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覚醒(5)

 「っ大変だ、カイド!」


パロル村のギルドに一人の若者が駆け込んできた。


「今、登山口にモモ様と勇者様とっ、でかい狼が!!」

「おー、俺もびっくりしてるとこだ。とりあえずアドフォードにも知らせてくれねぇか?」

「あ、ああ!!」


ギルド管理人のカイドが外へ出ると、若者のいう巨大な白銀の毛並みを持つ狼の姿が。その巨大さは体高3メートル、体長9メートルに達していた。その傍らには聖女モモにラウルとダンの他、仲間と思われる青年2人と、モルネガングア山脈へ入山以降、行方不明とされていた勇者ヴァンとその仲間の姿があった。


「よぉ、ラウル。何かとんでもない事になってるな?」

「カイド、まあ、察しが早くて助かるよ。」

「カイドさん、お久しぶりです。」


モモがカイドに笑顔で挨拶をする。


「久しぶりだね、モモ、元気そうで何よりだよ。」


話を聞いたパロル村、村長のアドフォードも息を切らせながら駆け付けた。


「まさか、ハティ様を拝めるなんて…」


アドフォードの第一声だった。


「いやいや、それも畏れ多い事なんだが、そうじゃないんだアドフォード。ラウル達かなり疲弊している。宿の手配と村人達を落ち着かせてくれ。」


いつの間にか、大地の化身ハティを含みラウル達を取り囲む様に村人達が集まっていた。


「あ、ああ、悪い。ラウルにダン、モモは私の家を使ってくれ。他の方々には宿を用意しよう。私はこのパロル村の村長アドフォードです。どうぞ疲れた体を休めて下さい。」


アドフォードの挨拶に代表して反応したのが、勇者ヴァンだった。


「ありがとうございます、村長。お言葉に甘えます。俺はヴァンと申します、他は…」

「大地の勇者ヴァン様と仲間の方々ですね、行方不明と聞いていたので、ご無事で安心しました。」


今やロイドとジュウトは仲間を外れていたが、この場では二人は黙っていた。


「アドフォード!オレお腹減った!!」

「おー、元気いっぱいだなダンは。ヨルダがなにか作っていたから貰うといい。」


ダンは、よっし!!と声をあげ、村長宅へ駆け出し、その場を離脱した。


『我はこの場では目立つ故、一旦下がろう。ただ、気をつけよヴァン。海の勇者も囚われの身にあるようだ。』

「ーーーえっ?」


召喚獣ハティは、そう言い残すとフッと姿を消してしまった。


「助けて下さって、ありがとうございますヴァン様。」


モモがヴァンに礼を述べた。


「いや、礼を言うのは俺たちの方だ、モモ。それに俺に様は付けなくていいよ、貴女は聖蛇ナーガの化身、勇者以上の存在だ。

今はまだ混乱しているところもあるが、整理してギルドにもモルネード王国にも報告しないといけないな…それに…」


ヴァンはいつの間にかパーティーを抜けていたロイドとクビを宣告してしまったジュウトに目をやった。

するとロイドはジュウトの背中にポンと手を当てて促す。


「付き合うよー。」

「すまない。」


申し訳なさそうにヴァンは目を細めた。


「ヴァン、さっきハティ様が仰った海の勇者ってルカ様のことじゃ…もしかして私達みたいに?」


ピユフィーヌとアイラが心配そうにヴァンに問う。


「ああ、アダが言っていたな、召喚獣の核…あいつ、ルカは単騎だ。だがまずは自身の整理が先だ、時間が惜しいがな。」


そう口にしたヴァンの前にラウルが黒い鎧を解き進み出た。


「勇者ヴァン殿、俺はパラディンのラウルです。このパロル村やモルネード王国では結構顔が利くので、良かったら状況整理や各方面への報告、力になりますよ。」

「キミが…噂には聞いていたよ、聖壁のラウルだね。今回はジェイドとアイラが世話になった。よろしく頼みたい。」


ヴァンに差し出された手をラウルは力強く握った。


「私はどうしたらいいかな、ラウル?」

「ああ、モモもいきなり王宮から攫われたからな。とりあえずアダの件もあるし、今日はパロルで休もう。モモの無事は俺がラインハルトに報告しておくよ。」

「ありがとう、ラウル。」


それから、モモは村長宅へ。ラウルとヴァン達一行はギルド2階の客間に移動した。



 「モモ!!元気だったかい!?ああ、こんなに埃だらけで、こうしちゃいられない、まずは湯にゆっくり浸かって疲れを癒しておいで。サラス!モモの着替えを用意しておくれ!」


