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海の勇者 ルカ

 崩れ落ちた大小の岩々が転がる、捕えていた海の勇者監禁場所周辺をくまなく探し続けるマーマン達。


「あの魔道具を破壊する力が残っていたとは…ええい、この海底神殿から絶対勇者を逃がすな!!」

「はっ!!」


 マーマン達に指示を出すセレベスは血眼になっていた。


(この失態をウェパル様の耳に入れるわけにはいかない!我は完璧なサーヴァント!ブーゲン達小物とは格が違うのだ!!)


 入り組んだ神殿内、さらに崩壊した石柱の影に、その身を潜めていた海の勇者ルカと聖獣バルフ。

ルカの手首には時縛りの手枷が付いたままになっており、さらにマーマン達に加えられた暴行で疲弊していた。そしてバルフがあることに気付く。装備から出ている腹の中心に付けられた紫黒い呪印。


『―――?その禍々しい紋様はなんだ、ルカの体にはなかったものだ。』


当人が腹部を確認する。


「なんだこれ!?―――っていうか、呼吸が整えられないのは、こいつのせいか?マナも流れもコントロール出来ない…っ」


ルカが現状を説明していた時だった、バルフがその口元を抑えた。

耳を澄ますと、密かに足音が二人に近づいていた。それも数人―――。

ふっと、崩壊した瓦礫から差し込んでいた光が途絶えた。

ルカとバルフが警戒態勢で上を見上げる。そこには。


「海の勇者さんですか?」


そう、ルカに声を掛けてきたのは、テイマーのポッチェだった。

ルカの口元を抑えていたバルフが、ポッチェの瞳を探るように見つめた。

すると、安心したように肩の力を抜き、ルカの口元から手を離した。


『大丈夫だ、ルカ。この者達はルカに対して敵意を持っていない。』


バルフからの伝心を聞き、ルカはポッチェの問いに首を縦に頷いた。


 海の勇者が身を隠していた瓦礫の空間に、ポッチェをはじめ、イーサン、クアラが降りて来た。

すると、イーサンと共にいた渦の妖精マールとマエルが海の勇者に飛びついた。


『ルカ様!!』

「マール、マエル!久しぶりだな、いつぶりだ?元気にしてたか、ベルピアナはどうしてる?」

『――――――…。』


 海の勇者の問いに、表情が一瞬暗くなったマール、マエルだったが、すぐに話題を切り替えた。


『ルカ様、ここは今悪しき者達の巣窟となっています。一刻も早く脱出…』


海の勇者にそう訴えたマールが、海の勇者の手首に填められた枷に気付く。


『こ…これって時縛りの…』

『この手枷は解錠方法を間違えると手首が…』

「マエル、その解錠方法って?」

『イーサン様。この“時縛りの手枷”は闇の魔道具で、主に強力な奴隷を従順にさせるよう仕掛けがあって

施錠した者しか解錠出来ないんです。』

「施錠したのはセレベスっとか名乗っていたな。」


 海の勇者の言葉に、イーサン、ポッチェ、クアラが目を合わす。三人が今すべき事を確認し、立ち上がった。


「とりあえず、セレベスってあのムキムキマーマンを倒しますか。」


イーサンはストレージしていた槍を、ポッチェは二本のボニングナイフ両手に、クアラは杖を手にした。


「ここら辺一体崩壊しても、生きてられますよね?」


イーサンの言葉に、海の勇者は若干引きながら


「あ…ああ。ってそうじゃなくて、色々聞きたい事が…」

「それは後になさってください、海の勇者様。まずは隠れて体力の回復を。」


クアラはそう言いながら、海の勇者に魔力完全回復するサランの朝露を渡した。

そして、打倒セレベスと行こうとしたポッチェのサーチに、上階ですでに暴れているロイドを察知した。


「あ――――――、ロイドさんがすでにやり合ってますね。」

「じゃ、マールとマエルは海の勇者様についててね、ちょっと行ってきます。」

『あ、イーサン様!姉のマールを回復役(ヒーラー)としてお連れ下さい!』


 マエルの言葉に、極限まで対象を回復できるマールは妖精型に変化し、イーサンの肩に乗った。




―――――――――― 上層階 ―――――――――――




 バリバリバリッ……

雷撃をL範囲で展開した余波が雷光を散らしながら、マーマン達の動きを封じる。


「本業は剣士だったのか、貴殿…さきほどはパラディンだった…」


ロイドの攻撃に、その場に膝をつくセレベス。


「俺の職業(ジョブ)なんてどうだっていい。

お前たちの目的を詳しく聞きたい。“海の勇者”を捕えていると言ったな。どうするつもりだ?」


 雷撃で痺れた体を起こし、ふらつきながら体勢を整えるセレベス。

周囲を見渡し、まだ雷撃のショックから解放されないマーマン達に舌打ちをする。


「我々が“地底魔界”を復活させるのに必要なものを持っているからさ。」

「海の勇者が?」

「違う。その勇者が従える聖獣がだ。その核が“地底魔界”の道を開く巨大な魔力を秘めているのだ。

だから聖獣を体内に封印しない、海の勇者を捕え、“時縛り”の魔道具でヤツの時間を止め、回復出来ない状態にし、同時に聖獣を弱らせる。だが、この聖獣がなかなかに手強い。大地、海、空の勇者が従える聖獣の中でも、我らが捉えた海の勇者が従える聖獣巨魚(バルフ)が最強だからだ。体力、パワー、防御力、スピード、知性、特殊能力共に、他の聖獣とは格が違う。

