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モルネード王の誓い

 雲一つない青い空が、見渡す限り続く。


「今日は気持ちいいわねー!」


いつもの戦闘装備とは異なるトルチェの装いはラフなカジュアル。


「本当♪出歩くにはサイコーですね、トルチェさん、ナナ!」


そう元気いっぱいに返事するのはガーリースタイルのクアラ。


「……なんか、後方はもう疲れ切ってますけど…?」


前を進む女子三人、トルチェ、クアラ、ナナのかなり後ろから、両手いっぱいの紙袋やら箱やらを運ぶ男子陣。その表情はげんなりしていた。




 ことの発端は、昨日の会議を終えた城内。

ラウルは勇者ヴァンに呼び止められた。


「助かったよ、ラウル。キミのおかげで各方面への報告に目途がついた。」

「それは良かったです。」

「ところで小耳に挟んだんだが、海に用があるんだって?」


そうヴァンが口にした背後から、アイラがひょっこり顔を出し、ラウルに自分の耳を指し示しながらにっこり笑った。


「―――――――― もしかして、行く手立てを?」

「今回の件、キミ達には迷惑をかけたからね。

俺も同志、海の勇者の事で気にかかる事があるんだ。海に潜るなら協力するよ。」



 ヴァンの申し出により、ラウルがラインハルトに声を掛け、海に潜る為の必要物資、調達をする事になった。



 場面は王都ラダンディナヴィア、城下町に戻る。

大人女子コーデのナナがペラッと、ラウルより手渡されたメモに目を落とした。


――――― お買い物リスト ―――――


☆活餌のやつ(買えるだけ)…… ダイガエビ、ホノビヌス貝、ヒマヤメト。


☆マリモ弾、グヴィレズタ弾


☆アカモック(ありったけ)


☆スタリアバリア(人数分)


――――――――――――――――――――


「…何一つ、揃っていないわ…」


ナナのつぶやきに、すかさず同行していたザックがツッコミを入れる。


「ですよね!買い出しって連れ出されて、かれこれ三時間!服屋と雑貨屋しか行ってないっスよね!?」


と。だが、口にした時はすでに遅く。

トルチェの黒魔法によって、ザックは黒炭と化していた。


「―――――なにか?」


男子陣の心の声をそのまま出してしまった末路に、同行していたイーサン、ポッチェ、シュア、アイクは首を横に振るだけだった。

ここで男子陣は出掛ける前にラウルに言われた事が頭を過る。


――― 女子の買い物に口をだすなよ ―――


(なるほどなー…勉強になります、ラウルさん…)


「まぁ、ザックはいいとして。これらってどこで揃うのか聞いてた?」

「このメモにあるスタリアバリアだって、さっきから探しているけど…ラウルさんが言っていたお店、城下に“カリプソー”ってお店自体ないよね?」


ナナとクアラがメモを見ながら立ち止まっていると、そこへダンが合流した。


「おーい。買い物終わったかー?」

「!! ダンさん!」


ダンの合流に助けを求めんばかりの表情をする男子陣。


「ん?なんで荷物手に持ってんの?収納(ストレージ)出来ねーの?」

「へ?」


全員の目が点になってしまったと思いきや、イーサンがだるそうに口にする。


「いや…出来るんすけど、オレ、防具とかで容量いっぱいで…」

(出来んのかよっ…!)


ポッチェ達がジトっとイーサンを睨む。苦笑いのイーサン。


「…。しょうがねぇな。ほら、預かるから“カリプソー”行こうぜ。

トルチェ達の買い物は済んだんだろ?」

「―――――え?」


その問いに、男子陣が一斉にダンを見た。


「ちょ…ちょっと待って下さい、ダンさん。

このタイミングで合流って、もしかしなくてもラウルさんの指示ですか?」


復活したザックとポッチェ達が不思議がる。

なぜなら、当初この買い出しメンバーにダンは入っておらず、王城の庭で日向ぼっこをしていたからである。


「ああ、おまえらが行ってから三時間くらいに合流してやれって、ラウルに言われたー。」


――――― やっぱりかー… ―――――


『女子は買い物が好きだからな。最初から付き合っていたら身がもたないぞ、ダンは。』



 そう、ラウルの一言が回想した。


「ということは、ダンさんは“カリプソー”がどこにあるか知っているんですか?」


ナナはダンにメモを見せた。


「ああ。“カリプソー”は城下じゃなくて、ナーガ神殿の地下に広がるドリーネマーケットにあるんだ。」

――――――――――…え?


