表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

12/74

女王蜘蛛ナルボンヌ⑸

 アラネアの巣2層、ここでラウル一行は女王の間に続く魔法陣を見つけた。と、思った矢先、頭上に青黒い瘴気が渦を巻き集中した後、中から躰が黒、脚がオレンジに赤い瞳と額に第三の目を持つ大型のアラネアが現れた。その躰は青黒い瘴気を纏っていた。


「新手だっ、防御…」


ザックが防御障壁を展開するよりも早く、ラウル一行の足下に青黒い魔法陣が現れ、オレンジ色の竜巻に襲われたのだった。一瞬の出来事だった。体が竜巻にのみこまれ宙を舞ったかと思うと、ザック、ジュウト、ロイド、ラウル、クアラの順にアラネアから攻撃を受け、地面に叩きつけられた。その一撃は重く、ジュウトとクアラは気絶したまま動かず、ザック、ロイドは意識はあるものの、一時的なダメージが大きく立ち上がれない。そしてラウルは…。


(受け身を取ったが、ただの攻撃じゃなかった、物理的なものと…くっ…腕が痺れ…)


立ちあがろうと体勢を起こし、痺れる腕を見たラウル、受け身を取った部分が毒に冒され、青黒い色に変色していた。意識のあるロイド、ザックに声を掛ける。


「ロイド、ザック…っ」


ロイドは体は起こしているものの、酷く咳込み呼吸が荒い、胸に一撃を喰らっていた。

ザックは仰向けの状態で右脇腹に青黒い傷を負っている。そこは同じく毒に冒された部位。クアラは両足を、ジュウトは背中を、それぞれ毒に冒されていた。

すでに次の攻撃準備に入っているアラネア。オレンジ色の脚先に魔力を集中させ、8本の脚で円を描いている。


「させるかっ、ソハヤノツルギ!!」


ラウルは自身の剣をアラネアに向けて投げると、剣はガルーダに変化し、アラネアの片目を潰した。更に火焔を吹き掛け、準備していた攻撃を止めた。


「ギギィーーーーッ!!」


その様子を呼吸を整えながら見ていたロイド。


「ラ、ラウル…あの剣…どっかの国の宝剣じゃ…」


駆け寄るラウルに咳込みながら話すロイド、その背中を摩りながらラウルは赤紫色の実を差し出した。


「アルカの実だ、飲み込めそうか?多分毒素は消えるはずだ」


アルカの実を受け取ると、ロイドは口に含み何とか飲み込んだ。徐々に腕と胸の毒素が消えていく。ラウルはザックにもアルカの実を施し、3人のステータス異常は回復した。


「ザック、クアラとジュウトにもアルカの実を。俺とロイドでその間保たせる、頼むぞ。」

「わかった!」


ザックはラウルからアルカの実を受け取ると、先にジュウトに駆け寄った。


「アレは後どのくらい時間稼げるんだ?」


ロイドはクトネシリカに魔力を集中させながらラウルに問う。


「あと2分だな、まさか奥の手をここで使う事になるとは」

「…まだ色々持っていそうだけどな、おまえ。」

「終わったら酒でも奢るよ。」

「一番高いやつな。」

「ああ。」


 ラウルは微笑むと、自分とロイド達に防御障壁を展開、付与した。すると、ラウルの剣、ソハヤノツルギがガルーダから剣に変化し、鞘へ戻るとアラネアも地に脚をつけ、第三の目がギロリとザックを睨み、ザック達めがけて体当たりを仕掛けてきた。すぐさまラウルとロイドがカバーし、ロイドがクトネシリカを横一閃、宿るカンナが反応し激しい雷撃がアラネアに直撃。青黒い瘴気が直撃を邪魔するも、攻撃の7割のダメージは与えられた。片目の潰れたアラネアが体勢を崩し、脚を中心に脚先が黒焦げになっていた。続けてラウルが、強烈な回し蹴りを喰らわし、アラネアは岩壁に叩きつけられた。モモからもらった大地の女神、ヨルズの加護のおかげなのか、ラウルの攻撃も青黒い瘴気に邪魔されるも7割程度のダメージを与える事が出来た。この間に、ジュウトとクアラも回復し、ジュウトがラウル達に攻撃力、防御力上昇、魔力消費軽減、状態異常耐性の補助魔法をかけた。


