蜘蛛従魔ペルとサキュバス・リリンの冒険 ②
地底魔界、蜘蛛の王“ルブロン”の領地。
樹海を抜け、植物のほとんど生えない岩山に囲まれた中にその巣はあった。多様な起伏、傾斜のある地層を利用して造られた洞窟は芸術的であったが、今そこは…
「こ、これは…我々が留守にしている間に一体何が!?」
大きく口を開けた洞窟の前に数十名の蜘蛛兵の姿があった。辺りの様子を観察し何に襲撃されたか把握した兵の一人が息絶えた同志のペンダントがないことに気づく。
「おそらく、ポワゾンリザードに襲撃されたのでしょう。しかし、別に侵入者もいるようです。」
「何か痕跡があったか、ジクート?」
「はい、番兵の長が持つ鍵が引き千切られています。あの鍵は地上界に繋がるもの…」
すると洞窟内を確認していた兵達数名が慌てて戻って来た。
「た、隊長!ニーヴスライムがそこら中に!!」
「なんだと!?ここは奴らの生息地ではないはず…ルブロン様の御身が心配だ。ジクートと共に数名先行して王の間へ!我々は救助しながら後を追う。」
「はっ!」
ジクートと呼ばれた蜘蛛兵と共に数名が洞窟の闇の中へ消えていった。
「ルブロン様が警戒しておられたのは魔人と呼ばれる者達。我々が奴らの根城を捜索している最中にまさかこの様な事態になろうとは…」
「隊長。ジクートは大丈夫でしょうか?」
「ジクートは最強の蜘蛛騎士としてルブロン様にも認められた。必ず同志の仇を取ってくれる。さぁ、我々もジクートに続くぞ!」
ーーーーーーーーーー ☆ ――――――――――
王の間ではペルが魔人ラーキットと激闘を繰り広げていた。
ラーキットが繰り出す剣技にペルは硬化した糸の剣で応戦。更に回し蹴りでラーキットをぶっ飛ばすが、そこは上手く受け身で直撃を躱された。
「…っぺっ。躱したつもりだったが、なかなか手強い。久しぶりに自分の血を見た。」
「ラーキット様!!」
ラーキットに僕の魔人達が駆け寄ろうとする。
「邪魔をするな、お前たち。こいつはおれの獲物だ。お前たちはそこの女どもを片付けろ。」
魔人達がリリン達に視線を向ける。
「―――っ!」
リリンがパナマリアと王妃の前に立ち構える。
「させるか!」
ペルが魔人達を円網状の糸で拘束し、天井から吊り下げた。魔人達に糸が食い込んでいくと共に、ジュワァァァと音を立てて灰化していく。
「ぎゃぁぁぁ!!なんだ、この糸っ!伸びてばっかで切れねぇ!!」
「オ、オレの手が灰に…っ!!」
僕たちの様子を見ていたラーキットが爪をかじりながら、ペルを見た。
ペル自身もその効果に驚いているようだった。構えていたリリンもペルの能力の変化に驚き構えを解いてしまっていた。
(あつっ…?)
