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覚醒⑴

 モルネード城の一角で、青白い球体の光に包まれていたラウル、ルキス、ダン、ルーク師団長。

四人も、モモが見ていた前世の美琴の記憶に触れていた。


「…ずっと引っかかっていたの。どうしてモモはアタシに、いえ、アタシ達に一線置いているのか。いつもどこか遠慮がちで…大切な人を失う事を恐れていたのね…」

「だからマピチュ村の時も、自分の命を顧みずか。」

「え?」


ルキスの声が聞こえないルークだったが、ラウルの呟きに反応した。


「ああ、モモがこの世界に転生して初めて瘴気の陣を浄化した時、実は魔力枯渇で命を落としていたんだ。聖蛇ナーガ様によって蘇生してもらえたと聞いているが。」


ラウルの説明に驚くルーク。


「それは…初めて耳にしました。では私がラダンディナヴィアでお会いしたのは蘇生後…それで、今はモモ殿のお心に自愛はあるのだろうか。」


モモには慈愛の心はあっても、自愛が無かった事実を知ってしまったラウルは黙ってしまった。


「美琴の言葉で変化があればいいんだけどな。あんなに優しいんだから、モモは。」


ダンがそう口にした時だった。ラウルの足下に転移の陣が浮き出した。


「!!」



 一方、影であった美琴の想いを受け、一つになった聖蛇の化身モモ。美琴と共にいた世界から、影の魔物、ダイモニゾメノスの世界に意識を戻した。その目の前では、滅紫色のフードの魔人、ブーゲンが出現させたと思われるレスぺレンドラゴン2体に追い詰められる勇者パーティーの姿があった。


『独りじゃないから』


美琴の言葉がモモの力になる。

モモが意識を取り戻した事に気づいたブーゲンが攻撃の手を止めた。


「お、意識を失っていたが影に支配されなかったか。さすがと言ったところか、聖蛇の娘。ただ、もう少しだけ大人しくしている事を勧める。コイツらを片付けてからゆっくり相手をしてやる。ダイモニゾメノス、抑えていろよ。」


レスぺレンドラゴンの凍てつく息に加えてブーゲンがジェイドに連撃を浴びせる。応戦するジェイドが壁になり、後ろからピユフィーヌが攻撃魔法を繰り出すも、魔力が足りず中級レベルの攻撃に留まってしまい、決定打がない。このまま勇者パーティーのエンストを待つブーゲンを倒す術はないモモだったが。


〝セイクレッド・ジャッジ!!”


モモが詠唱する神聖なる裁きの光が、ダイモニゾメノス、レスぺレンドラゴンとブーゲンの目を眩ます。


「ぐあっ!目がっ…」


ダイモニゾメノスの拘束が緩んだ隙に、モモがジェイドの元に駆け寄る。


(今、私に出来る事。まずは目眩しで攻撃を回避してジェイドさんの回復、それからピユフィーヌさんに魔力譲渡、どれだけピユフィーヌさんが回復するかわからないけど、やれる事をやらなきゃ!)


モモの支援魔法により、体力回復を図るジェイド。肩で呼吸をするほどダメージを受けていた。


「すみません、ジェイドさん!」


モモがジェイドに素早く治癒、回復魔法をかける。


「いや、モモこそ大丈夫なのか?」

「はい!これからピユフィーヌさんに魔力譲渡します。ここから必ず脱出しましょう、全員で!」


初めて会った時は、どこか遠慮気味だった話し方のモモが、心機一転したかの様にハキハキとジェイドに声を掛ける。それが彼等の士気を上げたのか、ジェイド、ピユフィーヌ、アイラの気力が戻った。続いてピユフィーヌに駆け寄るモモ。二人は手を合わせ


〝魔力譲渡”


