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魔法付与

 モモ、ラウル、ダン3人は王都ラダンディナヴィアに来た。

ちなみにここは以前お世話になったギルドで、さっそく外にラウル達を見つけたギルド責任者リンツが声を掛けてきた。


「あらダン、お注射終わったの?」


ダンはこくりと頷き、リンツに先程手にしていた手帳を見せた。そこには…


「今日も、はなまる貰えてる!!偉かったわね〜ダン!」


リンツはダンの頭をクシャクシャに撫でた。褒められて素直に嬉しそうなダンにその場はほのぼの。すると、周りに小さい子ども達が集まり始めた。


「ダンだ!!」

「なにしてるの?」

「広場であそぼー!!」


子ども達はダンのマントや手を引っ張る。


「なんか、ラウルが買い物するんだって。なぁラウル?」


ラウルはやれやれというように肩を落とすと


「広場行っていいよ、終わったら迎えにいくよ。」


子ども達はラウルの言葉に大はしゃぎ。ダンと子ども達は手を繋いで城下町南にある広場に行った。


「邪魔がいなくなって良かったわね、ラウル。」


リンツがコソッとラウルに呟く。ラウルは少し赤くなった。



 ラウルとモモは転生し、この世界に来た時からの付き合いで、自分が投獄された時も必死に助けに来てくれたモモに、ラウルは好意を抱いていた。

幾度かアピールしてみてはいるが、モモはその点が鈍いらしく中々伝わらず。今日はダンもいるから軽い気持ちで誘ったが、まさか二人で町を廻れるとは思っていなかったラウル、テンションアップした。



天気がいい今日は、外でランチを済ませた二人。


「美味しかった、セミーターサンド。ありがとうラウル。ご馳走様でした。」


セミーターサンドは、牛肉とコクのある果肉とチーズを特製ソースで味を付けパンに挟んでいただくサンドイッチ。


「口に合って良かったよ。そしたら、モモは何か欲しいものはある?」

「うーん、特にはないけど、色々見て回りたい、いい?」

「もちろん。俺も寄りたい店があるから付き合ってくれる?」


ラウルは手を差し出し、モモをエスコートしながら町を歩き始めた。

(…イケメンと手を繋げるなんて、前世には無かったイベント、なんか落ち着かないなぁ)


ラウルが町を女性をエスコートして歩く姿はかなり目立った。多くの女性がラウルを遠巻きに見ていたり、声を掛けてくる女性もいた。モモの事も、もちろんどこの令嬢なのか、ラウルとの関係はなんなのか、探る声も耳にしたモモは下を向いて歩いていた。


「モモ?気分悪い?」


心配そうにするラウル。


「な、なんでもない、大丈夫。」


慌てて顔を上げるモモに、ラウルは寄りたい店を案内した。そこは白を基調とした建物のブティックだった。



 中に案内されると、レースや刺繍をあしらった素敵な服がズラリ。それに合う靴やジュエリーまで品揃えが豊富だった。


「わぁ、素敵なお店!」


さっそく色々見て回るモモの姿に微笑むラウル。モモはふと、ジュエリーの前で足を止めた。ピアスを見ているようだ。ショップ店員にも気に入ったものがあれば出しますよ、と声をかけられていた。


「気に入ったのあった?」

「ん、と、ピアスなんだけど…」

「どのピアス?」

「ナーガ様からいただいたピアス、私の力には呼応しないの。何度も試したんだけど、ネックレスは呼応するのがわかるんだけど、ピアスはそうじゃなくて、私がもっていていいのかなって…」

「なるほど。じゃあ今度鑑定士に見てもらおうか。」

「鑑定士?」

「どんな風に錬金されたとか、魔法付与してあるかとか見れる職業の事だよ。」

「わかった、ありがとう」


ラウルはピアスのショーケースを見て、一つ指差し店員に出す様依頼した。それは赤い虹色の輝きを放つガーネットのドロップ型のピアスだった。お値段を目にしたモモ、しかし値札がついていなかった。

ふとラウルがそのピアスをモモの耳にあてた。


(わっ…)


モモはびっくりして、目を閉じた。


「モモの肌と、髪と合うね。」


ラウルが甘い声で囁く。


(ひーっ)