ペルはモモと隷属契約を交わした左胸にある契約紋が熱を帯びているのに気付いた。更に
(あれ…?紋様が変わって…)
元々あった契約紋の周りを八匹の蛇が囲う様に加わっていた。
「魔物であり、聖蟲であり、聖属性効果を持つ蜘蛛ねぇ…ますますお前の核を手に入れたくなったよ!」
ラーキットが仕掛けてきた。上空に飛び上がり、グレートソードを掲げペル目掛けて一突き。
ペルは瞬時に飛び避けたが、それを狙ったかのようにニヤリと笑うラーキット。
腰回りに装備していたナイフを4本、ペルに向かって投げ刺した。
「!!」
「ペル!!」
ナイフは右頬、左腕、左わき腹をかすめた。
「ちっ、かすっただけか。空中なら仕留められるかと思ったが。まぁ、効いてはいるだろ?」
「―――っ…」
糸を使って一旦、天井に身を寄せるペルのナイフをかすった箇所がじわじわと紫黒く変色していく。
「毒刃か…」
「ただの毒じゃない、仲間だった奴の研究所からくすねた逸品でね。人間を魔人に変える過程で順応出来なかった人間が苦しみ悶えて死んでいく代物らしい。お前、心キレイそうだもんなぁ。人間じゃなくても何かしらダメージあんだろ?」
「づぅ…」
ドザッ
天井から体勢を崩しながら地面に着地するペル。
「だめ、見てらんない!アタシ…!?」
リリンが駆け付けようとした時、ペルはリリン達に結界を張った。
「ちょっと、ペル!!アナタこのままじゃ…っ」
ペルの無言の威圧にリリンが圧される。しかし徐々に息が荒くなっていく、ナイフをかすった箇所が熱を帯びる。尋常じゃない痛みがペルを襲う。ラーキットは、そんなペルの前に立つと、ペルの腹を蹴り飛ばした。
「ぐぁっ…」
蹴り飛ばしたペルに、追い打ちをかける様に、無防備になっていた右掌をグレートソードで突き刺した。
「づあぁ!!」
あまりの惨劇にパナマリアと王妃は顔を手で覆った。
「はっ、あんな女子供守ってなんか意味あんのか?どうせお前を殺った後に一緒に送ってやるって!!」
ラーキットがグレートソードを逆さに握り、ペルの心臓を突き刺そうと振り上げた瞬間、ラーキットの足を蹴り飛ばし体勢を崩させ、ペルは横に転がり串刺しを回避した。
「まだ動けるのかっ!」
パタパタ…
血と汗が滴り落ちる。肩で息をしながら立ち上がるペルにラーキットは身の毛がよだつのを覚えた。
(こいつ…こんだけやられても目が死んでない…いや、逆に何か狙ってるのか?やつの体を蝕む毒は高ランクの聖女にも解毒は難しいと聞いている。しかしやつはあの聖蛇のペット…)
ラーキットが考察しながらペルとの間合いを計る。
(ボクの受けた毒は、たぶんモモの血を飲めば解毒される…と思う。問題はルブロン様を浸食するニーヴスライムだ。かなり体力を消耗されている、ここでルブロン様を失うわけにはいかない。どうもさっきからボクの糸に聖属性魔力の効果が見て取れる。魔人達の灰化がそれを証明してる、なにがどうしてこうなってるのかはわからないけど、迷ってる時間はない!)
ペルが糸を天井に飛ばし飛び上がる。
「はっ!空中に上がったらコイツの標的だぞ?」
ラーキットが毒刃のナイフを投げるが、ペルはそれを躱し切りルブロンの背後に回り、彼を浸食するニーヴスライムを円網状の糸で包み込み、魔力を流した。
「!!?」
ルブロンとラーキット、リリン達が負傷する自身よりルブロンを助ける事を優先したペルに驚いた。
「おまっ、何考えてる!?こんな老いぼれ助けたってお前に何の得があるんだ??」
予想通り、ペルの糸に捕らわれたニーヴスライムが少しずつだが浄化されていく。
「…よし!」
更にペルは瘴気の陣にも巣を張り、浄化を試みた。しかし、張られた巣は瘴気によって搔き消されてしまった。
「…陣はダメか…」
「残念だったな、お前の聖属性レベルじゃ魔物には効いても、瘴気は浄化出来ないらしい。大半の魔力を無駄に使ったな。」
ガクっとその場に膝をつくペル。ラーキットの推測どおり、ルブロンを浸食するニーヴスライムの浄化に魔力を消費しすぎた。だが、ここで倒れるわけにはいかない。
「何をこんな老いぼれにこだわるのかわからんが、そんなに大事なら守ってみろよ?」
ラーキットは瘴気の陣からブラッドウルフ、ポワゾンリザードをそれぞれ数十体、召喚した。
「こんな数、今のペルの状態じゃ無理だわ!パナマリア、アナタ達はここで、ペルの結界内なら安全だから。アタシは加勢に行くわ。」
「え…リリン様も結界内にいるのに、どうやって…?」
「アタシは悪魔よ?このくらいの結界ならなんてことないわ。」
リリンはそう言うと、全身に魔力を巡らしペルの結界をするりと抜けた。
動くことのままならないルブロンにブラッドウルフ達が襲い掛かる。そこに火炎エネルギー弾が放たれた。
ドガガガァァァン!!!