「ギッ…ギィィーーー、コ…イツ…セ、イギョ…」


ダメージを受け、動きを止めていたアラネアが体を起こし、第三の目がグルンと白目をむく。と、共に青黒い瘴気も弾かれ、アラネアが人化した。


「…やぁ、聖女モモ。また会えたね。」


アラネアの視線の先、ラウル達の後方にモモの姿があった。


「モ、モモ!!」


ラウルはすぐにでもモモに駆け寄りたかったが、今アラネアとの間合いを崩すわけにはいかなかった。クアラ達もサッコンに連れ去られたと聞いていたモモの無事な姿を見て安堵した。


「モモ、一人で先に行ったら危ないよー…」


モモに続いてペルとルキスが姿を見せた。


「フッ、まさかおまえも無事とはな、ウッコン。サッコンを殺ったのか?」

「…ああ、やむなくな。フォニュリアードも闇の力に…?」

「こんな力に俺が屈するとでも?俺は魔族と魔物のハーフだからね、あの魔族の禁呪は完璧じゃなかったから、手こずりはしたけど、元通りだ。…第三の目以外はね。」


ラウル達の視線はモモ一点に集中した。


(…え?…情報が複雑すぎて追いつけねぇ…)と、ザック。

(一緒にいるの、ウッコン?敵じゃなかった?)と、クアラ。

(モ、モモ様がサッコンを倒したのか?)と、ロイド。

(闇の力は魔族が関係しているのか…)と、ラウル。

(なんかすごーい、モモ様ー…)と、ジュウト。

(ーーーーーって、モモ様の身に何が起きた!?この展開!?)と、全員の心の声が一つになった。

フォニュリアードは黒焦げに、なっている右腕を自分で切断すると、すぐに再生させた。


「ウッコン、おまえが大事なのはモモ?それとも、ここにいる全員か?」

「…ボクが守るのはモモ一人だけど。」


ペルはモモを自分の後ろに隠す様に立つ。


「本来なら、それは我々にとって完全な裏切りだ。が、俺の女王ナルボンヌへの忠誠もサッコン程ではないからな、モモを渡せばおまえの命は見逃してやるよ、ウッコンどうだ?わかっているだろう。おまえじゃ俺からモモは守れない。」

「フォニュリアードの狙いは聖女の血だろ、何でモモにこだわるの?他にも聖女はいる…」

「彼女が数少ない聖女の中、上位…いや最上位のランクだからだ。涙一滴で力が漲る回復力、普通じゃない。」

「…モモの事、泣かしたの?」

「事実上泣かせたのはサッコンだろ?」


その場の空気に緊張が走る。確かにフォニュリアードの言う通り、幼い頃から一緒に暮らす中で弟分であるウッコン達が喧嘩で勝てた事はなかった。


「…それでも、モモは渡せない、ボクのご主人様だしね。」

「ご主人様だと…!?隷属契約したのか…じゃあ消えてもらうしかないな、ウッコン!!」


フォニュリアードは地面を踏み込むと、一瞬でウッコンとの間合いを詰め、殴りかかる。ウッコンは両腕で受けたが、その衝撃は凄まじく重く、岩壁に体がめり込み、腕の骨が軋んだ。