モモはピユフィーヌに自身の魔力の3分の1を分け与えた。


「ありがとう、モモ。これで上級魔法五発は撃てるわ。貴女の魔力、質が違うみたい。」

「質?」

「ええ、普通なら同じ量の魔力でも、上質な魔力なら1.5倍の効果が得られる…ただモモは2倍くらいあるんじゃないかしら?」


ピユフィーヌの発言にジェイドとアイラは唖然。


「に…2倍?」


ブーゲンの視界が鮮明になった頃には、迎撃体制が整っていた。


「くっ…聖蛇の娘、ただの小娘と侮っていた。中々厄介な存在だ、俺一人では荷が重いか…いや。」


 ブーゲンは攻撃の構えを解くと、滅紫色のフードを脱ぎ捨て、自身の掌を斬り血を足元に垂らした。それに呼応するかの様に閉じていた額の第三の目が開眼、更にダイモニゾメノスを支配していた第三の目がダイモニゾメノスを離れ、ブーゲンの背中に取り憑いた。

第三の目から発せられる青黒い瘴気、その禍々しさに空気が澱み体が重くなる。第三の目の支配から放たれたダイモニゾメノスは灰となって消えた。


「な、んだ、あの禍々しい目は…空気が澱んでいくっ。」

「呼吸が…息苦しいわ、それにあの、青黒い瘴気は?」


その青黒い瘴気に見覚えがあるモモ。


(あれは!女王蜘蛛ナルボンヌの時に…確か魔族の禁術で攻撃を弾く…)


モモがかつての闘いを思い出す。今の状況で勇者ヴァンを担いで逃げきれない事は全員が肌でも理解していた。圧倒的に戦闘力が上がったブーゲン、そして瘴気の陣にレスぺレンドラゴン2体。


ー…ここがどこかわからないけど、私の魔力が届くなら…

まだ、この世界でやらなきゃいけない事がある。始まったばかりで、死ぬわけにはいかないっ

美琴、見ていて。この世界を救うために、私は一歩を…ー


「助けて…ラウルー…」


モモは右手薬指の金の指輪に魔力を込めた。すると、その魔力に呼応し、足下に魔法陣が出現した。その光は円柱に伸び、光と共に弾けた。そして。


「喚んでくれてうれしいよ、モモ。」


モモの隣に漆黒の鎧を纏ったラウルが、モモを抱きしめる様に現れた。と、共に。


「わーん!!モモー!!無事で良かったよーっ!!」


妖精化した小さなルキスが、モモの胸に飛び込んで来た。

その瞳からこぼれ落ちる涙は澱んだ空気を浄化していく。


「ルキス、心配かけてごめんね。ラウル、来てくれてありがとう。」


遠慮も、迷いもないモモの一言に、ルキスとラウルは顔を合わせてから満面の笑みで応えた。

突如現れた、漆黒の鎧の人物に周囲はどよめく。


「…モモの仲間なのか?」

「顔的には、味方な感じね…なんだか澱みが薄らいだ?気のせいかしら…?」


ジェイドとピユフィーヌが一息つく。

アイラは勇者ヴァンを介抱し続けるも、未だヴァンが目覚める気配はない。


「…っ、馬鹿な、ここはダイモニゾメノスの世界だ…まさかあんな亀裂から魔力が漏れ出るなんて事は…聖蛇の娘、どれくらいの魔力量を…」


ブーゲンは焦りを隠せない。


(ダイモニゾメノスの影の世界は、現実世界と完全な遮断され、刻の流れも異なる…このフィールド自体に亀裂が入ったとしても、外界から中にいる人間の魔力を探知出来るはずは…

これが…ナーガの加護を受けた力なのか!?あの西の森でべヒモズに襲わせた人間の欠損部分の完全再生…王都のギガンテスを清浄化させた力…)


ブーゲンがモモの力を推測する中、ラウルは聖剣ソハヤノツルギを抜くと、レスぺレンドラゴン1体を瞬殺。


「!!」

「俺は、お前と遊ぶ気は無いからな。手早く終わらせてもらう。」

「小癪な…っ、強化してあるはずが…」


ラウルに続き、ジェイドがドラゴンの爪で2撃繰り出し、レスぺレンドラゴンを掃討した。

ラウルがジェイドに近づく。


「ジェイド殿とお見受け致します。モモを守っていただき、ありがとうございます。」

「あ、いやオレ達こそ、助けられた…って君はパラディンの…」

「名乗り遅れました、ラウルと申します。

早速ですが、今のパーティーの状況を伺っても?」

「情けない話、ここがどこかもわからないんだ。気がついたら仲間達と共に捕らえられたていて、勇者ヴァンに至ってはあの通り、意識が戻らない。相手は、魔人てやつか?ピーニャコルダにいた時に耳にはしていたが…」