「リリン!?」
「ちょっと、ペル!大丈夫なの?」
黒い翼を羽ばたかせ、リリンがペルの傍に降り立ち、今にも倒れそうなペルの体を支えた。
「いやー…実はちょっとキツかったかも…」
「でしょうね!その傷、どうにかならないの?」
ペルの右頬、左腕、左わき腹が紫黒い変色を増していくさまをただ見ていることしか出来ない無力さにリリンは拳を握りしめた。
そこへ今度はリリンを狙った毒刃が放たれた。
「リリン!伏せろ!」
「きゃっ」
気付いたペルがすかさずリリンの手を引っ張り、自分に寄せ、硬化した糸のナイフで薙ぎ払った。
「おとなしく、こいつの張った結界内にいればケガせずに済んだのにな。悪魔の女……ん?」
王の間の入り口に集う、蜘蛛兵の姿に気付いたラーキットとペル達。
「ルブロン様!!」
蜘蛛兵達の目に、傷付き倒れるルブロン。結界内に閉じ込められるパナマリア王女と王妃。部屋の中央の瘴気の陣に、そこから湧き出るブラッドウルフとポワゾンリザード。左目に大きな傷を持ち、死人の様な顔色のグレートソードを構える男と、悪魔の女を庇う様に立つ、明らかに重症のアルビノの男が侵入者として映った。
「貴様ら!!我が王をよくもこのような姿に!!覚悟しろ!!」
蜘蛛兵の一人、ジクートが剣を抜くと、続いて他の兵達も剣を抜いてラーキットとペル、リリンを取り囲んだ。
「はん、まだ生き残りがいたのか。つくづく下級の魔人は使えない。お前たちもルブロンと共に葬ってやろう。行け、ポワゾンリザード!やつらを喰らい尽くせ!」
と、ラーキットが蜘蛛兵達と対峙している間に、ペルは持っていた小瓶の液体を一口飲んだ。すると、体を蝕んでいた紫黒い毒素がみるみる浄化されていった。
「!!ペル、それって…」
「うん。モモからもらった。…たぶんこれならルブロン様の傷も完治すると思うけど…」
体を縮ませ、小声で会話するペル達に取り囲んでいた蜘蛛兵が剣先を向ける。
「何をして…!?貴様、先程まで毒に侵されていたはず…一体?」
するとペルが蜘蛛兵の向ける剣先を押し下げた。
「悪いけど、ボク達がここを訪れた時にはすでに魔人たちに襲撃されていたんだ。今のままだと、ルブロン様の命に係わる、早くニーヴスライムを完全浄化させて手当しないといけない。」
「魔人がすでに…?」
ペルの言葉に蜘蛛兵達がグッと気圧される。
バチバチバチバチッ!!ドン!!
「ぐあっ!!」
パナマリアと王妃を包む結界に触れた蜘蛛兵が、その場から弾き飛ばされた。
「大丈夫かっ!?」
「円網状の結界…同族がかけたのか?」
その言葉に、ペルに気圧された蜘蛛兵がペルを睨みつけた。
「あの結界は貴様が?」
「…彼女達の安全が確保出来るなら解除するけど?」
しかし、場面は簡単にパナマリア達の結界を解除出来る状態ではなかった。ラーキットが召喚したポワゾンリザード達が次々と青黒い瘴気を纏い、第三の目を開眼させたのである。蜘蛛兵達が立ち向かうも青黒い瘴気に攻撃を弾かれ体を喰い千切られてしまう。
「なんなんだ、この青黒い瘴気は!?それに、ポワゾンリザードの額に第三の目が…っ!!」
「ギャアアアアア!!」
「まずいぞ、ジクート!このままじゃ応援が来たところで…何か対抗する手段は…」
蜘蛛兵を束ねるジクートに視線が集まるが、ジクート自身もポワゾンリザードに対し防戦一方の状態だった。
(確かに、魔眼化した魔物を討伐するにはモモの力がないと…このままじゃジリ貧は必至…)
ペルが戦況を冷静に把握していた時だった。
“ペル、私の声が聞こえますか?”
「…!?誰?」
突然ペルの頭の中に透き通るような声が語り掛けてきた。
「?どうしたのペル?」
「いや、なんか女の人の声が…」
「え?」
“私はナーガ。貴方の主モモをこの世界に転生させた者です。”
(ナ、ナーガ様が一体…!もしかしてこの契約紋に…?)