耳が熱くなるのをモモは感じていた。モモが軽くパニックなっている間に商談が済んだようだった。




 ブティックを後にし、露店やラウルがよく行くお店を紹介してもらった後、モモ達は広場へと足を運んだ。広場には遊具や季節の花壇、噴水があり、ダンと子ども達は飽きる事なく広場を駆け回っていた。一人、また一人と子ども達を母親が

迎えに来て、最後の一人になった。


「ノイルのお母さん遅いな。」


ダンがノイルという男児に問いかける。


「かあさん、おれの知らない男の人といると思う。」

「え⁈」

「おれ、家帰るとじゃまなんだって。かあさんに言われたから…」

『えーーーっ』


モモとラウルの思考が重なったが、ダンにはわからなかった様だ。


「…じゃあ、ダンしばらくノイルといてやってくれ。俺はモモを送ってくるから。」


ラウルはダンにそう告げると、ダンはノイルを抱き上げて北東にある教会に向かった。


「あの子…」

「ノイルは母親と二人暮らしなんだ。この国では3歳から18歳まで教会にある児童院を利用出来て、そこで親の迎えを待ったり、宿泊させて貰えたりするんだ。とりあえず、一時預かりだな。」


モモの問いにラウルはダンとノイルを見送りながら答えた。



「今日は楽しい時間をありがとう、ラウル。」

「喜んでいただけたなら何よりだよ、俺も楽しかった。

明日はシュピツ村の討伐の話があるってラインハルトが言っていたから、多分軍事室に呼ばれると思う。じゃあ、今夜はゆっくり休んで、また明日な。」

「おやすみなさい。」

「おやすみ。」


ラウルはそう言うと移動魔法で教会に向かった。



 モモは夕食と夜の湯浴みを済ませ、自室で一人考え事に耽っていた。なぜ、今まで男性を意識した事のない自分が、ラウルにはこんなにドギマギしてしまうのか…。前世が患者に囲まれた生活だったから健常者であるラウルが珍しかったのか、いや、自分がイケメンに免疫がないからか…。どちらにせよ、何らかの対ラウル耐性を考えないと、身が持たない…

悶々と考えていると、光と共に妖精ルキスが現れた。


「悩みすぎよ、モモ。それは恋の病ね。特効薬はありません。」

(こ…これが…恋の病!?)

「ラウルなら推し案件じゃない⁈イケメンだし、温厚だし、一応王子だし。何をそんなに悩んでいるの?」

ルキスがモモの前に腕を組んでのけぞり立つ。

「……私、恋したことなくて…。」

「え!?えーーー⁇」


驚きを隠せないルキスに顔を赤らめたモモ。その夜はルキスがモモに恋についてレクチャーし、夜が更けていった。




 翌日、ギルドに責任者リンツ宛に伝波鳥が現れた。伝波鳥とは書状の代わりにこの国で利用される通信用の青い鳥で、相手が受け取るとポンと消えてしまい液晶化した伝文を受け取る事が出来た。伝文は印刷も可能である。


「あら、ラインハルト殿下からだわ…緊急伝文ね。これ、ギルドにフリー登録冒険者に通知してちょうだい。急いでお願いね!」

「はい、リンツ様。」


リンツは事務嬢に印刷した伝文を渡した。

伝文内容はこうだ。



――――――――――


モルネード王国、冒険者各位。

王都より南西の村シュピツにてアラネアの巣を発見した。

村人の安全を確保すべくこれより2日後、王立騎士団は討伐に向かう。フリーのS、Aランク冒険者は職業問わず参加願いたい。また白魔法使いはBランクでも可とする。

討伐参加者においては、戦績を問わず30万モンドを支給する。


以上 ラインハルト・モルネード


上記詳細の問い合わせ先 ヨイチ


――――――――――



 事務嬢はギルド登録のフリー冒険者に急ぎ伝波鳥を飛ばした。また、伝文はギルド内にも張り出され多くの冒険者が目にして行った。


「アラネアか…」

「しかも巣だと、女王が居るんじゃないか?」

「毒性が今は異常だしな…どれくらい集まるんだろうな…」


冒険者達は足を止めるが、参加の意思をあらわにする者は居なかった。




 一方その頃、王宮軍事室ではアラネア討伐会議がラインハルトの指揮の下行われていた。会議参加者は、騎士団長シズウェル、竜騎士団長カーティス、聖属性魔法師団長ルーク、ラウル、ダン、そしてモモの姿があった。


