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ドリーネマーケット

 ここは、モルネード王国の中心、王都ラダンディナヴィアから北に位置するナーガ神殿。

神殿の周囲には聖水で満たされた堀があり、何本もの白い石柱に囲われ、その中央には転移石が填められた聖蛇ナーガの姿を模した像が納められている。

ナーガ神殿は他にみられる神官などは存在せず、全てを聖蛇ナーガの神力により管理されていた。


 「よし、行くぞー。」


元気よくダンが声を掛け、一歩足を神殿に入れたところを、ザック達が止める。


「ちょっ、ちょっとダンさん!行くってどこっすか?ここにはナーガ像しかないっすよ?」

「だから“ドリーネマーケット”だろぉ?…え、みんな行ったことない?」


ダン以外の全員が首を縦に頷いた。


「え―――――…と、その前に“ドリーネマーケット”には行けるランクとかが決まってるんだけど、おまえら全員Aランク以上か?」


ダンの言葉に、一人、おずおずと手を挙げた者がいた。白魔法使いのアイクだ。


「…僕、ランクBです。」


アイクはギルド登録証を提示して見せた。登録証には名前、ランク、職業、所属パーティー名が記されている。


「おお、Bだな。確かに。」


改めて自身の経験値不足に肩を落とすアイク。


「ダンさん、なんでランク縛りがあるんですか?」


ポッチェがアイクの肩を撫でながら問う。


「ああ、“ドリーネマーケット”は妖精族が仕切っている場所なんだ。妖精の安全を保証する為に、一つ、妖精を使役する者が同行すること。二つ、ランクA以上の経験値を持つ者。この二つの条件が揃わないと、とりあえず“ドリーネマーケット”への扉は開かないんだ。」

「なるほど…だからダンさんが必要なんですね。」


ダンの説明にナナが納得する。


「けどさ、アイクも行ってこいって言ったのはラウルさんっすよ?ラウルさん、アイクがランクBって知っていて…」


ザックの言葉にピンときたダンが、拳をおでこに当てた。


「はー…ん、ラウルのやつ…そうゆうことか。ったく。」


ラウルの意図を汲み取ったダンが頭をガシガシ掻いた。その仕草と言葉に全員“?”になっている。


「アイク。」

「は、はい。」

「おまえ、妖精見えるだろ?」

「!」


ダンの問いかけに、全員が驚いてアイクに目をやる。


「どうなんだ?」

「―――…は、はい。見えます。」


アイクの答えに、ポッチェが撫でていた彼の肩から手をひいた。


「すみません、別に隠していたわけではないんです。

妖精が見えるのは物心ついた頃からで、ダンさんやラウルさん、モモ様達の妖精は見えていました。だからといって、話したことはないし…誰にどう相談していいかもわからなくて…」

「じゃあ、今、オレのアクアとウェンティ見えてるんだな?」


ダンは自身のサイドに控える水の妖精アクアと風の妖精ウェンティを指差した。


「はい…二人ともキレイです…」


アイクの言葉に、アクアとウェンティはクスっと微笑んだ。


『ダン、アイクの魔力を見ても?』


アクアがアイクのそばに寄り、ダンに許可を得る。


「頼む。」


アイクは自身のそばにふわりと浮く水の妖精アクアの美しさに顔を赤らめた。


『アイク、手を見せて下さい。』

「は…はい。」


アクアに言われるがまま、アイクは右手を差し出した。

アクアは彼の手に触れ、目を閉じ、魔力を読み取る。

ダンとアイク以外には、ただアイクが右手を宙に浮かせているだけに見えていた。


『ダン、アイクには妖精を治癒出来る能力があります。』

「お―――、希少なタイプってやつか。」


ダンの発した言葉にトルチェ達が反応する。


「なになに?何が希少なの??」

「ああ、アイクが妖精を治癒出来るタイプの白魔法使いだったってこと。

じゃあ、あんまり経験値上がらなかったのは、回復や補助対象を人間にしていたからだな。

―――――ラウルのやつ、いつ気付いたんだ?」


ダンの解釈に全員が呆気にとられてしまった。特に同じ白魔法使いであるシュアに至っては、感激のあまり涙を流しながら、ポンっとアイクの肩をたたいた。


「アイク、すごいじゃないか!実はボクもキミの魔力の効果については、同じランクBの白魔法使いと比較しても劣っているなとは感じていたんだよ。まさか、対象が妖精だったなんて…!!」