“ふふ、気付いていただけましたか?貴方のモモの力になりたいという意志に私は感銘を受けました。これからもモモには貴方の力が必要になるでしょう。そこで、一時的ではありますが、私は貴方とモモとの契約紋に力を付与しました。”
(ナーガ様の力…?)
“そう、瘴気に対抗する浄化の力です。貴方なら使いこなせるはずです。私とルブロンは旧知の仲、どうか彼を助けて”
(―――!やってみます!)
ペルはモモとの契約紋に手を当て、深く目を閉じた。
その様子を見ていたラーキットが、グレートソードを肩に乗せペルを挑発する。
「おやおや、ずいぶん大人しくなったじゃないか。聖蛇のペット?お前は戦わなくていいのか…って、どうやってあの傷を!?」
「リリン、あと頼むね!」
ペルはそう言い残すと、ラーキット目掛けて硬化した糸のナイフを投げ放つ。直撃を避けたラーキットは後ろに飛びのいた。
「ちょっと、ペル!?」
リリンは動揺しながらも、ペルの攻撃を避けたラーキットに火炎エネルギー弾で追撃した。
「くそ、何が狙いだ!?悪魔の女の攻撃も厄介だ、先に始末するか!」
ラーキットがターゲットをリリンに変えた。
「…逃げなさい…この瘴気は我々では抑えられない…」
瀕死状態のルブロンがリリンに逃げるよう促す。
「そんなこと出来ないわ!ペルがアナタに会うためにここに来たんだから!彼が諦めない限りアタシも戦うわ!」
「…?余になにを…」
「しゃべらないで、ルブロン様!傷にひびくわっ…きた!」
ラーキットがグレートソードを構え、リリンに縦一閃、仕掛けてきた。その攻撃を避けざまに、火炎エネルギー弾が一発ラーキットを直撃。
「チィッ!!」
「そんな大振りな動きじゃ、アタシは捉えられないわよ?」
黒い翼を広げ、リリンは飛び上がると、リリンの背後に隠れていたペルが現れ、ラーキットに体術を仕掛けた。グレートソードを放し組み躱すラーキットが体勢を崩した瞬間、ペルが瞬時に硬化した糸で剣を創り出し、ラーキットの胸に突き刺した。
「がっ…はっ…」
そのままペルは剣ごとラーキットを土壁に刺し込んだ。衝撃で血を吐くラーキットの自由を蜘蛛の糸で封じ込めると、ペルは部屋の中央にある瘴気の陣の前に立った。
(…瘴気の陣と魔眼化したポワゾンリザード、ニーヴスライムを片付ける、Mじゃ小さい、L範囲か。)
ペルはL範囲で瘴気の陣から円網状に糸を張り巡らせ、魔力を込める。ポワゾンリザードの纏う青黒い瘴気が阻止しようとペルに襲い掛かるが、ペルが発する聖属性魔力に弾き消された。
「な、なにをする気だ、あいつ…?」
ポワゾンリザードと対峙するジクート達がペルの様子を窺う。
すると、ペルの胸の契約紋と同じ紋様が円網状の糸の上に浮かび上がり、魔力を開放。
王の間が聖属性魔力で包まれ、瘴気の陣と共に次々と魔眼化したポワゾンリザードが、ルブロンを浸食していたニーヴスライムが浄化されていく。
「―――――!!」
「なんて…魔力量だ!あいつは…一体…?」
浄化の光は洞窟中に届き、蔓延っていたニーヴスライムも消滅していく。
「……!……ル!ペル!!」
ペルがリリンの声で目覚めた時、土蜘蛛兵に取り囲まれていた。パナマリア達を守っていた結界も解けていた。
「ペル、良かった…」
「ペル様!」
「! パナマリア様、危険です!」
目覚めたペルに駆け寄ろうとするパナマリアを制止する蜘蛛兵だったが、パナマリアの傍にいた王妃に首を振られる。
「…っ、王妃様まで…」
リリンの膝枕から体を起こすペル。
「―――片付いた?」
「ええ、ペルのおかげでね。いつから浄化魔法出来るようになったのよ?」
リリンの言葉にペルは胸の契約紋を確認した。すると一時浮かび出ていた八匹の蛇がいなくなっていた。
「ああ、ナーガ様が一時的に力を貸してくれてね。」
「―――!?」
