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“虹の雫”探索①

 カブトーが、乗りやすい海流をつかみ、それに乗って順調な潜水航海を進めるロイド達。しかし、深度が進むに連れ、海中の色は紺色、そしてついには。


「なんか見る魚なくなってきた、つまらないですねー。」

「シュノケ気分か、クアラ。」

「あ!あれ上にあるの、渦潮だ!――――――はー、下から渦潮見るのも、今回くらいしか機会ないでしょうね。」


イーサンがカブトーの薄い表皮から見える渦潮に気付き、その大きな海流渦巻く光景をロイド達も目にした。渦巻く海流と発生する大量の水の泡。周囲に魚一匹おらず、更に下一面に広がる船の墓場。

確かに、このカムイ海峡の渦潮を上から船で航海するのは自殺行為だという事を、改めて理解した一行だった。


「ロイド、ここからの舵は代わります。ここからさらに潜水すると海底火山地帯になって、大きな障害物がゴロゴロあるってカブトーが言ってるから。」


そうポッチェが告げた。


「わかった、頼む。」

「――――――もう、もっと早く操舵室(ここ)に来れば良かったわ。」


動けないロイドを尻目に傍にいる時間を楽しんでいたリリンは残念そうに肩の力を落とした。


「リリンに気を遣わなくていいぞ、ポッチェ。」

「ははは。」

「ひど―――い!!」


 それからしばらくして、暗闇に包まれた深海の景色が変わった。

星空に包まれたかの様に、光を発する鉱石が点在し、火山地帯が所々露わになり、熱水が噴出している。


「このどこかに“虹の雫”があるのね。」

「溶岩と人魚の鱗が合成されたものだったな。」


クアラとイーサンが“虹の雫”ついて復習する。

ポッチェはカブトーを大好きな砂の上に留めると、そこからロイド達が“虹の雫”を探索している間、第四騎士隊の隊長ベルグをはじめ二人の騎士がカブトーの舵を預かることになった。


「ベルグ隊長達もスタリアバリアの装備を。カブトーの安全をお願いします。」

「承知した。」


 ロイドの号令と共に、探索体勢を整える一行。

スタリアバリアはカブトーの皮膚と相性がよく、出入りが自由自在。海水もカブトー内に入り込むことなく扱える装備だ。

ロイドを筆頭に、海底に足を付けたイーサン、クアラ、ポッチェ、アイクそしてリリン。


「当初の予定通り、二人一組で行動する。俺とクアラ、ポッチェとリリン、イーサンとアイクだ。

あまりカブトーから離れるなよ。」


当初の予定。海中では二人一組で行動せよと大地の勇者ヴァンからの教えもあり、リリンが加わった際に、くじで相手を決めた一行。その結果がこの組み合わせだった。こうでもしなければ、リリンがロイドにくっついて仕事にならないとリリン以外の考えが一致したからだ。

 探索を始めたロイド達。

明かりを灯す魔法“ルミナス”を用い、辺りに広がる熱水中の金属などが煙突状に固まったチムニーや、過去の噴火で噴出して海底に沈んだ軽石、噴火時の溶岩が固まった流紋岩などでスタリアバリアが傷付かない様に慎重に進む。

そうして、完全にそれぞれのグループが離れた時だった。


ドッ!!