 最後の手段で海の勇者に“呪印”を施したが、これも効果が見えない。どう殺そうか考えていたところだ。貴殿の雷撃ならば()れるかもしれん。どうだ、我々に力を貸す気はないか?」

「貸すわけないだろう、お前たちに興味もない。」

「フン。小生意気な人間め、いつまでくたばっているつもりだ、マーマン!!その爪でこの人間の喉を掻っ切れ!!」


 セレベスの怒涛の掛け声に、その場に伏していたマーマン達が一斉にスピードを活かし、ロイドを襲った時だった。個々のマーマン達の額に印が現れ、次の瞬間、マーマン同志仲間割れが始まった。


「ギッ ギャアッ!!」

「グアァァァァ!!」

「な、なんだ!?一体どうしたというのだ!?」


マーマン達の激しい仲間割れ。お互いを喰い千切り、四肢を切り落とし、血を啜り。

一体のマーマンがセレベスに襲い掛かったが、一瞬で首と胴を離され、ただの肉塊となった。


「―――――――はっ、そうか。貴殿らの中にテイマーが…?」

「そういうこと。結構惨劇だったね。」


イーサンの一言に、ケロっとポッチェが返す。


「もともと気性が荒い種族だからね。仕方ないんじゃないかな?」

「けど、普通テイマーってせいぜい二匹程度なんじゃないの?この量をテイムって…」


クアラの意見も最もだった。大抵のテイマーはSランクと言っても、強力な魔獣のテイムか多数テイム(せいぜい三体程度)が普通だ。


「ああ、なんか俺の特殊能力みたいよ。まぁ、トロールみたいに巨大になるとテイム数は減るけどね。」

「助かった、ポッチェ。」

「力になれて良かったです、ロイドさん。海の勇者は保護済みです。俺、耳はいい方なんで、さっきの話」

「ああ、みんな。セレベス(あいつ)が海の勇者に呪印を施術した、そして聖獣の核を狙っているそうだ。」

「それもあるんですが、海の勇者に架せられた“時縛り”の手枷の鍵をあいつが持っているみたいで。」


 ポッチェの声を耳にしたセレベスがニヤニヤしながら自身の腹をポンポンと叩いた。


「海の勇者の“時縛り”の鍵な。それは我の腹の中ぞ。奪いたければ力ずくで来るんだな。」

「そうさせてもらうわ。私たち先を急いでいるの。氷結(コンゲラート)


クアラが、セレベスの足元目掛けて氷魔法を展開。足止めをしようとしたが避けられ、飛び上がったセレベスに向けて、何本ものナイフを投げつけるポッチェ。しかしこれも拳の風圧で落とされてしまった。

だが、ポッチェのナイフ攻撃を躱した瞬間、体勢を崩したセレベスを見逃がさなかったイーサンの槍が、セレベスの心臓を貫いた。


「――――――っぐッはっ…ばかな…」


 心臓から腹部にかけて大きく穴が開いたセレベス。

倒れた先には、セレベスの血に塗れた核と鍵が転がっていた。

 ロイド達人間が、セレベスに勝利した情報は、瞬く間に海底都市アラティスに広がった。

マーマン達の躰から、纏っていた邪気が抜けていく。


「ど…どうしたんだ、我々は?」

「な、なんだ、この惨状は!?」


 同志達の骸があちらこちらに転がっている惨状を目にしたマーマン達が、躰に穴の開いたセレベスの死骸に群がる。


「こいつだ!こいつがこのアラティスに来てから、我々の平和は奪われたのだ!」

「―――こいつが来てから?」


マーマンの声に、ロイドが反応する。


「ああ、我々は元々戦闘種族であるが、だれかれ構わず襲うなんてことはしない。だが、ある時こいつが

我々の長を殺し、その時から何かがずっと我々に命令をしていたんだ。“海の勇者を殺せ”と。

ここ海底神殿は海の勇者の拠点。そこに勇者が戻って来たところを襲い掛かれと命令され…」

「ロイド、とりあえず(コレ)洗ってもらって。汚くて触れない。」

「潔癖か。ちょっと悪いけど、コレ洗って。」

「あ―――――― はい。」


ロイドにこれまでの経緯を語っていたマーマンが、“時縛り”の鍵についた血を水で流す。


「ど、どうぞ」

「ありがとう。ロイド、私、海の勇者様に“時縛り”の鍵(コレ)届けてくるわ。」

「よろしく頼む。」

「あ、じゃあオレも行くよ、クアラ方向音痴じゃん。」

「――――――ち。」

「女の子がちって言わない。」


その場を離れるクアラとイーサン。


「人間の方、今地上界はどうなっているのですか?