「ところで、ルブロン様は?」
ペルが後ろを振り返ると、瀕死状態からは回復した蜘蛛の王ルブロンが、ニーヴスライムに浸食された痛々しい半身を晒したまま、玉座に就いていた。その横には檻に入れられたラーキットの姿があった。
「くそっ、こんな檻なんぞ!!おれはこんなもんじゃない、こんな蜘蛛共に捕まるなんてっ!」
「静かにしろっ!」
ラーキットが檻越しに蜘蛛兵達に取り囲まれる。
ペルを心配そうにのぞき込むパナマリアの姿に、ふっとペルは笑みをこぼした。
「パナマリアも無事で良かった。」
「貴様!気安く王女様の名を…」
ペルを敵視する蜘蛛兵をパナマリアが諭す。
「おやめなさい、失礼なのはあなたの態度です。ペル様はわたくしを魔人達から助けて下さったのですよ。」
「―――っ。」
その場を静観していた蜘蛛兵の一人がペルの前に進み出た。
「俺は土蜘蛛のジクート。王女パナマリア様と王妃様のことはもちろんだが、我らが王ルブロン様の危機を救ってくれたこと感謝する…ペル、と呼ばれていたな。」
「ああ、ボクはタランチュラ種、ブラッチペルマのペル。連れはサキュバスのリリン。」
「ペルはどうして蜘蛛の王の巣に?あいつの仲間ではないみたいだが。」
ジクートが捕らえられた魔人ラーキットを指す。
「たしかに目的があってここを訪ねたんだけど、とりあえずルブロン様の傷を治そう。」
「!? 出来るのか??」
ペルの言葉に周囲の土蜘蛛達、王妃そしてパナマリアが期待を寄せる。
「どうする気、ペル?」
「…モモがくれたコレなら…さっき壊死しかけてたボクの体も再生したし。」
ペルはポケットから小瓶を取り出した。
「ジクート、この小瓶の中身の事は詳しく言えないが、ボクを信じてルブロン様に飲ませて欲しい。」
小瓶を受け取ったジクートは、ギュッと握り少し考えると、ペルの瞳を見た。彼の曇りのない瞳を確認したところで静かにコクリと頷いた。
ジクートがルブロンの前に立つと、ルブロンは何も言わずに口を開けた。皆が見つめる中、小瓶の液体を口にしたルブロン。すると欠損箇所がみるみる再生していき、果ては人化する力まで戻った。
「おお、久しく見られなかったルブロン様の人化のお姿…」
「ここまでの魔力が戻るあの小瓶には何が…?」
人化したルブロンは自身の手や体を確認し、姿勢を正した。するとペルとリリン以外の者達はスッと片膝を付き、王に頭を下げた。ルブロンのその姿は顔左半面に般若の様な面を付け、山吹色の蜘蛛紋付と羽織袴姿。その威厳ある姿に、ゴクリとペルは息を呑んだ。
と、その場が油断で満ちた瞬間、ラーキットが落としたままのグレートソードがカタカタ震え出し、檻に捕らわれていたラーキットを檻の隙間から
ドッ…パキン…
「な…っ、剣が勝手に!?」
「!?」
ルブロン、ペル、リリンにジクート達も動揺を隠せずにいた。
グレートソードはラーキットの核を砕いた。
「…あ…ぁ…バ…ラムさ…ま…」
「―――バラム?あいつが最初名乗った時の四天王の名だ。…口封じか。」
ペルが冷静に灰化していくラーキットの最期を見る。
「なんてことだ、色々吐かせようと捕らえたのに…」
蜘蛛兵達が悔しさを滲ませる。
「サーヴァントも所詮駒に過ぎないってことか。…魔人達は一体何をしたいんだろう…」
灰になったラーキットに残されたものは、彼が集めた核が無情にも墓標の様に光を放っていた。
お読みいただき、ありがとうございます。
至らぬところがあるかと思いますが、どうぞよろしくお願いいたします。
キャラメモ ★トール★ロイドのピアスに宿る雷神
✿人情に厚い
✿ナーガとの付き合いで、黒曜石のピアスに加護を与える。
✿一人称:わし
✿ロイドが持つ雷剣クトネシリカに宿るカンナのパパ。
✿時々姿を現しては、ロイドと酒を飲み交わしている。




