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覚醒⑶

 謎の男が指をパチンと鳴らす音が空間内に響くと、4体のデュスノミアが手にしていた黒い剣の剣先を下に向けて持ち替えた。そして、一歩ヴァンに向かって進む。


「どれに何を当てはめるのかしら…違う玉を填めたら爆発とか…?」

「まぁ、何かしら意味はありそうだよねー。」

「適当に填めたら危ない気がするわ、どうしたらいいのー?」


時限のあるミッションに焦るピユフィーヌに、ロイドが腕を組みながら声を掛ける。


「落ち着け、ピユ。」

「落ち着けるわけないでしょ?ヴァンの命が係っているのよ⁉」

「僕たちもねー。」

「……ねえ、ロイド。ジュウトってこんなにゆるかった?」

「2年も会わなきゃ変わってる奴くらいいるだろ。」

「そ…そう。」


ロイドに冷たくあしらわれるピユフィーヌ。そんな彼らを余所にモモがディスノミアの足元の数字を口にした。


「【3】、【9】、【11】、【17】…確か【13】は以前にも、死神だった…。上向きだった剣が下向きに…?」


モモの考え込む様子をロイドが目にした。


「何か気付かれましたか、モモ様?」


デュスノミアがズズッと2歩目を進める。


「もしかしたら、タロットを使っているのかも。」

「タロット…?」


ロイドとジュウトがハモった。


「占いの一つね。色々な占いがある中でカードを使うものよ。他には星見占いや、水晶占いもあるわ。私も詳しくは知らないけど、モモはタロットを知っているの?」


ピユフィーヌの占い説明にフムフムとロイドとジュウトが耳を傾ける。


デュスノミアが3歩目を進める。


「デュスノミアが持つ黒い剣はタロットカードを示していて、最初剣先が上を向いていたのに、下になる様に持ち替えたわ。つまりこれがカードだと逆位置になるの。」


モモがデュスノミアの持つ黒い剣をヴァンの頭の位置にある【17】から時計回りに、【3】、【9】、【11】の数字の意味を説明する。


「ヴァンさんの頭から時計回りに言うと、【失望】、【嫉妬】、【疑念】、【不正】これがそれぞれのカードの逆位置の大きな意味だとすると、剣先を真上に持ち替えさせるためにはカードの正位置の意味を考えれば、【17】は実現する可能性が高い夢や希望のこと。」

「ヴァンの場合は悪を滅して世界を平和にすることね。」


ピユフィーヌがヴァンの場合の解釈を口にした。


「【3】が繁栄、優しさ、思いやり、平和とか。」

「確かに、ヴァンの性格はそうだった。勇者としての資質もかな。」


ピユフィーヌに続いてジュウトが解釈した。


「【9】が思慮深さ、慎重、集中力、洞察力とか。」

「なるほど。魔物やダンジョンのボス戦、ヴァンは仲間の行動も把握しながら常に慎重に戦っていたな。」


ヴァンとパーティーで前衛を組んでいたロイドが口にした。


「最後に【11】は公正な視点から物事を客観的に判断出来るとかだったかな。」

「まさしく、ヴァンの性格の一つだわ。」


ピユフィーヌの言葉にジュウトとロイドが頷いた。


「これが正しければ、この呪印はタロットの逆位置の意味を持つ魔物がヴァンさんに封じられていて、あの玉をデュスノミアの黒い剣の柄の窪みに正しく填められたら、その進行を止められるかも。ただ…」


モモが顎に手を当てて、眉間に皺を寄せる。

デュスノミアの歩みは6歩目に入っていた。


「ただ?」

「どうしたの、モモ様?」

「うん、どの色がその意味を表しているのか…。私が考えるに、【17】は星のカードだからマーブルの玉で、【9】は隠者のカード。確か背景が水色だったから青かなって。でも【3】は女帝のカード、【11】は正義のカード。どっちが赤なのか迷ってしまって…。」


モモのその言葉にロイドとジュウトが即座に反応し、7歩目に入るデュスノミアの黒い剣の柄の窪みにジュウトがヴァンの頭の位置【17】にマーブルの玉を。ロイドが足側の位置【9】に青色の玉を填め込んだ。すると、剣先を下に向けていたデュスノミアが上に持ち替え、8歩目で2体はその場に停止した。