「受け身は昔に比べて上手くなったか?」


フォニュリアードをモモから遠ざけたいペルは、右手に魔力を集中させ、無数の毒針攻撃を仕掛けると、フォニュリアードは避けながら後退して行った。

ペルがフォニュリアードを相手にしている間、ラウルがモモに駆け寄る。


「良かった、無事で。ケガはなさそうだな。」

「うん、大丈夫。ペルが守ってくれて、ラウル達こそ大丈夫?」

「まぁ、何とかね。それよりも聞きたい事がいっぱいだよ、モモ?」


ラウルに苦笑いするモモ。

そこへフォニュリアードがいくつもの魔法陣を展開。


「な、何だ?この数…」

「ザック!防御急げ!!」


ラウルがザックに叫ぶも間に合わない。

範囲がフロア全体に及ぶ事を感知したペルは、蜘蛛の巣状の結界を範囲に展開、大爆発が起こった。


「おまえが守るのはモモ一人じゃなかったか?」

魔力を大幅に消費したペルの呼吸が荒くなる。

「そう、だっけ…っ?」

「ペル!!」


モモとルキスが心配そうにペルの名を呼ぶ。


「元よりおまえが人間に肩入れしている自体気に入らなかった。人間は我々の餌に過ぎない。その中でも聖女の血は極上ってだけ。隷属契約などして、おまえに何のメリットがある?」


フォニュリアードが襲い掛かる。


「…っ、ちょっと恩があるんだよっ…!!」

「そんな恩など人間が覚えているものか、バカバカしいっ!」


フォニュリアードの拳が腹にめり込んだ。


「がはっ…っ」


ペルは血を吐きながらも、フォニュリアードの腕を掴み、糸を硬化したナイフで反撃に出るが、逆にナイフを奪われ右掌を地面に串刺しにされてしまった。


「ーーーーーっ…あ…」

「ペル!!」


ペルに駆け寄ろうとするモモの腕を掴んで離さないラウル。


「離してラウル!!ペルが殺されちゃうわ!!」


ラウルの手を振り払おうとするがガッチリ掴まれてびくともしない。


「所詮、おまえはここまでだ、ウッコン。何も守れない…?…っぐふっ…」


天井に蜘蛛の巣が張られ、その中心から硬化した鋭い糸の刃がフォニュリアードの核を貫き、それはペルの腹にも達していた。


「きゃ…っ」


クアラが目を背ける。モモも口を手で覆い言葉が出ない。


「…じ…自分…ご…と?」

「こうでも…しないとっ、あんた、倒せないでしょ…っ」


フォニュリアードの体内で核が砕けていくと共に、足元から灰になっていく。


「おまえさえ…邪魔しなければ…今ごろ…俺はっ」

「…聖女の血で、不老不死に…なれるのは、純血の魔族…あんた、ハーフじゃん…」

「おまえに何がわかる…魔族でも…魔物でもない…ハーフの生き地獄が…

(産まれた当時は魔力が溢れ過ぎてコントロール出来ず暴走が過ぎて親はそんな俺を扱えず捨てた。魔力はあるのに使えない、使い方もわからない、そんな俺を拾ったのは女王ナルボンヌだった。彼女に魔力のコントロールを教えてもらえるまで、俺を見る魔物、魔族の目は冷たかった。狩も上手く出来なかった俺は、ひたすら自分の巣に架かる獲物を待った。飢えを凌ぐ為に、誰かの食い荒らした餌の残りを口にする日々…)

俺を、ゴミみたいに見る奴らを…消してやりたかった…」


フォニュリアードは胸まで灰になっている。


「…ボクも、アルビノだったが為に、捨てられたって…思い出したよ。色々、イヤな事はあったけど…そんなボクでも良くしてくれた人間がいたんだよ…」

「…俺は、そんな単純じゃねー…結局ナルボンヌも…魔族…と…」


そう言いながら、フォニュリアードは消えていった。


 ペルは一息つくと、腹に刺さった刃を技を解いて抜き、右掌を貫通したナイフに手をかけた時、モモとジュウトが駆け寄ってきた。


「ペル!大丈夫よ、すぐに治してあげるからっ」

「爆発の時、守ってくれてありがとー。ぼくも治すの手伝うね。」

「ジュウト、ありがとう…。私は右掌を治すから、比較的軽症のお腹をお願い。」


ジュウトは頷くと、すぐに治癒、回復魔法をかけた。そこへルキスも人型で駆け寄ってきて


「ペル!あんた自分ごと刺すとかあり得ないから!!いくらモモを守ろうって言っても、あんたに死なれちゃ…」


目に涙いっぱいのルキスに、ペルは微笑んで伝える。


「ごめんね、ルキス姉。心配してくれてありがとう。」


ルキスはまた小さくなって、ペルの胸の上で号泣。そんな二人の姿を見たモモは、クスッと笑うと、ルキスの再生能力と共に貫通したナイフを抜き右掌を完全治癒、体力も完全回復させた。

