エピソード1 1
エピソード1
そんなの聞いてどうするんだよ。俺はどこにでもいる一般ピープルだぜ。
まぁ、お前が聞きたいってんなら話してもいいけどよ。つまらない普通の話ばかりだ。なにから話せばいいのかも分からねぇ。
ガキの頃の話でもしてみるか?
今一番戻りたいと思うのは、中学時代だな。あの頃は怖いものなんてなく、好き放題していた。まぁ今でも、怖いものなんてないけどな。
中二の夏、朝から仲間と集まって、酒を飲んでいた。どこのガキだって似たようなもんだろ? 夏休みに弾けないでいつ弾けろってんだ?
ふざけんなよ。今そういう事を言うのか? 未成年の飲酒なんて普通だろ? お前は飲んだ事ねぇのかよ! 嘘言ってんじゃねぞ。一度も口にしていないなんて言わせねぇからな。そういう奴はな、普通じゃねぇんだよ。変人だな。普通は興味本位で一度くらい口にするだろ? 特に中学生はな、そういう事に一番反応を示す時期だろ?
そうだよ。それでいいんだよ。お前だって飲んだ事あるんだろ? 言い訳しなくていいんだよ。あいつらだって同じだ。そんな法律はな、あってないようなもんなんだろ。
あの頃は楽しかった。何も考えずに酒を飲んで、野球したり缶蹴りしたり遊んでいたんだ。俺の周りに金を持ってる奴はいなかったからな。ときには万引きする事もあったよ。それだって普通だろ? モノの大小に違いがあっても、した事ないなんて言わせねぇからな。
親のタバコをくすねて、盗んだ酒を飲み、夜まで遊んでいた。腹が減ったらパンを盗めばいい。楽しい夏休みだったよ。
あの日の事でも話すか? それくらいしかお前が喜ぶ話なんてありゃしねぇよ。俺はな、本当にどこにでもいるような中学生だったからな。部活道には所属していたけれど練習なんてしていない。塾にも行っていない。標準の中の標準だ。これから話す事だって、俺もそこにはいたけれど、殆ど見ていただけだ。俺は何もしちゃいねぇんだよ。おかしいのはいつでもあいつ一人だ。