「よっし!!」

「やったー!」


ロイドとジュウトが声を挙げ、モモとピユフィーヌもまた手を合わせて喜んだ。


「あとは【3】と【11】の2択ね。私は【3】の女帝が赤だと思うわ。」


ピユフィーヌが考えを口にすると、続けてジュウトもその考えに賛成した。


「女帝、女王ってことよね。女王様はこの世界ではルビーやガーネットの赤い石、赤いドレスを身に纏うことが多いわ。」

「正義に関しては、武器や装備品にダイヤや白を基調とするものが多いよね。」

「…たしかに。そうだな、それでいこう。ジュウト急ぐぞ、10歩目だ!」

「うん!」


モモが迷っている間に、さくっとピユフィーヌ達の意見がまとまり、ジュウトがヴァンの右側の【3】に赤い玉を。ロイドが左側の【11】のデュスノミアの持つ黒い剣の柄の窪みに白い玉を填め込んだ。

ロイド達の行動を祈るように見守るモモとピユフィーヌ。

すでにデュスノミアは12歩目に入り、剣を振り上げようとしていた。その寸でのところで2体のデュスノミアは動きを止め、剣先を下から上に持ち替えた。


「やったぁぁ!!」


4人が歓喜の声を挙げハイタッチを交わした。


 

 4体のデュスノミアがヴァンに向かう足を止め、先に動きを止めた【17】と【9】のデュスノミアも12歩目に合わせるようにズズっと進んだ。

そして、赤、青、白、マーブルの4つの艶のある玉が虹色の光を放ち、ヴァンの体の上に呪印解除の魔法陣が展開。構築壁がガラスが割れる様な音を響かせ、砕かれた。

ヴァンの体に封じられていた魔物が奇声を上げながら姿を現した。


「ヴァァァァアッァア!!」

「ダ…ダイモニゾメノス…?」


モモ達の前に姿を現したのは、黒い靄をカラダから発する一見影の魔物ダイモニゾメノスに見えるも、額や手足にいくつもの闇の目を持つ黒い魔物だった。


(この状態…たしか女王蜘蛛ナルボンヌも…最終的に)


