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過去7 そして大都市へ。貴族の養子になるために

 俺は行商人の荷馬車に乗り込んで、夜の内に生まれ育った村を出発した。


 目指すは近場の城塞都市『ルイドラ』だ。

 活気のある工業都市で、街には多くの貴族が住んでいるとか。


 もうすぐこの目で貴族の女の裸を見れる! 

 そう思うと胸がわくわくした。


「じゃ、ルイドラまで頼むわ。安全運転でよろしくな」


「ああ、任せてくれよリュートくん。この命にかえても、君を無事に街まで送り届ける」

 荷馬車の持ち主であるホッグは、ご自慢の顎髭を撫でながらウインクした。


 ホッグは年に一度の頻度で俺の村に立ち寄る熟練の行商人だ。

 経験豊かなこいつに道案内を任せれば、途中で夜盗や魔獣に襲われる事はないだろう。

 旅は経験がものを言うのだ。


「そうだホッグ、銀貨30枚ほど貸してくれないか。街に着いたら色々と入り用になるかもしれないからな」


「ああ、もちろんだよ。僕が君の頼みを断ると思うかい?」


 ホッグの事はもちろんすでにテイムしてある。

 俺の足として財布として、しばらくはこいつを活用するつもりだ。


**


 ルイドラまでの旅路は平穏だが退屈なものになった。


 ホッグの豊富な知識のおかげで途中で大きなトラブルに見舞われる事はなかったが……代わりに楽しい事もなかった。


 そして、女っ気もなかった。


「うぅ……おっぱいが見たい……おっぱいが……うぅ……」


 俺は、連日連夜うなされた。

 旅を始めて三日が経つ頃には、「おっぱい」以外の言葉が言えなくなっていた程だ。


「ど、どうして神は、俺にこんな試練を……?」


 女を覚えて間もない俺にとって、男二人のむさ苦しい旅生活は苦痛でしかなかった。


 俺は涙を流し、自らの運命を呪った。


 どうしてこんな事になったのだろう……俺はただ、貴族の女の体を無責任に食い散らかしたいだけなのに……。


 どこかにテイムできそうな女が落ちてないかと血眼になって探したが、道中の宿にいるのはむさ苦しい男達と皺の深い中年女だけだった。

 クソがァ……!


「くそ、街に着いたら必ず女を……貴族の女をテイムしてやる……!」


 禁欲的な日々を重ねるたび、俺の思いはどんどん強くなっていった。


 そうして村を出発してからちょうど一週間目のこと。


 ついに、目的地が見えてきた。


「ごらん、リュートくん! あれが工業都市ルイドラさ! 美しい城壁だろう?」 


 ホッグが指さす先には、真っ白な壁がそびえ立っていった。

 白亜の城壁――工業都市ルイドラの名物だ。


「ホッグ、早くあそこに行こう! 早く……もっと早く馬車を走らせてくれ!!」


 俺は必死にホッグを急かして、馬車のスピードを上げさせた。


 慌てなくても街は逃げない。

 それはちゃんとわかっていたが、慌てずにはいられなかった。


「……ッ……ッ……」

 思わず、息が乱れた。


 狩人の血が騒ぐ――あそこには俺の獲物がいる。

 そんな予感が俺の胸を逸らせていた。


「それじゃあ、僕は入場の手続きをしてくるよ。リュートくんの身分については適当に誤魔化しておくから、後で口裏を合わせよう」


 本来であれば、俺のような身分卑しき村人は街に入る事すらできないのだが……そのへんはホッグが上手い事誤魔化してくれた。


 俺は由緒正しい商家の一人息子で、リンヴィール商会の新米徒弟――と、いう設定になっている。

 

 そして、ややこしい入場の手続きは終わり。


 俺はついに新天地に足を踏み入れ、大都市の光景を目の当たりにしたのだった。

 

「――――」


 感動のあまり、言葉が出てこなかった。

 立ち並ぶ建物はどれもカラフルで芸術的で、道は綺麗な切り石で舗装されている。


 道行く人は数多く、誰も彼もが綺麗な布で己の五体を着飾っている。

 そして、何より――


「お、おおお……女のレベル、た、たたた高く、ないぃ…!?」

 動揺して、どもりまくってしまった。


 だって女が全員綺麗なのだ。

 顔の形が整っている…神が上等な糸のように艶めいている。


 “村一番の美人”レベルの女が、吐いて捨てる程いる……すげえ、これが大都市か。


 今から手当たり次第に道行く女をテイムして、ハーレムをつくりたい……そんな衝動に駆られた。


「落ち着け、落ち着くんだ俺……」


 俺が大都市に来たのはなんのためだ?

 決まってる……貴族の女をテイムして体を好き放題するためだ。

 そして、あわよくば……。


「貴族の身分を、手に入れる」


 村の狩人の子が、貴族の身分を手に入れる――本来であれば、そんな事は不可能だ。

 だが、俺に限って言えば可能だ。

 

 適当な貴族をテイムして、

「俺を養子にしろ」

 そう要求すればいいだけなのだから。


「なあホッグ、貴族ってどのあたりにいるんだ? 貴族がたまり場にしてる店とかないか?」


「あるにはあるが……そういう店は大抵、会員制だからね。我々平民はなかなか中に入る事はできないんだ」


「じゃあ……貴族がよく歩いてる道とかないか? 俺はどうしても貴族の体に触れないといけないんだよ」


「うーん……貴族は大抵馬車で移動するからね。徒歩で外出する時も、必ず護衛や御付きをつけてるし……体に触れるのは難しいかもしれないよ?」


 むぅ……さすがは貴族、一筋縄ではいかないか。

 だが、だからと言って諦めるわけにはいかない。


 俺は誇り高き狩人の一族の末裔だ。

 狙った獲物は必ず射止めなければ、ご先祖の皆様に申し訳が立たない。

 

 獲物を捕まえるために、必要な事は――

 

「よし、情報収集だ。ホッグ、俺のために街の貴族の情報を集めてこい」

 

 **


 それから一週間に渡り、俺はホッグを街のあちこちの酒場に派遣して、貴族に関する情報を集めさせた(ちなみにその間、俺は宿のベッドでお菓子とか食べていた)。


 平民街によく姿を現す貴族はいないか。

 無防備に一人で夜道を歩く貴族はいないか。

 子供の俺が、体に手を触れる事ができそうな貴族は――


 そしてホッグの熱心な調査の結果、一人の貴族がリストアップされた。


 名前はエリザ・ヴィン・シューレイン。

 三か月程前に名門シューレイン家に嫁いできた女で、年齢は19歳。


 旧姓はエリザ・ヴィン・トーキィール

 トーキィール家もまた名門中の名門だ。

 つまり生まれからして生粋の貴族。良家のお嬢様、どころの話じゃない。


 エリザは結婚相手に強い不満を抱いているらしく(政略結婚だったのだ)、当てつけのように夜遊びを繰り返しているらしい。

 夜な夜な舞踏会に顔を出し、時には平民街の酒場にも顔を出すとの事。

 まさに、俺の理想とする獲物だ。


 ――決めた、こいつを俺の奴隷にする。


 俺を養わせ、体をむさぼり、そして最後には――


「孕み袋にして、俺の子を産ませまくる」



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