第2章―会社創業編 第13話 新居への引っ越し 【1999年3月】
第2章開始です。大学生になったはずが、学生より新社会人って感じになります。
長い目でお付き合い頂ければ幸いです。よろしくお願いします。
自分の投資会社は無事に設立できた。わかりやすく3月15日を設立の日にした。語呂が“サイゴ-最後”ってわかりやすいと思う。語呂に関しては、特に意味はない。
前回の会議にて話していた新オフィスの話だが、自分が伝えたオフィスビルの事務所は空きテナントがなく、結局おじいちゃんの昔の伝手を使って名古屋駅前付近に1フロアのみだが場所を4月から借りることができた。
オフィス開設は、父さんの本業の営業時に同じような事を多くやっていたので、父さんに頼んですぐにオフィスに入れるように手配してもらった。そのため4月1日から借りられて4月中旬からオフィスに入れるように手配してくれた。4月は年度初めなので業者に無理を言って頼んだと思う。
卒業式の次の日曜日に一人暮らしのためのマンション探しに駅前に出かける事にした。駅前には賃貸マンションを紹介する代理店が多くあった。その中でも一番きれいそうで大きな販売代理店である店に入ることにした。
店に入った所、一見さんと思われ新人と思われる店員のお兄さんが対応してくれた。
「いらっしゃいませ。本日はどのようなお部屋をお探しですか。大学に通うアパートでよろしいでしょうか。」
確かにこの時期で俺みたいな見た目は、大学に通える近くのアパートを探している時期的にぎりぎりの日程で慌てているような感じの春から大学生に見える。間違ってはいないので、否定はできない。
「いえ、名古屋駅に通うためのできるだけ近場でマンションを探しています。」
「これは失礼しました。新社会人さんですか。」
少し驚いた表情ですぐに謝ってくれた。
「名古屋駅から1.2駅で駅から徒歩5分以内の距離のマンションを探しております。」
「予算はどのくらいを想定されてますか。栄や伏見と比べたらお安いですがそれでも名古屋駅付近のマンションの価格は思っているよりかなり高めですよ。」
少し驚きを持たれながら予算を聞いてきた。周りの営業の方も話声を止めて聞き耳を立て始めた。このころは、まだ栄がビジネスマンの中心街だったために名古屋駅から駅1つでも私の中では想定より安い感じだった。
「予算は20万ぐらいを想定してます。会社までの通勤時間を少しでも削りたく思いますので名古屋駅から通勤時間が短いところを優先でお願いします。」
若造が20万円と予算を答えたので、店内にいる店員さんが仕事を止めてこちらを振り向いた。ホストには見えないので怪訝な表情をされた。若造が払える予算を超えている感はある。
話を聞いていた名札に店長と記載されていた方が慌てて席を立ち、紹介物件を持って話に入ってきてくれた。
「お客様、予算を少しオーバーしますが新築マンションで名古屋駅から一駅の場所に物件がありますが見に行かれますか。ちなみに保証人はおりますでしょうか。」
「保証人は、家族がおりますので問題ないです。条件の合った物件があるのですね。それは話が早い。すぐに見に行きましょう。」
新築なんて聞いたら、心の中でテンションが上がったが、それを表面に出さないで返事をした。
店長さんは、私を対応していた新人の営業さんに新築のマンションを案内するように指示して席に戻った。
名古屋駅から一つ挟んだ駅を、歩いて数分の場所に新築のマンションがあった。店舗から車で出発した所、すぐに現場のマンションにたどり着いた。ほぼ完成したような外観だった。マンションの近くにモデルルームが作られており、最新のキッチンなどの便利さや駅近辺という場所や新築の綺麗さを宣伝文句に販売されていた。予算は少し超えるがここに決める事にした。
料理を作ることはできないので、キッチンは使えないが・・・
せっかくなので社宅として法人契約をすることにした。社宅として法人契約しても100%会社が負担するのではなく、20%程は、自分負担をする予定だ。100%会社負担にすると家賃代を給与と見なされ、税金が余計にかかると税理士からアドバイスを事前に頂いていたためである。