アイク自身も驚いて、自身の両掌(りょうてのひら)に目を落とす。


「ぼ…僕の魔力が…妖精に…?」

『ええ、それも魔力量ならシュアに劣らない。だから、妖精達もあなたに声を掛けずらかったのかもしれない。』

「…!たしかに…僕から声を掛けようとしたこともあったけど、みんな逃げてしまって…」


アクアとアイクの会話にダンがみんなにも通じる様に入った。


「アイクの魔力量、シュアに劣らないってさ。」

「!!」

「フォロー対象を妖精に変えたら、案外すぐランク上がるんじゃないか?

よし、んじゃ、これでアイクはBでも行けるな。アクア単純契約頼む。」


ダンの指示にアクアは頷くと、契約呪文を詠唱し始めた。


「単純契約って、なんですか、ダンさん?」


クアラが興味津々な様子で問いかける。


「一時的な契約のこと。これでアクアは“ドリーネマーケット”内ではアイクの使役妖精になれる。

おまえたちも、“ドリーネマーケット”に入ったら一時的に、妖精見える様になるぞ。

しかも、妖精側から気に入ってもらえたら、使役出来る可能性もあるしな。」

「―――――ええ!!」


ダンの“妖精を使役出来るかも”という言葉に、妖精を見たことがないトルチェ達は、表情豊かで煌びやかな妖精の想像を膨らませる。かわいい系、キレイ系、カッコイイ系にペット系…




 『ダン、アイクとの契約済ませました。』


踝までのオフホワイトの髪に、ラブラドライトに輝く瞳。ターコイズブルーのVネックマキシワンピースに身を包んだ妖精アクアが微笑みながら、アイクに水を纏わせてみせた。対してアイクは緊張のあまり、棒立ちのままだった。


「よし、アイクにアクアがついた。

妖精を使役する者って条件で、アイクも行けるな!」


ダンはそう言うと、ニカっと八重歯を見せながら、屈託のない笑顔を見せた。

その笑顔に、メンバー全員が釣られて笑顔を見せた。


 実のところ、今回のメンバーでダンが行動を共にする事をアクアとウェンティは心配していた。

ダンは人見知りがあり、心を開いているのはラウルとリンツくらいだと思っていたからだ。

けれど、今の笑顔を見て、ダンがいくつも成長していることを実感した二人は、心が温かくなり、思わずダンに抱き付いた。


「わっ、なんだよー。アクア達は甘えん坊だなぁ。」


ダンに自分達の想いが届かなくても、二人は笑い合った。




―――――――――― ☆ ――――――――――



 聖蛇ナーガ像。

それは、全身細身のセンターパートのロングヘア。直立の姿勢に、両手を胸の下で合わせた表情の柔らかい石像。

左肩からのワンショルダーキトンに身を包み、キトンの裾から伸びる聖蛇が体に沿って、ナーガの首元に頭を乗せたもの。それが各地に点在する聖蛇ナーガ像だが、この神殿の像は黒曜石で出来た水晶玉を胸の前に両手で持っていた。


