった時の事も考えていた。喧嘩っ早くても、特別強い訳じゃなかったからな。