VS 地底魔王四天王ウェパル②
地底魔王四天王ウェパルと対峙しているリリン、海の勇者ルカ、クアラ。そこにロイドとイーサン、ベルグ隊長が合流した。
「タコの足は毒で再生を遅らせてるけど、上半身の間合いに入れなくてっ…」
リリンの報告にロイド達が頷く。
「リリンはそのまま足に集中していてくれ。上半身を片付ける。」
リリンが魔力を集中させ一気にウェパルの足に攻撃を仕掛けた。
「グオオォォォォォ!!」
ウェパルが、その衝撃で足の再生が追い付かず怯んだ瞬間、ロイド、イーサン、ベルグ隊長、海の勇者ルカ
そしてクアラが総攻撃をウェパルの硬いウロコを頭部、首、背に纏ったウミヘビの様に長い上半身を仕掛けた。一同の魔力と討伐の気持ちが一つになった瞬間、その攻撃は大きな十字を光描き、その光はウェパルを飲み込んんだ。
ロイド達の総攻撃は、海底都市アラティスを半壊させるほどの威力を発し、
攻撃を終えたその場には、硬いはずのウロコは粉々に砕け散り、頭部だけとなったウェパルが転がっていた。
「――――――ま…まさか…こんな…姿を……さらす…羽目に…――――――
キサマ達…は…決して――――――」
「地底魔王軍四天王ヴァラクには、勝てないよ。たとえ今ここでウェパルを倒したとしても、
地底魔王軍の侵略攻撃は止まらない。」
ウェパルの言葉に続く様に、アイクが何もない天井を見ながら、まるで自分には届かない遠くを見つめるような寂しい口調で呟いた。
「―――――勝てる、勝てないはどうでもいいよ。俺は、いつものアイクに戻って欲しいだけだ。」
「――――――は?」
アイクは驚きを隠せなかった。万一の事が起きたら、絶体絶命の海中で裏切り行為を、そして自身の奴隷妖精を使って傷付けた自分をまだ許そうとするポッチェの思考回路についていけない。そんな表情だ。
「まさか、この期に及んで僕の事、許そうなんて考えているんなら、この先、生きていけないよ?
さっさと殺しておいた方がいいよ、いつまた裏切るか…」
「ちょっと邪魔するわ。」
そうぶっきらぼうに話すアイクを無理やりポッチェに起こさせたリリンは、アイクの服の腕を捲った。そこに浮かんでいたのは、紫黒い呪印だった。
「ちょっ……!!」
「これは、出会った頃からあったもの?誰に付けられたの?」
「呪印?」
アイクはそっぽを向いて、沈黙を貫こうとするが、その両頬を片手で掴んで、自分の方に向かせたリリンがサキュバス本来の魅惑の魔法をアイクに掛けた。ぎょっと見ていたポッチェだったが、リリンの行為を止めないようウェパルを倒したロイド達がポッチェ達に駆け寄り、イーサンがポッチェに心配ないと首を振った。
イーサンの使役妖精、マールとマエルもアイクを心配して見る、アイクの奴隷妖精の手当てをした。
魅惑の魔法に掛かったアイクがポツリポツリと語り出した。
「――――――僕は、孤児だった。拾われた妖精狩人に妖精について…妖精治癒師として才能があると…
けれど恩師はウェパルに殺され…使えると判断された僕は、逃げないよう…裏切ったと判断されたら発動する死の呪印を施術され……地底魔王軍が人間界を侵略するのに突如として現れた瘴気の陣と呪印を浄化出来る…聖蛇の娘を殺せと…けど―――――――殺せなかった…」
リリンがここまで口にしたアイクの目の前で指を鳴らした。すると魅了の魔法が解け、アイクが自我を取り戻し、顔を真っ赤に、口に手を当て下を向いた。
「アナタは本質が優しすぎるのよ。あの奴隷妖精にも呪印が施術されているのね、アナタが裏切ると、共に死ぬ様に。」
「え…」
リリンの言葉にロイド達がその卑劣なやり方に怒りを覚えた。
「アイク、俺はお前の事を助けたい。お前をそんな風にさせた卑劣な奴らから助けたい、そしてまた一緒に戦いたい。
この人間界と妖精達を護るために。もう本当の“アイク”の人格を隠さなくていい、本来の姿で一緒に生きないか?」
ポッチェの言葉に同意するように、アイクを囲むロイド、イーサン、クアラ、ベルグ隊長、そしてリリンが優しく微笑む。
「あんたが心底優しいことは知ってるし。まだ、やり直せるよ!」
ツンデレのクアラが頬を赤らめながら、アイクに杖を向けた。
と、同時にアイクの妖精奴隷がマールとマエルの力で清められ、真の姿を露わにした。
手足、首の枷はそのままだったが、着衣と髪、肌が透き通る様な氷の妖精――――――。
氷の妖精が心配そうにアイクに駆け寄る。
『―――大丈夫、ですか、ご主人様?』
「…枷は外せないんだな…呪印のせいか…」
《拘束の陣》が解かれたアイクが、淋しそうに奴隷妖精の手首の枷に目をやる。
奴隷妖精は自身の首の枷に触れ、その手でアイクの頬にそっと触れた。
『わたしは…大丈夫…あのボロボロの姿も…ご主人様がわたしの姿を隠すため…わたしはずっと
ご主人様に守られて…きたから、だがら…これからもそばに…いたい、ご主人様』
「――――――……僕なんかのそばにいたって、キミに何の得もないって。」
そう言って、アイクが奴隷妖精の手首に触れ、自分から離した瞬間だった。
バリィン!