 ダンが、聖蛇ナーガ像が手にする黒曜石水晶に手を翳し、魔力を注いだ。

すると、“ドリーネマーケット”の液晶マップが展開された。マーケットは東西南北の四方にわかれており、各区画で取り扱っている専門が異なる。

また、聖蛇ナーガの聖域の一つとして、人間の住む地上界とも進む時間が遅い。


「…すごい、地下空間には、こんなに色んなお店があるのね。」


トルチェ、クアラ、ナナが食い入る様に、マップを見る。その目は光輝いていた。


「地下空間とは言っても、ナーガ様が管理している異空間と言った方が正しいってラウルが言ってた。

“カリプソー”は(ノース)タウンだな。」


ダンが“カリプソー”の位置を確認すると、そこに目的地をセットした。


「えっ!?“カリプソー”にしか行かないんですか!?他のお店は??」

「え…全部回るの??」


クアラの言葉にドン引きのダン。

ここはと、男子陣一丸となってクアラの前に出た。


「目的地は“カリプソー”っすよ!」

「そうですよ、さっきあれほど買いまくったじゃないですか。もう付き合いませんよ。」


ザックとポッチェが口々に言い、イーサンに至っては、目が座っていた。


「…はーい、わかりました!“カリプソー”だけ、お願いします。」


やや膨れ気味で、クアラが返事をし、トルチェはチッと舌打ちをして見せた。


(し、舌打ち…地味にトルチェが怖い…)


男子陣が脅える中、ナナがトルチェをなだめる。


「まぁまぁ、行き方はわかったんだから、今度モモ様も一緒にゆっくり回りましょ。」

「―――そうね。モモ様がいれば行けるしね。」



 ちなみに、東E(イースト)タウンは魔法付与可能な宝石を多く取り揃え、西W(ウエスト)タウンは上級ランクが装備可能で、なかなか手に入れられないミスリル素材を使った武器、防具が揃っている。そして、南S(サウス)タウンでは多種多様な効果の薬草類と、それらを調合出来る妖精がいた。



 行先をセットしたところで、全員の足元に魔法陣が展開され、ナーガ像の前から“ドリーネマーケット”にある航海に必要な道具が揃っている専門店“カリプソー”にワープした。




―――――――――― ☆ ――――――――――



 「ラウル、何を見ているの?」


 モモとカロルが円卓の大会議室から自室に戻る途中、廊下を本を片手に歩くラウルに出会った。


「ああ、モモ。“大聖女の儀”おつかれさま。」

「ありがとう。あまり、実感はないけどね。」

「ラインハルトは、まだ会議中?」

「ええ、今後の事の報告をされていたわ。」

「―――――あ、ああ。これね。」


ラウルの手にする本と、地図の様なものを凝視するモモ。


「気になる?」

「ふふ、ラウルが読書しているところ、見たことなかったから。」

「失礼な。読書くらいするわ。

―――――で、これはモルネード近海の生き物の生態とかで、こっちは昔、子供の頃、ラインハルトと実際に海に潜って作った地図な。」

「!! もしかして今度行く海底の参考資料?」

「まぁ、そんなところ。良かったらカロルも目を通すか?」


目の前に差し出された“海洋生物”と書かれた本を、快く手に取るカロル。


「ありがとうございます、ラウル殿。同行する身として、うれしい限りです。

そういえば、庭で昼寝をされていたダン殿がちょっと出てくるとおっしゃって、行かれてしまいましたが、ラウル殿と別行動も珍しいですね。よろしいのですか?」

「ああ、そろそろ親離れしてもらわないとな。ロイド達主力メンバーは今、結界展開とカピルス村をどう攻略するかで忙しいからな。他のメンバーにちょっとお遣いを頼んだんだが…モモとカロルも行ってみるか?」

「行くって、どこに?」

「“ドリーネマーケット”」



















お読みいただき、ありがとうございます。

至らぬところがあるかと思いますが、どうぞよろしくお願いいたします。


キャラメモ ★ダン★


✿珍しい狐の亜人

✿人間いうと12歳、血液型不明

✿一人称:オレ

✿二つ名:なし

✿職業:魔法剣士

✿狐化すると、グレートピレニーズ似。毛皮は純白と茶のマーブル。毛並みはツヤッツヤ。つり目の大きな金の瞳

✿いつも元気いっぱい、肉大好き、野菜キライ。

✿ダンを書く時のBGMは175Rさんの楽曲が多いです。




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