我々が住む、この海も最近魔獣化した同志が現れ始めたのです。ここ海底都市アラティスは色とりどりの魚、人魚そして我々マーマンが種族分け隔てなく暮らす楽園。その海の平和を守護する勇者様に手を挙げたなどと、決して女神テティス様に顔向け出来る所業ではない。我々は罰せられるでしょう。

しかし、靄がかかった記憶の中であなた方の話を断片的に覚えているのです。“地底魔界” “地底魔城サハマジャード” “地底魔王ヴォルグ” “呪印” “聖獣の核”

 そもそも、あなた方はこの海底都市に何をしに来たのですか?」


マーマン達の中でもこの都市の実権を握る者らしき首輪やブレスレットを装着している代表がロイドに問いかける。


「まずは、自己紹介が遅れて申し訳ない。俺は冒険者のロイド、こっちはイーサン。さっきの二人も仲間だ。俺達は地上界の弱まった結界を張り直す為、深海に潜り、“虹の雫”を採取しようとしていたところを

セレベスらに邪魔され、この海底都市アラティスを経て海底神殿に連れてこられたんだ。」

「結界を張り直す…それは妖精王がかつて聖地サーリンゼルカの地を守護すべく張った結界のことか?」


 ロイドとイーサンを囲むマーマン達が大きく二手に分かれ、その奥に杖を持って立つ、年老いたマーマンが姿を現した。


「ザピュア老師!」


ザピュア老師と呼ばれた、年老いたマーマンが杖を付き、よろめきながらロイド達に近づく。


「ザピュア老師、あまりご無理をなされますと…」


老師は付き人のマーマンに手を挙げ、下がる様合図を出した。


「久しく見ぬ、強き瞳と闘志を持つ人間の冒険者よ。わしは、海底都市アラティスの結界柱、ザピュア。大地を守護する妖精王とは旧知の仲でな。あやつもそろそろ再生の時期を迎える頃。結界を張り直すというが、その事詳しく聞かせてもらえぬか?」


 ロイドは、現在地上界で起きている、人間が魔人と呼ばれる変化のこと、突如現れる瘴気の陣のこと、

地上界最強軍事国家とも言われていたピーニャコルダ王国が地底魔族の手に召喚されたベヒモズの襲撃によって陥落したこと、そして聖蛇ナーガが再び天界、地上界、妖精界を護るため、異世界より化身を転生させ、妖精王の再生が始まる前に結界を張り直す為、妖精王への道を開くため、“虹の雫”という宝石を探しに来たことを話した。




―――――――――― 下層階 ――――――――――



 同じ頃、ロイドがマーマン達に説明していたことを、イーサンが瓦礫に身を隠していた、海の勇者に説明していた。セレベスを倒して手に入れた鍵を使い“時縛り”の手枷を解いたことにより、施術された呪印も解かれ、イーサンの肩に待機していた渦の妖精マールが海の勇者の体力を完全回復させた。


「――――――で、“虹の雫”を探していたと。

おれも大地の勇者ヴァンのことは気にしていたんだ。とりあえずあいつも無事だってわかって良かったよ。教えてくれてありがとう。挨拶が遅れたね。おれは海の勇者ルカ。こっちはおれの聖獣バルフ。

地上に戻る時はバルフで連れて行くよ。

 とりあえず、今、海底都市アラティスは平和を取り戻したから、マーマンも正気に戻ったし、

“虹の雫”だな。誰に聞いたんだよ、カムイ海峡の渦潮の下なんて?」


 ブハっと、抑えていた笑い声を思わず上げてしまったルカ。


「いやー、宝石好きの仲間が海底火山に眠る鉱石だって。」

「トルチェの情報ガセじゃない。」


ルカの反応とイーサンの半分やけな態度に、トルチェのご機嫌は一気に斜めに。


「いや、ごめん。海底火山に眠る宝石ってのは、確かに100年前くらい前はそうだったみたいだけど、

今は、それを求めて潜ってくる人間達の墓場になってるよ。当の“虹の雫”自体もここ、海底都市や海底神殿を護る力を持つ貴重な石として、マーマンや人魚が見つけたら、神殿に納めてしまうから、そうそう見つからないはずだよ。」

「マジかー…。どうしたら…」



 下層階から、ルカとイーサン、クアラは上層に向かい歩きながら話、そうしてマーマン達の核を集めた

リリンとベルグ隊長も、ロイドとポッチェに合流した。






















お読みいただき、ありがとうございます。

至らぬところばかりではございますが、楽しんでいただければ幸いです。



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