「明後日、アラネアの巣を駆除しに行く訳だが、先程悪い知らせがあった。偵察部隊は全滅した。」


ラインハルトの言葉に全員息を詰まらせた。


「今回の討伐の相手はただの蜘蛛の魔物ではない。瘴気で強化された毒蜘蛛達だ。しかも巣穴の奥には人間を餌にする女王がいると推測される。これを叩くには巣穴の情報も少ない中で作戦が我々の命を大きく左右する。どう攻めるか…」

「俺が先陣をきろう。」


ラウルがスッと手を挙げた。


「いいのか、ラウル…だが情報が少ない今、おまえの防御障壁に頼らざるを得ないな…。」


ラインハルトは腕を組み、悩ましげに言う。


「わかった、先陣はシズウェルとラウルに頼む。私はモモとルークと中央部隊に。後衛をダンと白魔法使いに任せる。

そして今回の討伐は規模が大きい、記録係をヨイチにしてもらう。ヨイチ入れ。」

(よ…ヨイチ⁇なんか日本人ぽい…気のせいかな⁇)


モモは今までの会議で一番の反応をした。



 ラインハルトが合図をすると、扉から背の高い50代くらいの白髪のダンディな男性が入ってきた。


「モモ殿とは初めて顔を合わせるな。こちらはモモ殿同様、六十年前にこの世界に転生されたヨイチ・ハヤシ殿だ。」

「えっ⁈」


思わず声が出て更に席を立ち上がってしまったモモ。ヨイチはきっちり45°に一礼した。


「お初にお目にかかります、モモ様。お噂は予々、私も微力ながら同行させて頂きます。どうぞよろしくお願いします。」


モモも慌てて一礼した。


「こちらこそ、よろしくお願いします。」

「あとは、どのくらいフリーの冒険者が戦力になるかですな、殿下。」


騎士団長シズウェルの言葉に、ラインハルトは険しい表情をする。ふと、ラインハルトはあることに気づいた。


「シズウェル殿、貴方もモモ殿と会うのは初めてだったな。」

「気づいてくれましたか、殿下。少しアピールしました。」


ラインハルトは間を置いてから


「モモ殿、騎士団長のシズウェルだ。竜騎士団長カーティスは竜や魔物を扱うのを得意とする騎士団で、シズウェルのとこはそれ以外だ。」


…雑…軽。


会議室にいた全員が思った。



「そしてシズウェル殿、聖蛇ナーガ様の化身とされる聖女モモ殿だ。死んでも守れ。」


…ひどっ。


会議室が一つになった。


「あ、シズウェル様、よろしくお願いします。」


モモが、ラインハルトのシズウェルに対する対応があまりにひどい為、若干不憫に思い先に挨拶をしたが、対するシズウェルには挨拶の機会をスルーされた。



 ひとまず会議は一時中断し、後はラインハルトと騎士団長達で詰める事となった。そして、部屋から出ようとするヨイチにモモは真っ先に声を掛けた。


「ヨイチ様!」


ヨイチはゆっくりと振り返り姿勢を正した。


「はい、モモ様。」

「あの、勘違いでなければ…日本の方で、すか?」


モモは自信無さげに問いかける。するとヨイチはニコリと微笑んで答えた。


「そうですよ、私は林 与一と申します。前世は日本人でした。モモ様の黒髪を拝見してもしやと私も思っていたところでした。お名前を伺っても?」


「百瀬 美琴です。前世は看護師をしていました。今私はヨイチ様に会えてとても嬉しいです。」

「私も同じ気持ちですよ、どうぞヨイチと気軽にお呼び下さい。同僚にこれまたアメリカから転生したジャンがいます。今度お目にかけましょう。」

「ありがとうございます!」

(色々聞きたいけど、今はそれどころじゃないもんね。)


ヨイチはまたきっちり45°一礼すると、会議室を後にした。




 王妃暗殺事件から3日目。今日は各部隊討伐に向けて準備。

モモがラインハルトに以前依頼した弓矢については完成に3か月掛かるそうで、今回は浄化に専念するよう求められた。


モモは自室でナーガ様にいただいたネックレス、ピアスと、腕輪をテーブルに並べにらめっこ。そこへ眩い光と共に妖精ルキスが現れた。


「悩んでるわねぇ、モモ。」

「うん…」


そう言いながらネックレスを手に取り、装飾されている黒曜石を見つめた。


「これを付けて以前マピチュ村でミモロという男性を蘇生した時、ルキスの力もあったけど、何か温かいものが全身を巡ってミモロの蘇生に成功した気がしたんだけど…ピアスと腕輪には何も感じないし…。」


そんなモモを見て、ルキスはハッと思い出した。


「モモ!この前ラウルが鑑定士に見てもらったら?っていってなかった?」

「あ!!」

(そういえばブティックでそんな話した!)