不甲斐ないと言わんばかりに落ち込みを見せるジェイドだったが、すぐに切り替えラウルに指揮を預けた。


「今はこんなだが、オレ達も勇者パーティーとしてやってきたんだ。ここから脱出する術があるなら教えてくれ!」

「ええ。察するに、あの魔人は今まで対峙していた者達とは格が明らかに違います。俺一人では抑えられないでしょう。俺はモモの転移アイテムでここに来れました。そして今、仲間がここに向かっています。彼等が来るまでに魔人を捕らえておきたいですね。」


ラウルの一言にピクリと反応するブーゲン。背中に取り憑いた第三の目がブーゲンを支配し始めたのか、生気の無かった顔色が更にゾンビの様に変化していく。その右手を瘴気の陣に翳すと、左手から放たれる青黒い瘴気が瘴気の陣の術式を書き換え、タンザナイト色の陣に変化した。

陣の中央に渦巻くタンザナイト色の瘴気からズズズッと、魔物の左手が現れた。


「…っハァ…待たせたか?

さぁ、1人増えたところで、聖蛇の娘を護れるかなっ!?」

「…!べヒモズの手…左は魔法だったな…」


ジリっとラウルとジェイドが間合いをとる。

ブーゲンが左手で大きく弧を描きながらジェイドに向けて振り下げた。そこから放たれた衝撃波にジェイドが防御障壁を展開するも、押し飛ばされフィールドの壁に叩きつけられた。


「…っがっはっ…」

「ジェイド!!」


その衝撃で、ダイモニゾメノスの影の世界にヒビが入る。外界にいたダイモニゾメノス本体が影の世界を保てず灰と化していく。フィールドが崩れ落ち、現実世界が露わになった。


「…!ここは…」


まるでトンネルから外に出た瞬間の様に眩しい光が全員を襲う。アイラが降り注ぐ日差しに手を翳す。


「ここは、モルネード王国、モルネガングア山脈一番北のアンプナー山だ。中腹から雪山に変わる、吹っ飛んでしまっているが、どうやらクレパス内だったみたいだな。」


ラウルが防御障壁を展開しながら辺りをサーチする。

標高5000mのアンプナー山、眼下に広がる雲海。


「景色は抜群なのに…空気が薄い上に、瘴気…フィールドは最悪だな。」

「ふふ、あの狭い空間ではコイツの衝撃は耐えられまい。べヒモズ、お前はあのパラディンを殺れ。俺はこっちの銀髪を相手する。」


ブーゲンがターゲットをラウルに絞る。ラウルの後ろにはピユフィーヌとモモが攻撃体勢を。更に後方にアイラとヴァンがいた。


(ルキス、べヒモズは瘴気の陣から左手の肘から上が出ていない。以前シュピツ村で召喚された時もルーク師団長がべヒモズの手に襲われたと言っていたけど、手しか無い魔物なの…?)

『いいえ、べヒモズは本来ギガンテスより巨大な魔人獣と言われているわ。全体像をアタシも見た事はないけれど、魔獣の顔、二つの鋭い角と魔族の耳を持ち、毛深い人に似た身体と四肢を持つ。暴食で特に人間は大好物。ただ、完全体がアタシ達の世界には入れない様に、妖精王様が結界を張っているはずなんだけど…』


ルキスの解説にモモが息を呑んだ。


(とりあえず、まず私に出来る事は、この重い瘴気を浄化する事!!)

〝ピュリフィーン!!”


モモがL範囲で浄化魔法を詠唱。辺りに広がる瘴気が消える。


「モモ、助かる!」


 ラウルとブーゲンがぶつかり始めた。剣技と武術の凄まじい闘いに紫電が走る。

更にべヒモズの左手から火炎魔法がモモに向けて放たれた。


「!しまった、モモ!!」

「余所見している余裕なんてないぞっ、漆黒の騎士よ!」

「……っぐぁっ!!」


ブーゲンの膝蹴りがラウルの腹に減り込む。


「!ラウルっ!!」

「ダメよ、モモ!!下がって!!」

〝クリムゾン・エクスプロード!!”


