“虹の雫”探索②
クアラに回復処置をしていたロイドの背後には、まるで人が変わったように冷たい表情した
アイクが立っていた。
「―――――――っ!!」
数秒前、アイクがどんな攻撃を仕掛けたか、ロイドは暗くてはっきり見て取れなかったが、鋭い獲物であると確信出来た。海底火山から湧き出る泡のおかげで軌道が逸れたのか、直撃は避けたが、その衝撃で海底に砂塵が舞い、視界を奪う。
すると雷神トールが人化して姿を露わにした。
『ロイド殿、この娘の回復はわしが代わろう。どうやら相手は氷の妖精を従えているようだ。
水中では、角度次第では獲物を見ることは難しいであろう、気を付けよ。』
「氷の…」
海底の砂が落ち着いた頃、ロイドの目にアイクのそばに控える手足、そして首に枷を填められた、
着衣も髪もボロボロの妖精が映った。
「アイク、どうしたんだ?何かに操られているのか?」
「ふっ。さっきのテイマーにもそんな事を言われたけど、操られているも何もない。これが本当の僕だよ、雷剣士。」
「テイマー…まさかポッチェ達にもっ!?」
「槍使いに深手を負わせたからね。もうサメ達の餌食になっているんじゃないかな?
悪魔の女が傷を処置していたが、あんな低級回復魔法じゃ対処しきれないだろうね。
誰ひとり、この深海から地上に戻ることはない。深海に散るがいい。」
そう吐き捨てるアイクをよく見ると、スタリアバリアを装備していなかった。
しかし、その体は水圧に押しつぶされることもなく、平然としてる。
「?」
アイクの体の回りに薄いバリアが張られているのが見て取れた。
「スタリアバリアが無くて、どうして平気か驚いているのかな?僕はもとより白魔法使いだよ。これくらい魔力の応用さ。スタリアバリアを装備している限り、まともに戦えない。
外した途端、深海の水圧でペチャンだ。さて、どうする?」
ロイド達から離れたところで、海のハンター達を相手にしていたポッチェ、ベルグ隊長。そして深手を負ったイーサンを介抱するリリン。毒の回りが早いのか、イーサンの意識が薄れ出した。
「イーサン、しっかり!!もう一度“アルカの実”を!!」
リリンは、自身が嚙み砕いた“アルカの実”を口移しでイーサンに与えた。なんとか飲み込めたイーサンの傷口から毒が少しずつ除去されていく。だが、安心出来たのも束の間。
ポッチェ、ベルグ隊長、イーサン、リリンが深海から異空間に強制移動させられた。
「な…ここは!?一体どうなっている??」
ベルグ隊長が辺りを見渡すが、何もない。ポッチェ達も警戒態勢のままだ。
すると空間内に闇深い声が響いた。
『―――深海に来たのは聖蛇の娘ではなかったか。まぁいい。
あのチェルノボーグのサーヴァント、ブーゲンを殺った者達と相まみえたいと思っていた。
我々の棲み処へ案内しよう――――――』
場面は戻り、ロイドに大技を繰り出そうと構えたアイクが振り上げた手を、黒い影が止めた。
「!?――――――せ、セレベス様…?」
『せっかく面白そうな場面に悪いな、アイク。神殿でこいつらをウェパル様がお待ちだ。』
「――――――っ」
『譲ってくれないか?すでにお前が深手を負わせた槍使い達は転送済みなんだか。』
「…そう…ですか。わかりました。では失礼します―――」
アイクがそう返事をした次の瞬間、ロイド、雷神トール、クアラが異空間に飲み込まれた。
「これは…―――――――っ」
『転移魔法であるな。』
異空間の口が閉じるその時、ロイドの目に映ったアイクの表情はどこか悲しそうだった。
「(――――――― アイク…?)」
異空間の口は閉じ切り、暗く冷たい深海に残されたのは、カブトーを任された見張り役の騎士達。
「ベ…ベルグ隊長達は一体どこに…?我々は―――」
騎士達の背後からアイクが姿を現した。
「キミ達は地上に返してあげるよ。ただし、条件がある。」
「あっ…アイク殿!!」
「一度しか言わない。」
騎士達は警戒態勢だったが、アイクの圧にのまれてしまった。
「カピルス村にある井戸の底にジュウトを待機させておく様、ラインハルト殿下に伝えておけ。」
「――――――え…?」
そう言うと、アイクはカブトーをチムニーに繋ぎとめていたアカモックを切り離し、その場から姿を消した。慌てふためく騎士達だったが、ただただアイクにされるがまま、地上に向かってカブトーの舵を切るしかなかった。
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