全員の頭に“?”マークが。

ここで全員が思い返した。

確かに、買い物を頼まれ、殿下からのお小遣いも渡され、喜んで城を飛び出したトルチェとクアラ。

やれやれと言わんばかりに、二人を追うナナに、ラウルがメモを手渡す。

そして、その勢いのままに二人を追う羽目になった男子陣。


『ま―――――…いっか。』


そうポツリと言い残したラウルの声を確かに耳にしていたポッチェ。


結論からすると、ラウルは場所を伝えようとしたが、トルチェとクアラの暴走に、それを諦めた。



 全員の前に正座し、深々と頭を下げる、トルチェとクアラだった。



―――――――――― ☆ ―――――――――――



 「では、これらの署名をもって、聖女モモ殿を我がモルネード王国の“大聖女”とする。」


円卓の大会議室には、国王、王子ラインハルト、各騎士隊長に魔法師団長、そしてモルネード王国を支える重鎮貴族達が揃っていた。その中にはもちろんラインハルト王子の婚約者ジャスミンの父、外交関連トップのフロリア公爵。今では白、黒魔法を操るジュウトの父、医療関連トップのクローブナー侯爵、そして剣士ナナの父であり、現国王の義弟である近衛師団長、バズフォード公爵。他にも、

今後行われる、結界展開に選ばれた聖女リリー。その父であるカンティラス子爵。彼はフロリア公爵の下で貿易関連に携わっている。



 円卓の中央で宰相ラッツイの声が室内に響き渡る。


「異議のある者は挙手を。」


出席する三十あまりの貴族達の中から、手を挙げる者はいなかった。


「では、“大聖女”様をこちらへ。」


宰相ラッツイは言葉と共に視線を会議室入り口に立つ衛兵に向ける。

衛兵は一礼すると、ドアノブに手を掛けた。


 内側に開かれたドアより先に姿を見せたのは、“大聖女”の側近カロル。その手に導かれ、

清楚なオフホワイトとグレーのキトンドレスに身を包み、聖蛇ナーガより賜りし黒曜石のネックレスを身に付けたモモが入室。彼女の姿を目にすると、王を始め室内にいる全員が立ち上がった。


モモは、そのままカロルにエスコートされ、上座で待つモルネード王のそばに通された。


 と、共にあるものがラッツイの手によって王の御前に置かれた。

その、あるものを目にした貴族達が驚きのあまり次々と声をあげる。


「へ…陛下、それはまさか…」

「“大聖女”様は陛下に次ぐ地位の方のはず…」

「そこまでなさらなくても…」


貴族達が驚くのも無理はなかった。

ざわつく中、王が手にした、あるもの。

それは、“誓約の書”だった。

ラインハルトは、事前にラッツイから王の意思を聞いていたが、それでも改めて隣に立つ王の横顔に目をやってしまった。


 王は静かに右手を挙げた。

シン…と静まり返る室内を、窓から入り込む風が満たした。


(あれは、カロルの時に見た…)


モモも思わず口に手を当て、後退った先にはカロルが控えていた。

よろけそうになるモモの肩を両手でしっかりと支える。


「大丈夫です。」


カロルはモモの両肩をポンポンと軽くたたいた。

まるで、そう言っているかのように。


 モルネード王国、国王ブラズベルトは、一度目を閉じ、スッと覚悟を決めた様に静かに瞼を開いた。その姿を目にした貴族達は背筋を整えた。


「モモ殿、いや、これより“大聖女”モモ様。

異世界より聖蛇ナーガ様に導かれ、この地で惜しみなく能力を発揮され、我々は幾度となく魔人、魔物達そして、瘴気の陣による危機から救われた。

この国を代表して、感謝申し上げる。」


王は、洗練された所作で、モモに一礼した。

それに続くように、ラインハルト、宰相ラッツイ、円卓を囲む貴族達、カロルそして同席する全員がモモに頭を下げた。


「…とんでもございません。この地で私が何不自由ない様取り計らって下さった皆様に、私も感謝しております。どうぞ顔を上げて下さい。」


モモの言葉に、王が、貴族が姿勢をなおした。


「それに、今までの功績は私一人の力ではありません。ラインハルト殿下と、その直属の戦士達…仲間がいたからこそです。」


モモは、そう言うと陛下に笑顔を見せた。

その笑顔につられる様に、陛下の表情が柔らかくなり、同じく気を張り詰めていたラインハルトも、フッと笑顔を見せた。


 すると、ラッツイが進み出て、王に“誓約の書”を手渡した。

それは、カロルの時に使用された物とは明らかに違い、モルネード王国旗の色、王族のみ使用出来る唯一無二の深く渋い(あか)色と金の装飾が施された巻物の書簡だった。


「―――この書簡を使うのは二度目になる。

一度目は、隣国との和平交渉の際に用いた。」


陛下は、ラッツイから書簡を受け取ると、帯を解いた。その行為と共に、同席する室内全員が左胸に拳をあて、敬礼をした。


「モモ様。」

「はい…?」


モモに緊張が走り、思わず胸に手をあてる。


「私は、清楚でありまた、謙虚でいて、何事にも真剣に取り組んでくれる貴女を“大聖女”にしたこと。後悔はしない。そして、これからこの国がどうなろうとも、常に貴女と共に進む事を誓い、貴女の判断や行為は全て私の意であり、その責任を決して貴女一人に負わせないと、ここに誓う。

