第3章―会社発展編 第20話 システム部門立上② 【1999年9月】
長い目でお付き合い頂ければ幸いです。よろしくお願いします。
後日、N証券での打ち合わせで法人担当であった営業マンと支店長の二人が同席してくれた。こちらからは社長である私と佐藤部長に同席のもと、話し合いを始めた。
N証券支店長と会うのは初めてだったため、挨拶がてら名刺交換をした。交換する際に、支店長は特に私の方をじろじろ見てきた。まぁ確かに私は19の大学在学中の坊主だよ。最近大学も行ってないので、もし履歴書を書く必要があるなら、最終学歴は高卒になるのか大学在学中になるのかは知らんが。
「本日、どのようなお話ですか?私も忙しいので手短にお願いします。」
丁寧な口調ではあるが、N証券の支店長は打ち合わせ初っ端から、上から目線で会話をしてきた。さすが支店長となるとエリートさんですね。
「はい、お聞きしていると思いますが、電話で事前にご相談させて頂いた。現時点で株式の売買で御社を通して大きな額の手数料を払っておりますが、取引の際に生じる手数料が、弊社にとって徐々にですが大きな負担となっております。今後も同じ条件では、取引に必要な手数料を見直さざるをえない状況になっておりますので、今回手数料の面で改善できないかのご相談でお伺いしました。また来月の10月には国の方で、手数料の自由化も決定しておりますし、それを踏まえての事前のご相談となります。」
そんな中、佐藤部長は先方である支店長の言い方を気にせずに会話を始めた。
「まぁ、たしかに御社の取引額を見た所、ここ数か月で急激に増えており、びっくりしております。しかし弊社の規定では、手数料を下げるような規定がないので、御社だけを優遇するのは難しい要望ですね。おっしゃる通り来月から手数料の自由化が始まります。それに合わせて現在、社内で法人向けの手数料の検討会は始めてます。御社はまだ設立半年の会社ですよね。この検討会の枠に御社が該当するかは難しいですね。」
(なんだよ。このイラッとする会話とこの空気感は、大手だから偉いっていうのか。うちの会社が新しい会社だからって軽く見られすぎだよ。それとも俺みたいな若造が運営している会社だからか?とは口に出して言えないな。) この支店長は、高慢ちきなおっさんだなぁと俺は思った。
「はい、たしかにわが社は設立半年の会社ですが、それは逆に言うと半年でこれだけ大規模の取引ができるようになったということです。今後はさらに大きな株取引が見込まれます。それにより御社へのメリットもさらに大きくなると思います。如何でしょうか。」
佐藤部長は、先方の発言を特に気にせずに会話を続けた。
「でもねぇー。半年の会社でしょう。社長さんも若い方だし。株式以外の業務内容はどんな会社さんですか?」
支店長は、一向に気乗りしない感じの返事で返した。
(こいつは今までこんな感じで、いろんな商談をしてきたんだろうか。)
俺は、こいつのエリート面に腹を立てながら、支店長は若造の俺を相手にするつもりがないのか、こっちを一向に見ない為、俺がしかめっ面をしたが支店長には気づかれなかった。
「はい、株取引と不動産取引です。社長も若いながらとても優秀なディーラーです。」
「ふーん、不動産ねぇー。土地成金の会社ですか。羨ましいですなぁー。」
支店長は、私の名刺を手元でブラブラさせながら、話を続けている。
(うっわぁ、すっげぇ思ったことを口に出しおった。そこまでいくと逆に感心するな。)
佐藤部長と支店長の会話が、予想の斜め以上のやり取りとなって唖然としながら聞いていた。
「そういえば佐藤部長は、前職は何をされていたのでしょうか。」
「はい、私はY証券で株屋を20年ほどやってきました。ご存じの通り数年前に廃業してしまったので、2か月前に縁あってこちらに入社しました。」
「っえ、あの廃業されたY証券ですか。ふぅーん、だからかぁー。若い子が社長の会社に入社したんだ。若い子の下で働くのはあなたも大変ですね。」
支店長は、私のほうを横目でチラッと見ながらため息がてら話しかけてきた。
