物陰から急に飛び出して人を驚かせるときに発する声
俺には、とある過去がある。
俺は当時、死にたかった。死ぬために建物の屋上のフェンスを乗り越えようとしていた。フェンスに足を掛けたときだった。
「わぁー」
「うおっ!?」
突然の女性の人の声に俺は驚いてしまい、乗り越えかけてたフェンスから飛び降りる。
「なにするんスか」
俺は声を荒げて問いただした。
「君、死のうとしてたでしょ。ダメだよ、命を粗末にしちゃ」
は?そんな漫画やらアニメやらみたいな綺麗事言って、いくらなんでも自殺をやめるわけがないだろう。
「はぁ・・・、俺にはもう遅いんですよ。俺はもっと、早くに貴女と会いたかった。だったら、考え方も行動も変えれたかも知れない」
「なぁに言ってるのよ、って私も言えた口じゃないか」
「過去に何か、あったんですか?」
「そうだね、折角だから君に教えてあげよう。これを聞いたら、今からでも君の考え方が変わるかもしれないね」
変わるはずがない。そうわかっていたのだが、俺は自分でも気づかぬ内に話に引き込まれていたみたいで、いつの間にか話に聞き入っていた。
彼女が言うには、元々彼女も死にたがりだったらしい。俺と同じように飛び降りようとしていたとき、ある男性に助けられたらしい。そのときは彼女も、こんな綺麗事、と思っていたらしいが、根気よく説得してきたその男性に段々と心を許し最終的に、自殺を諦めたとのことだった。
「どうかな?自殺、やめる気になってくれた?」
その言葉で俺は膝から崩れ落ちた。
「自殺は、もうしません。同じ過去をもつ人間同士、よろしくお願いしますね」
その女性は、うん、とひとつだけ頷くと俺の前から姿を消した。最後まで見守らなかったのは、結果に興味を示していないのか、本当に自殺をしないと信じたのか。その行動ひとつも俺の自殺をやめるきっかけになってくれた。
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俺は健康診断で来た病院の屋上にたばこを吸いに来た。のだが、何やらフェンスを乗り越えようとしている女の子がいる。
「わぁー」
その女の子はビクついて俺の方を振り向く。
「なぁ、死ぬつもりなのか?」
「うん、病気もなおらないし、楽しいこともないから」
「そうか、別に死んでも良いんだ、それは君の自由だ。なんだが俺の昔話を聞いてくれないか?それを聞いたら君の考え方も少しは変わると思うんだ」