 それは、ここにいる全員が心に留め、“大聖女”モモを貶める者には重い罰が下ることとなろう。

これより、モルネード王国は“大聖女”モモと共に!!」


王の誓いは具現化され手元の書簡に吸い込まれた。


「“大聖女”モモ様と共に!!」


王の言葉に続き唱和した、室内全員の声と名前が具現化し、書簡に吸収され、シュルリと封を閉じた。書簡は王の手から、再びラッツイの手に戻り、文官の手によって会議室を出た。

この書簡は、城の禁書庫にて保管されるという。


 「では、改めて“大聖女”モモ様。

今後の身の振り方については、すべてラッツイに一任してある。彼を頼りなんでも言って欲しい。

このまま、あの部屋を使ってくれたら、侍女達も喜ぶだろし、もちろん屋敷を持ちたいなら万全警備のものを用意しよう。」

「ありがとうございます。」


王の声はいつもと変わらぬ、柔らかいトーンになっていた。



 ふと、ラインハルトはあることに気付く。出席した貴族の中にいた、この“大聖女”決議、反対派閥のセヴァン伯爵と、彼を支持する子爵や男爵達の姿に。

誓いの儀が終わるのを拍手し、笑顔で見届けている。

 セヴァン家では代々竜騎士を輩出しており、現当主である彼は現役を引退するも、その息子達の活躍は目を見張るものがあり、また彼には、聖属性の力を持つ、クロエという一人娘がいた。

これから行われる王国の結界展開の聖女に、なぜ自身の娘が選ばれなかったか、ラッツイに掴みかかる勢いで抗議してきたと耳にしていた。


(…どんな手を使って、陛下は一部の子爵や男爵達に一目置かれるセヴァン伯爵を味方に…しかも、この命をもかかった誓約まで…)


「―――ト。―――ハルト殿下?」


 ラッツイの呼びかけに、ハッとラインハルトは我に返った。


「どうしました、殿下?ご気分でも?」


心配そうにラッツイとモモがラインハルトの顔を見る。


「あ…いや、すまない。」

「では、殿下の今後の動きについて、ご説明いただいても?」

「ああ…―――」



―――――――――― ☆ ――――――――――



 軍事執務室では、ラインハルトの側近、ヨイチの同僚であるジャンが、ユレネードの入ったグラスを片手に一息ついていた。

と、共に難しい顔をしながらテーブルにいくつかの地図を広げたラウルの姿があった。


「なんだラウル、顔怖いぞ?」

「え…そんなだったか?」

「ああ。こーんな感じになってた。」


ジャンが眉間に皺を寄せ、ラウルの顔を真似て見せた。


「んな、まさか。俺は常にポーカー…って、お。」

「お?」


一枚の地図を手に取ったラウル。ジャンはそれをのぞき込んだ。

その地図は子供の落書きの様なものだった。


「…そういえば、昔、殿下とおまえさん、海に潜って宝探しとかしてたっけなぁ」

「そうそう、その時描いてた地図な。まさか残しておいてくれるとは思っていなかったが。」


地図っぽい、その落書きは、北にピーニャコルダ国、南にモルネード国が大雑把に描かれ、その海峡の中心に大きく“×”と記されていた。


「子供のころの遊びだろう?」

「まぁな。けど、これが役に立ちそうなんだよ。」


そう言いながら、ラウルは他に広げていた地図を片付けた。


「何に?」

「大人の冒険に。」

「?」


ラウルは手をヒラヒラ振りながら、軍事執務室を後にした。
















お読みいただき、ありがとうございます。

至らぬところがあるかと思いますが、どうぞよろしくお願いいたします。



キャラメモ ★ラウル★(ラウル・ピーニャコルダ)


✿ピーニャコルダ王国の第二王子

✿28歳のB型

✿一人称:俺

✿二つ名:聖壁(せいへき)のラウル

✿恋も討伐もフォワード型のつもりが、恋的にあまり攻め切れていないかも…( ;∀;)

 占いはイイことだけ信じる派。

✿ラウルを書く時のBGMは米津 玄師さんの楽曲が多いです。




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