私は横から聞いており、佐藤部長を馬鹿にするような言葉を聞いた瞬間、
「支店長、忙しい中、打ち合わせありがとうございました。また出直してきます。今回はこれで失礼します。」
イラっとして俺は何も考えずに一方的に、佐藤部長とN証券の支店長の会話に割って入って会話を終わらせようとした。
「っえ、これでよかったのですか。手数料の件は検討するけど、そちらからの要望は以上ですか?要望は本社に上げておきますが、それだけでよろしいでしょうか?」
私が今まで会話に入ってこなかった中で、急に横から会話に入って打ち合わせを終わらせるようにししたので慌てて支店長は、回答を聞いてきた。
「はい、今日はとても貴重な時間頂いてありがとうございました。では、失礼します。」
私は、返事も聞かずにお礼だけ言って、佐藤部長を連れて部屋を退出した。
「はぁー。むかついた。エリートってなんであんな高慢ちきなんだ。」
俺は証券会社を出る間際についつい口に出てしまった。
「それは社長の偏見ですよw あの支店長が特別過ぎるんですよ。急に打ち合わせをぶった切ってどうしたのですか、あなたらしくないですよ。」
帰ろうとする私の後を慌てて付いてきながら、佐藤部長が私の方に向かって言ってきた。まぁ確かにおれも話の途中で会議を切り上げるつもりはなかった。
一旦落ち着くために、証券会社からの帰り道沿いに建っていた喫茶カラスに入り、席に座り店員にコーヒーを2個と喫茶カラスといえば、(名物!あんトースト)三角形に切られたトーストにあんことホイップクリームがサンドされているトースト2個頼んだ。タブン昔から変わらない味。(喫茶カラスってこの当時からあったんだな。)
「佐藤部長ごめんなさい。自分の事を若造と見られたり、上から目線での物言いには慣れているけど、一緒に同席している佐藤部長に対してまで、同様な目線や嫌味言われると慣れてなくて、プッツンとしてしまった。若気の至りで本当にごめんなさい。」
言葉では申し訳ないような言葉を口に出したが、あまり悪びれてない感じで佐藤部長に伝えた。
「そうですか。私は前職の事なんて、もう言われ慣れてますから気にならないのですが、私のためにありがとうございます。でもこれからどうするのですか?」
佐藤部長は店員が持ってきたコーヒーを飲みながら、疑問になっていることを質問してきた。
「どちらにしろ、あの支店長の感じは、会社として手数料の個別での優遇は支店長権限では無理だろうし、システム連携の話も本社とのやり取りになりそうなので簡単ではないですね。他の証券会社をあたりましょう。」
私は、途中で会議を打ち切ってしまったことは、少し反省しながらも結果は同じだろうと考え、コーヒーを一口飲みながら答えた。
コーヒーっていつの時代でも苦いなと思いながら、いつも以上にミルクを多めに入れた。当初の予想通り大手のN証券では話が進まないなと思った。
「はい、たしかにそうですね。あそこまで渋られるとは思いませんでした。事前に話していた通り、次の証券会社を探しますか。できれば名古屋に本社があったほうがシステム部分の情報のやり取りの連携で楽ですね。N証券との株の取引は今後どうしますか?」
そして佐藤部長も同様の事を思っていたが、次を考え始めた。
「条件のあう証券会社が見つかり次第、口座を切り替えていこうか。」
めんどい仕事が一つ増えたが、いつか同じことが起こるなら早めに問題がわかってよかったとプラスに考えておこう。
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1999.3 投資会社立ち上げ
1999.3 高校卒業
1999.4 投資会社 名古屋駅前に本社移転
1999.5-7 親族や佐藤さんなど即戦力入社
1999.8 不動産会社買収
実際に発生した出来事
※.1999年10月1日に株式売買委託手数料を完全自由化
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