ペルは立ち上がると、周りを見渡し、ラウルと目を合わせた。


「モモ、ジュウト、ありがとう。で、ここにいる全員がモモの仲間なんだよね?アラネアの女王ナルボンヌを倒しに来たの?」


ペルの言葉に、モモが不安な表情を浮かべた。


「そうだが…ペルと言ったな。先程の話を聞くからにキミは本当に…」


ラウルが疑う様に問いかけると、ペルは胸にある契約紋を見せた。そのチラ見せの筋肉美に、クアラ鼻血。


「…それがモモとの契約紋…さっきの相手は聖女の血を狙っていた様だか…」


ラウルの問いにモモなペルの前に立ち、割って入る。


「違うの!ペルは私の血が狙いじゃなくてっ…」


モモがそう言いかけた時、ペルが肩に触れ、アイコンタクトした。


「失礼、自己紹介が遅れたね。ボクはペル、タランチュラ種の魔物、ブラッチペルマのペル。この名前は昔、ラダンディナヴィアのギルドにいるリンツに付けてもらったもので、ボクが恩返ししたいのはリンツなんだ。モモには助けてもらったのもあるけど、この世界の処世術も無さそうだったから守ってあげたくて隷属した。」

「…処世術…確かに…。」


ラウルはモモを上から下まで見て、何故か納得した。


(何!?なんなのー!?)


モモはラウルとペルを交互に見る。因みにクアラもペル、リンツでイケナイゾーンに突入。


「俺はパラディンのラウル、さっきモモとペルを治癒した白魔法使いのジュウト、手前が雷剣士ロイド、奥がパラディンのザックに黒魔法使いのクアラだ。で、このアラネアの巣の女王討伐についてだが、行うつもりだ。何か、アドバイスでもあれば有難いが?」



 同じ頃、地上、西の森の中で魔人を相手にしていたレンダー、カーティス、ルークは、シュア援護の下、見事魔人討伐に成功していた。

 3人纏めてかかって来るといい。という台詞に、魔人との戦闘経験はなかったが連携して攻撃する内に、魔人が第三の目と、胸への攻撃に対して防御が堅くなる事を見抜いたルークが、そこを集中して攻める様にレンダーとカーティスに伝え、レンダーの胸への正拳突きと、カーティスの

〝アイシクル・ストライク”で、第三の目への同時攻撃。魔人を倒した。どうやら、第三の目が脳への指令を行い、心臓はなく、魔物同様核で動いている事が判明し、討伐に成功すると灰になって消えていく。だが、この魔人は全てが灰と化す前に何かを呟き、瘴気の陣に最後の力を送って消えた。


「何を…っ」


すると、瘴気の陣から3体の巨大な一つ目トロールが現れた。騎士達がその大きさに驚愕。1体ずつ目の色が異なり、青、赤、黄で、青色の目を持つトロールは竜巻を起こし、赤色の目を持つトロールは炎で攻撃、黄色の目を持つトロールは、大地を揺らした。3体の攻撃に成す術がない騎士達、魔人討伐に力を使い切っていた4人。


「あいつ、最後になんてモノ出しやがるっ…」


カーティスが息を切らしながら、大きな足音を立てて向かって来る3体を見た。すると、トロールの上空から背後に降り立った影が3体を横一閃に一撃。


〝イマージョン・ラスト”


3体の体が上下真っ二つに斬られ、上半身が水に襲われ、そのまま窒息し、巨大な核だけが、3つ残った。そこに現れたのは…


「ダン!!」





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