モモは黒い魔物の姿を以前討伐した女王蜘蛛ナルボンヌと重ねていた。

4人が立つフィールドも色がじわじわと青黒く変わり、瘴気がフィールド内に立ち込めていく。


〝 ピュリフィーン !〟


モモが浄化魔法を詠唱。青黒い瘴気がモモ達一体をL範囲で浄めた。

ジュウトが全員に攻撃力、防御力上昇、魔力消費軽減、状態異常耐性の効果を付与した。

ロイドがクトネシリカを、ピユフィーヌが魔法の杖を構え、控えていた闇の妖精テネ、雷神トールが攻撃態勢を整えたその時。


パチパチパチパチ


「まさか、あの呪印を解かれるとは思わなかったよ。博識なんだね、聖蛇の娘は。」

「!!」

「その声、さっきの⁉」


拍手をしながら黒い魔物の横に姿を見せたのは、黒いフードを被った男だった。ピユフィーヌが杖を男に向けた。


「…たまたま昔タロットに興味があって覚えていただけよ。この世界にもタロットがあるのは知らなかったけど…。あなたは誰?」


モモの問いに、黒いフードの男がニヤリと笑い、一歩前に出た。

すかさずロイドがモモの前に出る。


「ここまで来たんだ、冥土の土産に教えよう。

私は地底魔王軍、四天王が一人、チェルノボーグ。聖蛇の娘、キミの活躍はマピチュ村の瘴気の陣浄化から見させてもらっていたよ。」


チェルノボーグはフードを取り、その顔を露わにした。青い長い髪を一つに束ねた、鼻が高い尖った耳を持つ男。


「地底、魔王軍の…四天王?」


モモはもちろんだが、ロイド、ジュウト、ピユフィーヌもどこかピンときていない表情でチェルノボーグを見た。


「魔王軍はみんな知ってるわよね、地底って?」

「聞いたことがないな、ジュウトは?」

「僕も知らなーい。新しい組織?」

「…?」


黒い魔物とチェルノボーグを残し、ピュリフィーン達は聞き覚えのない〝地底魔王軍〟というワードについてあーでもない、こーでもないと話し出す。


「いや、ちょっ…会議する程のことなの?無視しないで!!」


チェルノボーグの呼びかけに対し、残念そうに彼を見るピユフィーヌ達。


「っく、馬鹿にして!こうなったら、この場にいる全員。聖蛇の娘は無傷でと思っていたが、お前にも地獄の苦しみを与えてやる!」


チェルノボーグはモモにモルネード城で侍女が使った黒い魔石のナイフを向けた。


「こいつに見覚えがあるだろう?瘴気を浄化する聖属性を持つ者にのみ、その能力の無効化を発揮する特別製の魔石。聖蛇の娘さえ封じてしまえばお前たちに勝ち目などない!」


チェルノボーグはそう吐き捨てると、フッと姿を消し、モモの真上に瞬時に現れ、魔石のナイフをモモの影に刺し込もうと襲い掛かった。


パシッ


チェルノボーグのナイフを持つ右手首を、ロイドが捕らえた。


「そう簡単に狙えると思ったか?」


ロイドがチェルノボーグの手首にグッと力を入れ、ナイフを手放させようとすると、チェルノボーグはニヤリと笑いロイドに目を合わせた。


「ふふ、私はキミの足も止めたかったんだよ、雷剣ロイド。」


チェルノボーグの手首を握るロイドの右手を黒い影が這うように巻き付いた。


「―――っ⁉」


ロイドが右手を押さえ、ガクッと膝をついた。


「ぐっ…う…」

「ロイドさん⁉」


ジュウトとモモがロイドに声を掛け体を支え、モモが回復、浄化魔法をロイドの右手にかけた。


〝パージ・ヒール〟


部分的な浄化と回復の効果をもつモモの魔法が効果を発揮せず、ロイドの右腕全体が生気のない色に変色していく。


「ロイドさんの腕がっ…」

「…ぐうっ、痺れて熱い…力が入らない…自分の腕じゃないみたいだっ…」


ロイドが苦痛に顔を歪める。


「どうして…この影、毒や瘴気の類じゃないってこと?ルキスの力が効かないなんて…」


モモ同様、ルキスも焦りを見せた。しかし何度浄化魔法をかけても症状は悪化していき、炎症から体温が上昇、ついにロイドが倒れ込んでしまった。


「―ーー!!」

「ロイドさん!!」


この状況を静観していたチェルノボーグが薄気味悪い笑みを浮かべる。


(聖蛇の娘の浄化魔法、確かにあれは瘴気に対しては効果を発揮する。しかし、この影は瘴気ではない。人間だった者が魔人になる過程のもの。負の感情に負けていない正常な人間がこの施術にかかれば、魔人には変化せず苦しみ悶えて死んでいく。部分的にかけたのは初めてだが、いいデータが取れそうだ。)


「なにがおかしいのよ⁉ロイドに巻き付いたこの影は何⁉」


ピユフィーヌが声を荒げ、手にしていた魔法の杖でチェルノボーグに殴りかかるが、黒い魔物の手が伸び杖を掴み取られ、逆にピユフィーヌは弾き飛ばされてしまった。


「きゃあっ!!」

「ピユフィーヌさん!」


飛ばされたピユフィーヌをジュウトが受け止める。


「…っジュウト、ありがとう。」

「ここで熱くなっちゃダメだよ、ピユフィーヌさん。」

「でもっ、ロイドはこのままじゃ…」


その時だった。


「…うっ…」


倒れていたヴァンが意識を取り戻し、体を起こした。


「うわっ⁉何で俺脱いでいるんだ⁉ここは…」


ヴァンの声を聴いたピユフィーヌ達が振り返る。


「ヴァン!目が覚めたのね!!」

「あ、ああ。ピユも無事だったか、良かっ…?」


ヴァンに駆け寄るピユフィーヌとジュウト。そんなヴァンの目に入ってきたのは倒れているロイドだった。ヴァンは乱れた衣服をサッと整えながらその場に立ち上がった。


「ロイドはどうしたんだ⁉」

「それが、今…」

「ねえ、ヴァンは地底魔王軍て聞いたことある?」


ジュウトがヴァンに問いかけた。


「地底魔王軍、ああ人間と妖精が地上を支配するよりもはるか昔に存在した地底魔王サハマジャの配下のことか?文献でしか知らないが、それがどうしたんだ?」

「ヴァンは知ってたのね!」

「?」

「今ロイドをあんな風にした、あいつ。地底魔王軍の四天王チェルノボーグって名乗っていた。」

「なに⁉」


カランッ


黒い魔物がピユフィーヌの杖を投げ捨てた。


「お目覚めか、勇者ヴァン。キミには最後まで寝ていて欲しかったが…

だが、キミだけでも我々の存在を知っていてくれてうれしいよ。文献だけと言ったが、人間達には私達のことがどう伝わっているんだい?」

「…聖蛇ナーガの信仰をする人間を邪魔者とし、人間達に恐怖を与え神々に永遠に地下に封じられた。」

「はーん…中々の端折りだね。聖蛇ナーガは都合の悪いことを伏せているのか…これは報告しないとだな。」


チェルノボーグはボソッとナーガの名を口にした。


「え?」

「いや、なるほどね。地下に封じられたとね。ありがとう、では私達の存在はまだ人間達にはわからない事だらけなんだね。これは好都合。私はこのままキミ達を抹殺するとしよう。」