村長宅にモモが到着するやいなや、村長の妻ヨルダが迎え入れてくれた。侍女サラスも二人とも元気そうだった。


「モモ様!お久しぶりです!すぐに用意致しますね、ささ湯殿へどうぞ。」

「ありがとう、ヨルダさん、サラス。」

「ほらほら、ダン、まだあるんだから…急いで食べると喉詰まらすよ?」


モモより先にヨルダの元に来ていたダンは、満足そうに料理を頬張っていた。


「あ!ダン、それ俺の木苺パイ!!」

「あんた、ダンは疲れて帰って来たんだから、譲ってあげな!」

「……ダンに甘い…」


アドフォードの楽しみに取っておいた木苺パイも、すっかりダンのお腹の中に収まり、笑いと和やかな空気に包まれた村長宅だった。



 湯あみを終えたモモは村長宅2階の角部屋に案内された。


「モモ様が使っていらした当時のままに整えてございます。何か足りないものがありましたら、このサラスにお申し付け下さい!」


その部屋はモモがこの世界に転生し、パロル村で生活していた頃そのままだった。可愛らしい小物や家具、新調されたカーテン。


「わぁ…うれしいです、ありがとうございます。」

「ヨルダ様はモモ様の事、もちろんアドフォード様も本当の娘として想っております。モモ様が旅立たれてからもずっと、その身を案じておりました。サラスも再びモモ様にお会いできてうれしいです!」


サラスの言葉がモモの心にグッと染み込む。前世ではあまり甘えられなかった親という存在。自分を想って、心配してくれる存在の温かさに触れ、涙が溢れた。そんなモモをサラスが優しく抱きしめた。


「ここにいる間は、村長のお嬢様なんですから、いっぱい甘えて下さいね!今ヨルダ様がお茶の準備をしています。落ち着きましたら下りて来て下さい、モモ様。」


サラスは笑顔でそう言い残すと、パタパタと階段を下りて行った。

すると、ポンっとアダが姿を見せた。モモはヨルダ達をびっくりさせない様、アダに最初は姿を消していて欲しいを頼んでいたのだ。


『モモの周りの人間温かいね。アダもお風呂気持ちよかった!』

「!アダも入ってたの?」

『うん!プカプカしてたよ、ちゃんと見えなくしてね。』

(なんか、想像するとかわいい…)


そんなモモとアダの会話に膨れっ面のルキスがいた。

今夜は静かに更けるはず…だった。


「にしたって、久しぶりに賑やかな夕食で楽しかったよ。まさか魔物と一緒にご飯を食べるなんてねぇ、長生きするもんだわねー。」


アドフォード夫妻とラウルにダンと共に夕食をとったモモ。夕食をとる前にアダの事を夫妻に紹介した。

当初は二人ともびっくりしていたが、ダンの「悪いヤツじゃない」の一言で二人の不安が払拭されたのだった。

アダがフヨフヨとヨルダの頬に擦り寄った。


『ヨルダのごはん、おいしかった!』

「ふふ、アダはかわいいわねぇ。明日の朝も楽しみにしていてね。」

『うん!』

「ゆっくり休んでね、モモ。」

「おやすみ、モモ。」


アドフォードとヨルダに声をかけられ、満面の笑みでモモもお休みの挨拶をしてリビングを後にした。

自室に戻ったモモの前にはただならぬ気配を醸し出すルキスの姿が。


『アダはいいわよね、人間にも姿が見えて、可愛がってもらえて!その反面アタシは全ての人間に見えるわけじゃないし、モモもアダの可愛さに夢中みたいだし!』


拗ねたルキスはネチネチ愚痴をこぼすと、そのままポフッと枕に体を埋めた。その大きな瞳にはいっぱいの涙が。そんなルキスのそばに腰を下ろすモモ。


「ルキス、あなたの事は信頼しているし、頼りにしているわ。それにこの世界の瘴気を浄化出来るのは、あなたの力がないと出来ないことでしょ?」

『…そういっても、モモにはペルだって、リリンだって…最初はアタシだけだったのに…』

「ふふ、やきもちやいてくれているの、ルキス?」


モモが優しく微笑む姿をみたルキスは、こぼれんばかりの涙でモモの胸の中に飛び込んだ。


『うわーん、アタシのご主人さまだもん!アタシが守るんだもん!…モモとの魔力が途切れた時、モモとの繋がりが切れた時、すっごく怖かったよぉ!!もぉ独りぼっちに戻りたくないもん、アタシだってモモと一緒にいたい!!』