 「鑑定士ですか?」


モモはちょうどお茶を運んでくれた侍女に聞いてみた。


「そうですね、王立鑑定士にパブリック様がいらっしゃいます。確認致します。」

「ありがとうございます。」



 今日のお茶はピーチとローズヒップの香るハーブティーだった。モルネード王国のご飯は、例えるならメキシコ料理風でお茶はヨーロッパな感じ、紅茶やハーブティー、ルイボスなどが多かった。

 

 しばらくして、ノックと共に扉が開き、侍女と共にトレンチ型の白衣に身を包んだ金髪にグレーの瞳の女性が入ってきた。


「モモ様、パブリック鑑定士でございます。」


モモは慌てて立ち上がり、


「す、すみません。お呼び立てするつもりは…」

パブリックは優しく微笑んだ。


「お初にお目にかかります、モモ様。王立鑑定士ムース・パブリックと申します。今日はいかがなさいましたか?」

「足を運んで下さってありがとうございます。モモと申します。」


モモが話を切り出すと、侍女は部屋を静かに後にした。


「実は、私がこの世界に転生した時、聖蛇ナーガ様にこのネックレスとピアス、腕輪をいただいたんです。ネックレスは私が魔法を使ったら何か力を貸してくれた気がしたんですが、他のピアスや腕輪にも何か力があるのかと思いまして。鑑定していただけますか?あまりお金はないんですが…」


ネックレス、ピアス、腕輪の3点を目にしたパブリックは興奮状態だった。


「お金など必要ございません!こんな素晴らしい装飾と見事な輝きの黒曜石、私は今まで鑑定した事がありません!素晴らしい…しかも聖蛇ナーガ様からモモ様が賜ったものに触れさせていただける機会だけでも貴重です。今日これからのスケジュールを全て蹴って来て正解でした!!」

(ああ…予定があったのに申し訳ない…)


しかし、すでに興奮ゾーンに入ってしまったパブリックにまた次回でも、とは言えないモモとルキスだった。


「すみません、取り乱しました。では鑑定させていただきます。」

しばらくゾーンに入っていたパブリックだったが、一度咳払いをして、背筋をピンと張り姿勢を正した。


〝鑑定”


パブリックがそう唱えてネックレスから順に手を翳した。すると、パブリックが驚いた表情に変わり額から汗を流した。


「すごい…こんなもの鑑定したことがありません…。」


黙って見守るモモとルキス。

そこへ、ラインハルトがやってきた。


「モモ殿の装備品の鑑定をしていると聞いてな。同席しても?」

「も、もちろんです、ラインハルト様。」



 十分ほど経った後、パブリックが鑑定結果を話し始めた。


「まず、ネックレスですが、こちらは医療の女神とされるエイルの加護があります。聖女であるモモ様の魔力に呼応して効果が発揮される仕組みで、治癒、回復、蘇生、浄化、モモ様のスキルに関して威力を高めてくれる付与がされています。次にピアスですが、雷神トールの加護があります。雷のスキルを持つものに威力60%強化の付与がされています。

最後に腕輪ですが、大地の女神ヨルズの加護があります。これは…」

「ラウルだな。あいつは大地の妖精シヴを使役している。」

「そうですね、この腕輪ヨルズの加護にふさわしければラウル殿が装備されるとよろしいでしょう。」

「ラウル…じゃあピアスは⁇」

「雷スキルを持つものはそう多くはいないが、私も知り合いにはいないな…」

「今は、モモ様が保管していてもよろしいのでは⁇

雷スキルを持つ信頼出来る者が見つかったら与えても良いでしょう。きっとこの装備品には役割があると私は推測します。聖蛇ナーガ様の化身であるモモ様を守護出来る者をモモ様自身が見つけ、この世界にの清浄化を計るために、ナーガ様がモモ様にお与えになったかと…」

(な…なんか大きな話になってしまった…ルキスはナーガ様から何か聞いてる?)