チェルノボーグは黒い魔物のそばに転移した。


「ヴァン!ジュウト!ロイドが!!」


ピユフィーヌが声を上げる。


ロイドの右腕から右半身にかけて、影は広がっている。苦痛に耐えるロイドに雷神トールが神通力を与えるも影は進行、生気が失われていく。


『モモっ、アタシの力が効かないこれはきっと呪いの魔術の類だわ。何の呪詛かわからないっ』


ルキスの声が頭に響いた時、モモの中でピンときたものがあった。


(チェルノボーグは、データが欲しいと言っていた。そして私の血もきっと私を捕えたら何かの研究に使われるはず。何のデータが欲しいかわからないけど、ロイドさんの症状は瘴気関係じゃない。魔法じゃ効かない…となれば。)


俯くモモの姿を見てチェルノボーグが声を掛ける。


「絶望したかい、聖蛇の娘。」

「……。」

「そりゃするか。今まですべての瘴気の陣を浄化したのも、呪印解除も魔眼化した魔物を倒したのも、キミの力だった。そしてダイモニゾメノス49号を消してくれたのもね。」

「…49号?私が?……あの病院の⁉」


モモとジュウトがモルネード王国、フォンテーヌ病院で起きた事件を思い出した。


「49号って事は、ダイモニゾメノスはまさか人工的な魔物…?」


ジュウトの一言にチェルノボーグは両手を大きく広げて喜びを表現した。


「よく気付いてくれたね!

そうとも、今この地上界にいるダイモニゾメノスは、私が元来魔界にいる始祖を探し、核を手に入れ研究に研究を重ね造り上げた魔物なのだ!その月日こそ50年あまり。ついに私は闇をも操る影の魔物を誕生させた!そしてこいつがその完成形、ダイモニゾメノス・テロスだ。」


チェルノボーグがいくつもの闇の目、魔眼を持つダイモニゾメノスを紹介した。


「ヴァアアアア」


ダイモニゾメノス・テロスが声を上げる。その声を聴いたモモが立ち上がった。


「…私には、そのコの声が苦しんでいるように聴こえるけど?」

「はぁ?バカな、魔物なんぞに感情などあるわけないだろう?おかしなことを言う娘だ。」

「ぼくはモモ様と同じ。何か言いたいことがあるみたいに聞こえるよ。」

「!!」


モモの発言を馬鹿にするチェルノボーグの足下をピキピキと音を立てながら氷が徐々にスピードを上げ、チェルノボーグの自由を奪っていく。


「なっ、氷がまるで生きているみたいにっ⁉」

「ぼくの〝絶対零度〟からは逃れられないよ。」

「くっくそ!!……なんてな。キミが仕掛けたのが私の本体なら良かったのにな。」

「⁉」


チェルノボーグがまるで空気の抜けた風船の様に、足が氷ついたまま萎み、その場にローブだけが残されていた。


「やつはどこにっ⁉」


ジュウト達がチェルノボーグの姿を探す。その時かすかにパチっと静電気が走る様な音をモモは耳にした。音のした方に目をやると、ヴァンの背後の空間に亀裂が。


(まだ誰も気づいていない、たぶん…)


モモは素早く立ち上がりヴァンの元へ駆け寄ると。


バキィッ!!


「ぶっ…があぁ!!」


――――――え?