部屋を決めた足でそのまま名古屋駅の電器屋に行くことにした。今の時代の最新の電化製品がわからない為、一通りチェックする事にした。洗濯機・テレビ・冷蔵庫・掃除機かな。掃除機はダイ〇ンってまだこの時代ないのかな。後数年したら掃除機ってメインが、ダイ〇ン中心の売場になる感じで一気に商品が変わってしまう感が日本人として悲しい。ちなみに前世では掃除する暇はなかったが、ダイ〇ンに憧れていたのは内緒である。
電化製品以外では、ベッド・机・テーブルかな。ベッドは何が有名かあまり知らないんだよな。とりあえず睡眠が大事だから高級ベッド一択で選ぼう。経費で買えるかわからないが、ウロチョロ見ていたら、寝心地のよさそうなベッドを発見した。そのベッドは18万円もした。値段を見ずに寝心地で選んだ結果だった。10万円を超える買い物を結果的にしてしまったが、ベッドを会社経費で購入したら、まさかの固定資産となってしまった。一括償却資産として処理しよう。経費って一つ一つ計上する科目が異なるのね。税理士って大変ですね。領収書は絶対に無くさないようにしようと財布にしまった。
机やテーブルなども別の店で買って購入した商品は、マンションに入れる予定日に届くように手配をした。
次の月曜日は、先週金曜日に買った株を高値で売却をし、当日15時までに上昇する株を午前中に買って14時ぐらいに売却をして、明日開始直後にあがる株を15時締め間際に買う。株の価格が事前にわかるので、タイミングだけ間違わなければ問題ないが、取引時間中、俺はモニターとにらめっこで忙しい平日が毎日続いている。
株式市場が閉まった後は、また名古屋駅に行き今日は、証券会社に行って法人口座を作ることにした。
事前にアポイントを取っておいたので、窓口で呼んで頂いた後、奥の部屋に案内された。前回同様に待っているとすぐに担当の梶谷さんが来てくれた。
「1カ月ぶりぐらいですかね。本日はどうされました。」
前回会った恰幅の良い梶谷さんが私を見るなりすぐに思い出し、話しかけてくれた。
「お久しぶりです。今回会社を設立しましたので、会社の法人口座を作りたいのですが、また口座の開設をお願いできますか。」
「・・・ぇっ、会社を設立されたのですか?それはすごいですね。ちょっと法人口座は法人担当が必要となるので、法人担当を紹介したいと思いますがよろしいでしょうか。いまはやりの高校生起業家ですか?」
梶谷さんは、少し間をおいてかなり驚きの表情をしながら、私に話し続けた。
「高校は、この間卒業したばかりですので、この4月から大学生です。法人の口座には法人担当が必要なんですね。なら会社を設立したので法人担当を紹介して頂けますか。今後の予定としては、億単位の運用を考えておりますので法人担当の方をお願いしたいです。」
さすがに高校生起業家ではないので、苦笑いしながら俺はとりあえずお願いする事にした。
「億単位の運用ですか。それはさらに驚きですね。ちょっと若めですがうちの若手エースを呼んできますよ。おそらく今手が空いていると思いますので、少々お待ちくださいませ。」
梶谷さんは羨ましそうな顔をしながら、法人担当を紹介してくれることを約束してくれた。話し終わると同時に席を立って紹介したい人を呼びに階段を上って行った。
少し時間がたつと先ほどの担当の梶谷さんが、眼鏡をはめたスーツの似合う30代手前と思われる方と一緒に階段を降りてきた。
「すみません。新規で法人口座を運用したいと聞きお伺いしました。話によるとかなり大規模での運用と聞いておりますが。」
スーツが似合う細めの眼鏡をはめた30代手前の方が、眼鏡を持ち上げながら私の方を向いて話を始めてくれた。
「大規模かは判断が難しいですが、億単位の運用を考えております。しかしネットでの株取引の運用がメインなのであまりあなたの成績に影響するかわかりませんが、そこは勘弁してくださいね。」
「分かりました。今後株取引で何かいい情報がありましたら、真っ先にお客様に連絡をしますよ。」
「いい情報っていうのは、例えばどんな情報ですか。」
証券会社の営業のいい情報ってインサイダーってこと?気になってしまったので質問をしてみた。