「――――――っえ…?」


 イーサンの後ろ脇腹辺りに、鋭い衝撃が走った。

あまりのダメージの大きさに、その場に膝をつくイーサン。後ろを振り返るとそこには、

今まで穏やかな表情(かお)や不安な表情(かお)しか見せてこなかったアイクが、まるで人が変わったとでも言うように、冷たい表情でイーサンを見下ろしていた。


「アイ…ク?おまえ…」

「冒険ごっこはここまでですよ。」


 離れた場所で、この強い殺気に最初に気付いたのはリリンだった。リリンはポッチェの肩を叩き、来た道を戻る様サインを出す。


「どうした?」

「どっちかわからないけど、なにかあった。強い殺気を感じるわ。」

「え――――?」


 衝撃の走った傷口からじわじわと血が滲み出て、スタリアバリア中のイーサンの下半身が赫く染まっていく。


「(くそ…無理に抜くと血が溢れてサメを呼び寄せてしまう…)」


イーサンが壮絶な痛みを堪えている間に、アイクの姿は目の前からなくなっていた。


「(あいつ、どこへ…?)」


意識が飛ばないよう痛みを堪えるイーサンの前にポッチェ達が戻って来た。


「イーサン!!」

「ちょっとっ、大丈夫!?」


リリンはすぐさまイーサンの状態を把握し、傷口に回復魔法をかけたが、その効果が中々現れない。


「どうだ?」

「アタシの低級回復魔法だと、傷が深くて処置しきれない、暗くて傷口がよく確認できないけど、たぶん毒が…っポッチェ!!後ろ!!」


リリンがそう叫んだ時、ポッチェの背後に何かを振りかざすアイクの姿があった。


「死ね。」


ポッチェは振り向きざまに、アイクの腕を寸でのところで押さえた。


「な…にしてんだ、アイク!ここは深海だぞ?何が起こるかわからないのにっ!!」

「知った事か。キミ達とのぬるい冒険はここまで。海の藻屑にしてあげるよ。」

「くっ、どうなってんだ。リリン!こいつをイーサンに!」


ポッチェはそう言うと、スタリアバリアを繋げて、リリンの手に毒消しの“アルカの実”を渡した。

リリンは受け取ったそれをイーサンの口に含ませた。しかし逆に、大量の血と共に吐き出してしまった。イーサンのスタリアバリア内が。じわじわと赤く染まり、何かが刺さった箇所から血が漏れ出した。

 その様子を見て薄気味笑うアイク。


「これからここはサメの巣になる。いくらテイマーのあんたでも処理しきれないほどにね。」

「どうしたんだ、アイク?何かに操られて…?」

「まさか。でも深海(ここ)で死にゆくキミ達が知る必要もない。」


アイクは、そう吐き捨てると、自らスタリアバリアを破りその場を去ってい行った。

 血の匂いを嗅ぎつけたサメが一匹、また一匹とポッチェ達を囲むように集まってきた。


「もう嗅ぎつけられたか…」


 

 その異変に気づいたカブトーの中にいた見張りの騎士。


「ベルグ隊長!サメを発見しました!!」

「なんだと!?何かあったか。私が出る。お前たちはカブトーを頼む。」

「は!!」


 ベルグが深海に出ると、海のハンター達が一か所をぐるぐると泳ぎ回っていた。


「この位置からでは現状を把握出来ないが…」


そう言いながら、ベルグは海中閃光弾のグヴィレズタ弾を放ち、その衝撃波でサメを怯ませた。

その隙にハンター達の下に目をやると、倒れている誰かをリリンが介抱し、サメを相手にしようとしていたポッチェの姿が確認出来た。


「ポッチェ殿!一体何が!?」

「ベルグ隊長、イーサンが深手を負った。詳細は後だが、アイクに気を付けて!」

「――――――!!」


閃光弾の効果が薄れていく中、ベルグが目にした倒れている誰かは、イーサンと言われなければわからないほどスタリアバリア内が血に塗れ赫く染まっていた。閃光弾に怯んだハンター達がまたイーサンの血の匂いに誘われ、アイクが言っていたようにサメの巣になっていく。


「サメには悪いが、そうも言っていられない。」


ポッチェは、どんどん集まるハンター達の中から三匹をテイムし、仲間を襲わせる指示を出した。

一斉に共食いを始めた海のハンター達。躰がぶつかり合うと深海に振動が走った。

更に閃光弾を用い、彼らの獲物をイーサンから離れさせようと画策した。




 その衝撃は、離れていたロイド達にも伝わった。

ロイドとクアラが顔を合わせる。一旦カブトーの位置に戻ろうとロイドが合図した時だった。


ドドドッ!!


クアラが背後から何かに襲われた。


「クアラ!!」


クアラの背中にイーサン同様、衝撃が走り、その場に倒れ込むクアラ。

“ルミナス”を近づけてクアラの状態を確認するロイド。すぐに回復処置をしようとしたその時。


『ロイド!伏せよ!!』


装備する黒曜石のピアスに宿る、雷神トールが叫ぶ。すぐさまその指示に従ったロイドの頭の上を、刃の様な鋭い衝撃が過ぎ去っていく。

どこから狙われたのか、“ルミナス”の範囲では敵の姿を把握出来なかった。


『…アイク殿だ。気を付けよ、ロイド。』

「―――――アイク!?っと、クアラ!!」


自分を襲ったのが、白魔法使いのアイクだというトールの言葉に驚きつつ、倒れたクアラの処理に入るロイドは、彼女の背中に回復魔法をあてる。


「――――――。回復魔法、使えたんですね。」


ドッ!!






















お読みいただき、ありがとうございます。

至らぬところばかりではございますが、楽しんでいただければ幸いです。



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