ピユフィーヌが爆炎魔法でべヒモズの火炎魔法を相殺した。


「モモ、ブーゲンの相手は彼に任せましょう。私達が近づくと足手纏いになるわ。アイラ!ヴァンの状態は!?」

「意識はありませんが、生きてます!」

「なら、ヴァンは後でいいわ!アイラはジェイドの回復を!私がべヒモズを相手するわ!左手なら私の出番よ!」


収納魔法からピユフィーヌは杖を取り出す。


「よし、さっきは不思議な力で抑えられていたけど、アイテムを取り出せるわ!モモ!!」


ピユフィーヌがモモに小瓶を渡した。


「魔力回復ポーションよ、貴女の今のステータスなら1本で全快するわ!アイラも!!」

「ありがとうございます、ピユ!」


アイラはピユフィーヌから魔力回復ポーションを2本受け取ると1本を飲み、もう1本をポシェットに入れ、ジェイドの元へ走っていった。


 ブーゲンの衝撃波のダメージを防御障壁で軽減させたもののジェイドは壁に身体が減り込む程の衝撃を受け、一部骨折もしていた。立ち上がりはしたものの、フラつき姿勢を保てない。内蔵もやられたか、吐血していた。


「…ッハァ…ハァ…」

「ジェイド!」


ジェイドに駆け寄るアイラは、すぐに回復魔法をかける。


「ジェイド、これを。魔力回復ポーションよ。私が援護するわ…」


そこへピユフィーヌとモモが合流する。


「ジェイド、あの魔人をラウルが抑えているしている間に私達でべヒモズを片付けるわよ!勇者パーティーのパラディンが一発でのされてんじゃないわよ!?」

「あ…ピユ、結構ジェイド、ダメージ…」

「ほらっ、さっさと壁してよね!!」


回復中のジェイドの背中をバンッと容赦なく叩くピユフィーヌに、モモ若干の引き。


「はっ、その毒舌、相変わらず容赦ないなー…普段の調子戻ったな、ピユ。」


ピユフィーヌの喝を受けたジェイドは、参ったと言わんばかりに顔を歪めながら笑みをこぼした。そんな和やかな雰囲気もすぐに終わった。べヒモズの左手が次の魔法を繰り出そうと魔力を集中させていた。


「まずい、あの魔力、風属性だわ!!ジェイド!!」

「任せろ!」


ジェイドが盾を構え、防御障壁を展開。それに合わせてピユフィーヌが相殺しようと風属性魔法を詠唱。


『相殺ばかりじゃ倒せないわね。』

(…ルキス、あの瘴気の陣を破壊すればべヒモズも倒せるのかな?)

『え?』


べヒモズの風魔法とピユフィーヌの風魔法がぶつかり合い、辺りの岩が爆風により舞い上がる。


「ぐっ…すごい風圧だ、白魔法使いがいないのが痛いなっ。アイラ、立ってられるか!?」

「だいじょう…ぶ?」


アイラがモモの様子を案じ後ろを振り返る。するとそこで弦を引くモモの姿が目に入った。


「モモさん!?」


モモの矢が次第に具現化していく。浄化の魔力の集合体は金色に光輝いていく。モモが狙いを定める。その気配を察知したのか、べヒモズの左手が防御の魔法陣を張った。


『!!気づかれたわ、モモっ…』

「大丈夫、集中してルキス。私を信じて。」


モモの一切の迷いの無い集中した瞳に、慌ててルキスが矢に浄化の魔力を集中させる。ジェイド、ピユフィーヌ、アイラが見守る中、モモは矢を放った。


〝ホーリー・アロー!!”