「会社の新規上場とかは、かなりいい情報と思いますので、購入できるかどうかは市場の状況次第となりますが、早めにお声かけさせて頂きます。あまり声を大には言えませんが、優先的に割当もできるかもしれません」
新規上場は、市場価格が決まってない中での株購入となるため、株価を上がりやすい。数件に1回はババをつかんで思いっきり新規上場でも下がる場合があるが基本、株価が上がるような価格を証券会社さんが設定してくれる。そうしないと上場した際の会社の見栄えが悪くなる。株価が上がりやすいので、多くの人が新規上場の株を購入したいと申し込むため基本抽選となる。一方で抽選に当たるときは、購入したい投資家の申し込みが少ないと考え、株価が下がってしまうのではと警戒してしまうこともある。
「新規上場ですね。了解しました。その時は、一声頂ければと購入するか検討します。よろしくお願いいたします。」
インサイダーではなく、ただの営業の話だったので和やかなムードで法人口座を作ることができた。証券会社の営業がそんなインサイダーみたいなことをポロっと素人に言うわけないわな。証券会社や新聞社には、インサイダーになりえる情報がそこかしこに転がっていると勝手に思っているが、それは思い込みなのかな。
そしてサクラが咲く季節の4月になった。会議は毎週末行っており、資金も法人口座に移すことができ、順調に資金が増加していることを報告していた。
俺は、3月に契約した駅前のマンションに引っ越すことができた。新規オフィスができる当面の間はマンション内で株の運用を行う予定だ。そのため一人暮らしとはいえ、朝7時に起きて経済新聞を読みながら朝食を食べ、午前8時には机に座り翌日に上がる銘柄の中から買う銘柄を決め、午前9時の株式市場開始から15時までパソコンとにらめっこして株を転がすことが1日のルーティーンとなった。
週末にはもちろん会議のために実家に帰っていた。
4月中旬になり、名古屋駅の借りたオフィスに入れる予定だ。週末の会議は今後名古屋駅のオフィスで行うため、実家での会議は最後になると伝えた。今後は、家族会議から取締役会議と名称を変えて、継続する予定だ。
参加メンバーはまだ家族のみだが。
名古屋駅で借りたオフィスは、10人ぐらいが入れる仕事場と仕事場より少し広めの会議室兼食事場の2部屋となる。月60万程の家賃で、とりあえず小さいながら自分の城ができた。前の人生では考えもしなかった。自前の城だ。
そして自分の席には、パソコンのモニターを4個ぐらい並べて、いかにもディーラーっぽく準備してもらった。
昔から机の上にいっぱいモニターを並べた席に座ってみたかった。実際に座ってみたら壮観の景色だった。俺って前の人生でもこんな感じに椅子に座るのが夢だったな。実際は、4個の画面を全部使うのではなく、1画面あれば株の取引は済むけど、形から入りたいから、机の上にいっぱいあるモニターは大事だな。と思ってみた。半面、画面がいっぱいあるから、帰り道に目薬を買って帰ろうと思ったのは内緒である。
このころになると株式運用の運用金額の規模も大きくなってきたので、1銘柄のみでの売買は影響が大きくなりつつあったので、投資金額を半分に分けて2銘柄ずつでの運用をし始めていた。
オフィスも準備が整い、会社としての形が揃った。これでオフィスに来て、一日株取引をして過ごせばいいんだ。実家やマンションだとオンとオフの切り替えが難しいからよかった。マンションに引っ越してから、マンションでの仕事する期間は短かったが、早く会社で株の取引をしたかったので渡りに船だった。
しっかりと拠点もできたので早く社内規定やルールも作らないといかんなと思った。
「さて司法書士さんに、本社移転の書類提出と依頼していた名刺をお店でもらってくるかな。」
一人物思いにふけりながら、心機一転気持ちを改めた。
ちなみに大学は、一週間だけ通って前回の人生と代わり映えがしないと思って、後はあまり行ってないのは内緒だ。
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1999.3 投資会社立ち上げ
1999.3 高校卒業
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