こんな甘えたなルキスを初めて見たモモは、クスッと笑みをこぼしながら、両手で優しくルキスを抱きしめた。


「私も、ルキスが大事よ、ありがとう。心配かけてごめんね。」


二人の様子を見ていたアダがしゅんとした表情で、フヨフヨとルキスに寄り添った。


『…ルキス、ごめんね。アダいじわるしたかったわけじゃないよ。本当はアダにも帰る場所があるんだけど、勝手に出てきちゃってチェルノボーグに捕まって…だから怒られちゃうのが怖くて…』

『……え?勝手にって、じゃあアダのおうちはどこにあるの?』


 アダの意外な告白に、ルキスの涙もピタッと止まった。


『アダは、この世界の闇の時間を司るオティウス様の眷属なんだ。』

「オティウス様⁉」


オティウスとは、以前モモが魔人に攫われた時、マカウスの洞窟で会った、二本の角を生やした花紺青に金の刺繍をあしらえた、膝より長い丈のローブに身を包んだ、青鈍色の瞳を持つ、男性とも女性ともとれない妖艶な存在だ。


『知ってるの?アダは魔物だけどオティウス様に仕える影の始祖。オティウス様のおやつを食べちゃって、ケンカになってオティウス様の元を勝手に出て来ちゃったんだ…それからかなりの年月が経って、アダの力がこの世界で悪い事に使われて、オティウス様きっと怒ってる…だから戻れないんだ…』


しょんぼりするアダの姿を目の当たりにしたルキスは、さっきとは打って変わって一瞬で元気になり姉貴風を吹かせた。


『大丈夫よアダ!アタシが一緒に謝ってあげる!昼間はオティウス様、眠くて機嫌悪いけど夜なら…』


と、ルキスが言いかけた時だった。開けていないはずの窓からスウっと夜風が入ってきた。


「え…?」


不思議そうに窓の方へ視線を向けるモモが目にしたのは、窓辺に腰掛ける…


「オティウス様!」


モモが思わずその場に立ち上がる。

ルキスは瞬時に人間化し、オティウスの前に跪いた。


『い…いらっしゃるとは存ぜず、ご無礼をっ…』


オティウスは一旦はルキスに目をおとすも、すぐにモモと目を合わせ、妖艶に微笑んだ。


「楽にしてよい、今回も大変だったようだね、モモ。そして、私の探し物も見つけてくれた様だ。

探していたよ、アダ。」


オティウスが優しくアダに声を掛ける。怒られると思っていたアダの瞳が一瞬にして潤んだ。


「アダの魔力を地上界で感知出来た時は鳥肌が立ったよ。小さい事だったが、アダには悪い事をしたね。私も反省しているよ。」

『オティウスさまぁ…』

「幾年月も独りで頑張ったね、また我が下に戻って来てくれるかい?」


オティウスがそっとアダに手を差し伸べた。その優しい眼差しにアダは引き込まれるように、モモの傍を離れオティウスの胸の中へ飛び込んで行った。


『オティウスさまぁぁぁ!』


感動的なシーンのはずなのに、ふとモモに頭を過ったものは。


(…おやつのケンカでこんな大事に…異世界の基準て…)


『アダ、オティウス様と離れている時に知った事。たくさん報告しなきゃいけないことがあるよ。』

「ああ、私も知りたいことがたくさんあってね。まずはゆっくりアダの話を聞こうか、木苺のパイを食べながらね。」

(…木苺…そういえば、ダンもアドフォードさんの食べてたわね…)


アダとの再会も終え、一段落するとオティウスが声色を変えてモモに尋ねた。


「モモ、今回倒した相手は地底魔王軍の四天王だったな?」

「あ、はい」

『チェルノボーグだよ』

「そうか。はっきり言おう、ナーガはきみに何か大事な事を隠している。」

「…え?」

「詳しくは私も知り得ないが、地底魔王軍に地底魔王の蘇生。魔人に聖女の血、そして勇者のもつ召喚獣、ただの瘴気の浄化を依頼していたナーガだが、事はそんな単純では無くなってきている事は確かだ。」