〝破邪のカウス”から放たれた矢は、今まで放っていたものより数段早いスピードと瘴気を弾く威力を保ったまま、べヒモズの防御魔法陣を打ち砕き、左手の中心から陣を貫通した。

べヒモズの左手中指が宙を舞い、アイラのそばに落ちた。


「…!」


中指を失い、ダメージを受けたべヒモズの左手は、その場にズズーンと落ち、動かなくなった。ドクドクと流れ出る青黒い血。瘴気の陣も矢に貫かれ維持出来なくなっている。


 べヒモズの左手が倒れた衝撃音を耳にしたブーゲン。


「なっ!?馬鹿なっ、あのべヒモズをっ…!!」


べヒモズの左手が倒されたのを目にしたブーゲン、そこに斬り込むラウルだったが、青黒い瘴気が聖剣ソハヤノツルギに巻きつき妨害する。


「ちっ…邪魔な瘴気だな。」

「はは…、油断も隙もない奴だ、貴様剣士かと思っていたが、その立ち回りパラディンだな?ランクも上級者の様だ。俺も人間の時はパラディンだった。」

「…何故、魔人に?」

「もう全ては今更だ。失望したんだよ、この世界にも、自分の不甲斐なさにも。だから全てを捨て魔人になった!この地位に上り詰めるまでに、どれだけ苦渋を舐めたか。人間のお前に想像などつくまい!」


ブーゲンの渾身の一撃をラウルが腕をクロスさせ防ぐが、ミシミシと鈍い音を立て、後ろに吹っ飛ばされる。更にブーゲンの背中から出る青黒い瘴気が6本、ラウルに巻きつき自由を奪った。ジュウウゥゥと音を立て、青黒い瘴気が鎧を溶かしていく。


「…っ!?」

「ラウル!」


モモの目に、青黒い瘴気に巻き付かれ、鎧が溶かされていくラウルが映る。


(…っあれが瘴気なら…!)


モモは〝破邪のカウス”を構え、狙いを定める。いつのまにか目にターゲットを捉えるスコープスキルが開花していた。

狙いは、ラウルの両肩、両腕、両手…

浄化魔力が具現化した矢をラウル目掛けて放つ。


「ふっ、たかが一本切ったところで…」


ブーゲンがモモの矢を鼻で笑ったが、矢は6分割し、狙い通りにラウルを捕らえる青黒い瘴気だけを浄化した。浄化魔力は青黒い瘴気を這う様に伝い、抹消された。


「なんだとっ!?」

「モモ!ありがとう!」


モモは笑顔で応える。その時だった。べヒモズの中指がモモを捕らえ、身体を締め上げる。


「モモ!!」

「あっ!…っいっ…」


ミシッと骨の軋む音が響く。倒したと油断していたジェイド達の背後で、中指を失ったべヒモズの左手が怒りと共に風魔法【真空波】を繰り出した。


「きゃあああっ!!」

「づぁ!!」


ジェイドの防御障壁を破り、ピユフィーヌ、アイラの身体を真空の刃が斬撃を与える。

片膝を地につけたアイラの真上にべヒモズの左手が移動し、火炎魔法を放とうとし、アイラが死を悟った時だった。

雷撃が一閃、べヒモズの左手を一刀両断した。

べヒモズの左手が、モモを捕らえいた中指が灰になって消えていく。中指から解放されたモモを咄嗟に支えたのは。


「モモ!大丈夫か!?オレわかるか!?」


モモの目に、茶髪に金の瞳、赤いグランジにクリーム色のマントを羽織った


「…ダン、来てくれたのね…」

「おっと。」


安心したモモの足が今になって震え出し、よろけてしまう。


「…良かった、モモが無事で。シヴ、案内ありがとな!」


ダンがここまでラウルの魔力を辿った妖精シヴに礼を伝えると、シヴは笑顔で応え、ラウルの元へフワリと飛んで行った。


 「アイラ、大丈夫か?」


アイラに聞き覚えのある声がかかる。


「…え?」


俯き頭を手で防御する体勢のアイラの手を取り、身体を支え立ち上がらせたのは。


「ろ…ロイドさん?」


アイラの受けたダメージが回復していく。


「ジュウトもいまーす、お久しぶりですね、皆さん大丈夫ですか?」



















たくさんの作品の中、お読みいただき、ありがとうございます。

感想&誤字報告いただけると幸いです。

至らぬところがあるかと思いますが、どうぞよろしくお願いいたします。

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