奴隷妖精の首と手の枷が砕け散った。
『―――え…』
「!?」
呪印に通づる枷だと考えていたそれは、アイクの優しい想いが魔力を伝って粉々なっていた。
これでもう奴隷妖精を傷つけるものはなくなった。どうしてそんな現象が起きたのか、アイク達が不思議がっていると、マールとマエルが状況を説明し出した。
『闇に堕ちていたアイクさんの心が清められ、本来の姿を取り戻したことで、本当にしたかった、自分の妖精に掛けられた枷を破壊することに繋がったんだと思います。アイクさんの職業は妖精治癒師。百人に一人の貴重な存在。妖精治癒師のスキルの一つが発動したのでしょう。』
この説明を直に聞けたのは、ロイド、イーサン、リリン、そしてアイクだけだったが、イーサンがポッチェやクアラ、ベルグ隊長にも伝えた。
するとアイクは、奴隷妖精を抱き寄せ、優しく名前を耳元で囁いた。
「ありがとう…タルジュ…」
地底魔王軍四天王ウェパルを撃破したロイド一行と海の勇者ルカ。
海底都市の住人達とも破壊してしまった街を謝罪しつつ、その復興を願い、別れを告げ、海底神殿の奥に向かった。
海底神殿の浅い部分はウェパル達が占拠していた痕跡が見られた。だが、ウェパルが倒された事を知ったのか、その邪気は薄れ、マーマン達も正気を取り戻したようだった。
ロイド達はルカの聖獣バルフから与えられた、海中でも地上の様に呼吸が可能になる魔法の下で、海底神殿を深海より更に深く深く降りていく。
そしてたどり着いたそこには、巨大な六角形の石板の扉が聳え立っていた。
石板の中心にバルフが両手を添え、解錠の魔言を述べる。
「海の女神に通じる門を解錠出来るのは、この海の聖獣バルフだけなんだ。そして海の勇者になれるのもただの勇者条件だけじゃなく、このバルフと魂の呼吸が合う者だけ。だから海の勇者は大地や空の勇者ほど過去の人数は多くない。おれで十四代目だそうだ。」
そうルカが説明している間に、次々とバルフが門を解錠していく。そして、最後の門が開いた時、
ロイド達一行の目の前に飛び込んできたのは、色とりどりのサンゴ、尾びれが虹のように輝く人魚たち。その他にも地上界の海とは違う神の界域に足を踏み入れたと実感した。
すると、一目散に人魚達がルカとバルフを囲んだ。
「大変なのルカ!バルフ!!」
「聞いて!!聞いて!!大変なの女神様が!!」
「ちょ…ちょっと、落ち着いて、みんなっ!何があった?」
慌てふためく人魚達を鎮めたルカの前に一人の人魚が前に出た。
「ルカ、この聖域に悪魔が入って来た。テティス様の御身が…私たちはあの紫黒い瘴気に触れられない
どうすればいいかわからない、テティス様を助けて欲しい。」
「!!?」
お読みいただき、ありがとうございます。
至らぬところばかりではございますが、楽しんでいただければ幸いです。