その場に居合わせた全員の目が豆鉄砲をくらった鳩の様になった。

モモがチェルノボーグの顔面に上段蹴りを喰らわせたのだ。ジュウトの攻撃力上昇効果もあり、モモの蹴りはクリティカルヒット。チェルノボーグは、その衝撃でダイモニゾメノス・テロスの前にぶっ飛び、口を押えて悶え苦しんだ。


「ふぐうぅぅ…は、歯がっ…!お お前…いやキミは聖女じゃ…」


チェルノボーグの口を押える指の間から血が滴り落ち、ヨロケながら立ち上がったその表情は怒りで満ち、血眼になっていた。


「?あら、聖女が攻撃しちゃいけないの?」


モモがケロッとした表情でチェルノボーグを見る。それを見ていたジュウト達もハッと我に返った。


「くっそ、この小娘、空間サーチも使えるとは…

キミさえ現れなければ全ては順調だったのに、キミだけじゃない。勇者一行、殺しておくべきだった!」


ヴァンが鎧を装備し、チェルノボーグに剣先を向ける。


「何が目的だ。何故俺を狙う、2年も時間を掛けたと言っていたな。」

「2年…?」


ヴァンの言葉にピユフィーヌが何の話か見えてこないという表情で口にする。

チェルノボーグが口内に溜まった血を吐き捨て、口元を拭う。


「…私の狙いは勇者、キミじゃない。キミに隷属している召喚獣だよ。私達にはその核が必要なのだ。2年時間を掛け本体と心の闇、影を分け、邪魔な仲間を切り離し、レベルの高い魔物のいるダンジョンに行く様仕向けたが、一向に召喚しない!!」


チェルノボーグが怒りを露わにし、纏う黒い靄が濃くなっていく。


「ハティの…核だと?

召喚獣ハティはこの地上界の陸の守護神。その神を殺そうというのか?神を殺してまで成したい行為、魔神でも蘇らすつもりか?」

「……察しがいいな。だが死にゆく者が知る必要はないんだよ。キミは黙って召喚獣を出せばいいんだ!」


チェルノボーグはそう言うと、フィールド上空にモモ達を捕える黒い魔法陣を作り出し、いくつもの黒いエネルギー弾がモモ達に照準を合わせている。


『まずいぞ、モモ、ジュウト。あのエネルギー弾、ロイドにダメージを与えた黒い影と同じものだ。触れたら…』

「⁉」


テネの言葉にジュウトがロイドを見る。右半身から首が生気のない色に変わっていた。その変色、症状はさらに進行しようとしている。

その時、モモの頭にモモの考えに決定打を与える、闇の時間を司るオティウスの言葉が過った。


《キミの血は高潔》


『何ッ考えてるの、モモ?』


ルキスが不安な表情でモモに声を掛ける。


「あの邪悪な攻撃を何とかしないと!ルキス、力を貸して!」

『どうするつもり⁉アタシの魔力じゃ…』


モモがナイフホルダーからペル特製の刃を取り出すと、スパっと右掌を切った。


『ちょっ!!モモ⁉」

「モモ様⁉」

「⁉」


モモは両手を合わせ流れる自身の血に魔力を集中させる。


―――オティウス様に会ってから、時折夢で見る血で作る魔法陣…

掌から出る血液に魔力を込め、ルキスの浄化魔法と合わせて赫い魔法陣を展開する。展開したら目が覚めてしまうから、効果がどんなものかはわからないけれど、使うタイミングは…ここ!―――


〝サンクチュアリ・プルガシオン〟


チェルノボーグが展開する黒い魔法陣を覆う様に展開したモモの血の魔法陣。

黒いエネルギー弾がモモの魔法陣に吸収されて行く。


「ば…かな…自分の手を…?私の魔法陣が消されて…」


チェルノボーグが呆然とフィールドの上空で起きていることを見る。

黒い魔法陣を完全に吸収したモモの赫い魔法陣は弾け、金の粒子となってフィールド内に降り注いだ。


「……きれい…」


 ピユフィーヌが金の粒子に触れようと掌を上に向けるも、粒子は掌をすり抜けていく。

また一方でその粒子はダイモニゾメノス・テロスに纏う黒い靄、魔眼に吸着した。そして、ロイドの体にも。


「ヴァァァァアッァア!!」


金の粒子の吸着に苦しみもがくダイモニゾメノス・テロスに自我を取り戻したチェルノボーグ。


「どうした⁉ダイモニゾメノス・テロス……まさか…」


金の粒子がダイモニゾメノス・テロスの体を包む。そしてそれは、黒い靄、魔眼を浄化しようと輝きを更に放っていた。


「ヴァアアア……あ…ああ…」


金の粒子に包まれたダイモニゾメノス・テロスの叫びが、魔物の叫びから、人のような声に変化した。

そして粒子の集合体が弾け、中から現れたのは、黒い魂の様な形をした魔物だった。







たくさんの作品の中、お読みいただき、ありがとうございます。

至らぬところがあるかと思いますが、どうぞよろしくお願いいたします。

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