モモの問いに、ルキスは首を横に振る。


「まぁ、ナーガ様から賜りし装備だ。そう簡単には渡せないな。役割を果たす意志と力量がある者を見極めなければ。悪用されたら手に負えん代物だ。」


不安そうにピアスに目をやるモモの肩をラインハルトはポンとたたいた。


「ラウルは大丈夫だ。モモ殿が嫌でなければ渡すといい。

協力な守護者になるだろう、一応王子だしな。

ピアスについては与える者の判断には、良ければ私や宰相ラッツィも立ち合おう、もちろんラウルもな。一人で気負うことはない。」

「ありがとうございます、ラインハルト様。」




 その日の夕方、ラウルとダンがモモの部屋を訪れた。

昼間ラウルに腕輪を渡す、モモはプレゼントみたいな行為を男性に対してするのは自身の父以外初めてて、落ち着かない様子だった。そして


「モモ。」

「ラウル…あ。」


二人が同時に呼び合った。


「さ、先にどうぞ。」


モモは照れてしまいラウルを直視出来ないでいた。


「?あ、じゃあ」


ラウルは素敵な装飾の箱をモモに差し出した。


「え?」

「開けてみて。」


モモは言われるまま静かに箱を開けた。箱には昨日ブティックで見たガーネットピアスが入っていた。思わずラウルを見てしまった。


「モモは単独だと防御力が一般人並みだから、俺の防御障壁が宝石部分に付与してある。装飾部分にはジュウト、この前一緒に戦った白魔法使いの状態異常耐性魔法も付与して錬金してあるんだ。良かったら使って欲しい。もちろんお出掛けにも、とてもモモに似合っていたから。」


サラッと言うラウルに対して、モモは耳まで真っ赤になってしまった。こんな高価なもの、貰うのも、イケメンからプレゼントされるのも初めてだったモモには難易度が高すぎるイベントだった。固まっているモモの横髪をラウルはスッとかきあげた。そして、そっと両耳にガーネットピアスを付けてくれた。


(ひーーーっ)


ラウルは耳元で似合うよと甘い声で囁いた。

モモは耳を押さえて、真っ赤になって口をぱくぱくさせていた。

そんな二人のやり取りを他所にダンは狐化してソファで丸くなっていた。


(わ…私の心臓がもたない。こんなにドキドキしたのオペ看の器械出し依頼だわー…)


ルキスにはモモの思考がダダ漏れだった。モモの言う器械出しを見てとった時ルキスはハッキリ思った。

ードキドキの基準違くない…?


「それで、モモも何か言いたげだったけど、何かあった?」


深呼吸して気持ちを落ち着かせたモモは、ナーガ様にいただいた腕輪をラウルに渡した。


「え?これはモモが転生時着けていた腕輪だけど…?」


モモは、昼間の出来事をラウルに話した。パブリック鑑定士に鑑定してもらい、大地の女神ヨルズの加護を受けている腕輪。ラインハルトも同席してくれて、大地の妖精シヴを使役するラウルなら腕輪の黒曜石の力を存分に発揮出来ると言われた事。ピアスについても、雷スキルを持つ信頼出来る者に与え、この世界を清浄化するために役立てる事。


「なるほど。…いいのか俺で?」


モモはこくりと頷いた。


「ラウルが…いいの。貰ってくれる…?」


ラウルにすると、この腕輪を受け取る事はモモの守護者としてこれからも尽くすと言う事だった。


「嬉しいよ、ありがとうモモ。聖蛇ナーガ様の化身であるモモの身を守護出来る権利を得られて、誇りに思うよ。」


そう言うと、ラウルはそっとモモを抱き寄せ、頭に口づけをした。

この後、ラウル達がどう帰ったのか、自分がどうやって寝たのか覚えていない状態で夜が更けていった。




 深夜、王宮地下牢では王妃暗殺を目論んだ犯人の拷問が行われていた。そこにラインハルト、騎士団員が姿を現す。見張りの衛兵が敬礼する。


「吐いたか?」

「いえ、鞭打ち、水責めなどあらゆる手を尽くしておりますが一向に口を割りません。」

「…そうか、明日から私はシュピツ村の討伐向かう。私が帰るまでに必ず吐かせておけ。…ちなみにこいつは冒険者登録は過去にしたことがあるか?」


犯人の男はラインハルトのその言葉にビクッと体を震わさせた。


「…どうやらあるようだ。ジャンに調べさせろ。」

「はっ!!」










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