「―――――っ」

「私はこの世界の掟でナーガに直接会うことは出来ない。ルキス、お前がナーガの秘密を探るんだ。」

『え…アタシが、ナーガ様の…?』

「お前にしか出来ない事だ。そしてモモ、キミは時期を見て妖精王オベロンに会うといい。聖地サーリンゼルカにいる。ただ、彼の力も瘴気によって弱まりつつある。」

『オベロン様が…』


オティウスの険しい表情にただならぬ事態だと思い知らされるモモとルキス。


「ああ、すまない怖がらせてしまったな。だが、キミには知らせておきたくてね、モモ。

私もまだ調べたいことがある、また日を改めて来よう。ではな。」

『モモ、また遊びに来るよ!ルキスもまたね!』


オティウスとアダはそう言い残し夜風と共に消えていった。

部屋に残されたモモとルキス。オティウスの影響か、冷静なルキスがモモの手を取った。


『……モモ』

「ん?」

『モモが攫われてから、モルネード城で切り離されたモモの影、美琴の記憶に触れたわ。』

「…え?」

『美琴の記憶に触れたのは、アタシとラウル、聖属性魔法師団長のルークよ。』


ルキスの言葉に愕然としたモモ。そんなモモの姿を見たルキスは慌ててフォローする。


『あ、あの、アタシ達も勝手に触れたんじゃなくて、致し方なかった状況だったのよっ。

モモの、その、隠しておきたかった部分とか…』

「――――――!」


モモはしばらく黙って心を落ち着かせていた。


「…なんだか恥ずかしい…私も今回の戦いの最中に美琴に触れたの。美琴は言っていた。泣く事、甘える事は決して弱く、悪い事じゃないよって…。」

『もちろんそうよ!』

「うん…ナーガ様にモモの名を頂いてから、前世の記憶や弱い自分を隠していたの、バレちゃったね。美琴が教えてくれた想い、言葉が力になって、それからなの。あの魔法、サンクチュアリ・プルガシオンがステータスに出てきたのは。今回のピンチ、美琴が助けてくれたんだわ。感謝しなくちゃだね。」

『モモ…』

「もう大丈夫、美琴とは心を一つに出来たし、それにみんなを守りたい、一緒にいたい気持ちが今まで以上に強くなったよ。」


丁寧に答えてくれるモモに、ルキスの涙腺が緩んだ。


『…モモが血の魔法陣、サンクチュアリ・プルガシオンを展開した時、いきなり手を切るからびっくりしたわ!最初に会った時アタシ言ったよ、自分を大事にしてって!…モモがいなくなったら…アタシ…』


俯き、肩を震わすルキス、その手がぎゅっと服を握りしめた。


「いつも心配かけてごめんね、ルキス。私もあなたが大切、もう無茶はしない、約束するわ。だから顔を見せて?」


モモが申し訳なさそうにルキスに声を掛けると、ルキスは再びポンっと妖精化し、モモの胸に飛び込んで来た。


『絶対よ!絶対だからね!もう無茶はしないでね!!』

「うん。」



 すっかり夜が更けた頃、月あかりがカーテンの隙間からモモの寝顔を照らす。

酒瓶を片手に一人晩酌をするルキスは静かに小さな寝息を立てるモモを見ていた。


(……モモが弱さを克服したから、あの血の魔法陣が発動出来た…。あの時、アタシの魔力もごっそり持っていかれた。ステータスでも、モモはレベル・スキルともにアップしてる。覚醒したモモの能力を、浄化と蘇生能力しかないアタシだけで活かせるのかな、受け止められるのかな…ナーガ様の隠している事…調べなきゃ…ペルの奴、早く帰って来なさいよね!)



モモ=百瀬 美琴

Lv.68

聖蛇の化身

職業:聖女

使役妖精:光

使役魔:蜘蛛・悪魔(サタン19女)

HP:7852/7852

MP:8697/8697

戦闘スキル:弓 体術

聖属性魔法Lv.∞

聖属性スキル:魔力回復、体力回復、状態異常回復、

       治癒、浄化、死者蘇生

       血聖魔法陣


 






















お読みいただき、ありがとうございます。

至らぬところがあるかと思いますが、どうぞよろしくお願いいたします。

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