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彼を刑務所に初めて尋ねたのは、死刑が確定した翌月の事だった。特別扱いの彼は、マジックミラー越しの警察官に囲まれた特別室で暮らしていた。トイレも丸見えで、その生活の全てを監視カメラに撮られていた。刑務所の中にそんな部屋があるとは知らなかった。きっと誰も知らない事だろう。知られてはいけない特別な部屋だという。
彼には私が知る当時の面影はなかった。伸び放題のヒゲは、顔の形を隠してしまう。喋り方も、私の知る彼とは違っていた。対面の印象は最悪で、やっぱり引き受けなければと遅い後悔をした。彼に対して少しでも過去を期待した自分が恥ずかしい。そして、彼に対して少なからずの憎しみを感じてしまった。犯罪者なんて、誰もが最悪の非常識人間だと感じてしまう。