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北天のアリス  作者: 埼山一
第三章 帰郷~再会
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第三章之三 どこか知らない山の奥で(前編)

アザミ ……主人公兄妹(きょうだい)の保護者。兄妹を父と()わせるために引率(いんそつ)中。出番ないです。

ナライ ……主人公・兄。真・主人公。賊徒(ぞくと)から妹を護って負傷するも回復。出番ないです。

カヤ  ……主人公・妹。兄よりも要領(ようりょう)がいい。出番ないです。

黒雲(くろくも)  ……アザミの愛馬。黒い方。出番ないです。

疾風(はやて)  ……ナライの愛馬。茶色い方。出番ないです。

はるかぜ……カヤの愛馬。白い方。出番ないです。


柴馬(しま)  ……ナライを治療するため、しばらく滞在していた村。

深沢(みさわ)  ……主人公兄妹の父が賊徒討伐(とうばつ)のために()めている村。


 アザミたち一行(いっこう)木立(こだち)の下で昼休憩(ひるきゅうけい)を取っていた丁度そのころ。

 それが起きたのは、とある名もない山の中の岩壁(がんぺき)を利用して作られたあばら屋の中でだった。


「うがあああああああっ!」


 突然咆哮(ほうこう)を上げたのは一人の男。

 その男は目を()ますなり、家の壁代わりになっている岩を思い切り蹴り付けていたのだ。


「んがっ!うがっ!」


 何がそんなに憎いのか、加減もせずに蹴りまくる男。

 ガッ、ガッ!――と、壁を蹴り付けるたびに途切れる咆哮が、この男の本気で壁を蹴っているのだと教えてくれる。

 しかしいくら本気を出して蹴ったところで、ただの人が岩の壁をどうにできるはずもなく。


「うぐぐう……!うがあっ!」


 まったくびくともしない壁に苛立(いらだ)ちを(つの)らせた男は、いよいよムキになったようだった。

 そして男がもう一度蹴りかかろうとしたその時――


「おい。いい加減(かげん)にしないか。」


 男の背後から、その愚行(ぐこう)(とが)めるうんざりした声が聞こえていた。




「ふん。まったく、少しぐらい静かに出来ないのかい?」


 そう言って、男の愚行を止めたのは一人の女だった。

 その女は小屋の入口に突っ立って、迷惑(めいわく)そうな視線を男に向けていたのだ。


「ああっ!?」


 しかしそんな女を(にら)み返した男。

 その視線は、「文句がある奴は誰だろうが殺す」と言う強い殺意(さつい)を含んでいた。

 しかしそんな視線にも、女はまったく(ひる)む様子を見せず……。


「だから静かにしないか。こうも(さわ)がれるとそこいら中に聞こえちゃって(かな)わないんだよ。」


 女はそうやって文句を垂れながら、何の遠慮(えんりょ)もなく小屋に入って来ていたのだった。そして背中の(かご)を降ろすと、備え付けの(かめ)の水でのどを(うるお)し始める女。


「っんく……ふう……。まったく嫌んなっちまうねえ、もう秋だってのにさ……。こんなに暑いと、ちょっと食いモン探しに出るだけでもこのザマさ。」


 女は一息つくとそんなことをのたまっていた。

 そして水だけじゃ火照(ほて)りが取れないのか、着物の胸元をパタパタさせ始めると、そのまま板敷(いたじき)まで上がり込んでくつろぎ始めるのだった。




「ん?何見てんだい?まさかアンタ、そんなにアタシの()()が気になるのかい?」


 くつろいでいた女は、相変わらず殺意()じりの視線を向けてくる男に気が付くと、挑発するように胸元をグッと引っ張って見せていた。

 ――この不敵(ふてき)な女。ぱっと見ではちょっと評価しにくい不可解(ふかかい)格好(かっこう)の女だった。

 (とし)はまだ若く、見た目もまあまあ悪くはないのだが、そう言う強みを台無しにしている点が多すぎるのだ。

 特に着ている物が(ひどい)い。

 女の着物はそのあちこちがほつれるか()いであるかしていて、「着ているから着物。じゃあ脱いだら何?ボロキレ?」そう言いたくなるような服なのだ。

 さらに女の両腕と左脚はさらしでぐるぐる巻きなっていて、それが原因という訳でもないのだろうが、何か常人(じょうじん)には()ぎなれない刺激臭(しげきしゅう)を放っている。

 そんな(なり)だと言うのに、不自然なまでに手入れの行き届いた黒髪と、その髪に(おお)(かく)された(ひとみ)が放つ妙に知性的な光が、ますますその評価を難しくさせていたのだ。




「ああ、あっついあっつい。もうたまんないよ、こりゃ。」


 女がそうやってくつろいでいる間も、男は変わらず女を睨みつけていた。

 しかしそんな男のことなんて、ちっとも気に()める様子のない女だ。

 だからなのか、男はもう一歩踏み込んだ威嚇(いかく)をして見せたのだが……。


「おらあぁんっ!?」

「アンタね……いい加減うるさいってのが分かんないのかいっ!」


 女は男の威嚇よりもはるかに大きな声でやり返していた。

 男の威嚇は(かえ)って女を怒らせてしまっただけだったのだ。


「まったく……やっぱり気まぐれで人助けなんてするもんじゃないね……。」


 そしてそのまま言葉を続けた女は……。


「行き倒れてたアンタを拾ってからさあ……アタシはもうずっと碌に眠れてやしないんだよねえ。だってそうだろ?アンタが昼も夜も関係なしに、起きてりゃあずーっと暴れまくってくれるんだもん。そんなんで寝ろって言う方が無理じゃないか――」


 一度愚痴(ぐち)り始めた女は、もう自分でもどうにもならないぐらいに不満(ふまん)を吐き出し続ける機械(きかい)になったのだった。




 それからの女の愚痴は、(あらし)(ごと)き勢いを持って吐き出され続けていた。


「――大体なんなのさ?人がせっかく助けてやったってのに今日まで礼の一つも言わないってのはさ。いやね、アタシだって別に礼を言って欲しくて助けたわけじゃないんだよ。そこんトコは間違えないでほしいんだけどさ。でもね――」


「――アンタさ、別に言葉、(しゃべ)れないってわけじゃないんだろ?だったら何か一言ぐらい喋ってくれてもいいじゃないのさ。それがなんだい?口を開けばガーガーガーガー……。あれ、なんなの?威嚇?なんで?アタシ、アンタを助けたんだよ?つまり恩人だよ、アンタの?なのに威嚇って。恩を仇で返す気なの?ダメだよそれは――」


「――アンタさ、それじゃ人じゃなくて(けもの)。人じゃなくて獣じゃないか。え?なんで二回言うのかって?大事なことだからに決まってるでしょ。それよりもアンタさ――」




 こんな調子で、一度流れ出た女の愚痴は(とど)まるところを知らなかった。

 しかしそんななんの利益にもならないことを、いつまでも聞いてくれるような男ではなく……。


「――あ。ちょっとねえアンタ、聞いてんのかい?どこに行こうって――」


 ドガッ!ガランガランッ!――男が蹴り飛ばした(たな)(はげ)しい音を立てて(くず)れ、女の言葉を(さえぎ)っていた。


男   ……名前出せなかった。あぎじゃびよい(なんてこったい)。次回出します。

女   ……名前出せなかった。あいえーなー(なんてこったい)。次回出します。

アザミ ……主人公兄妹(きょうだい)の保護者。兄妹を父と()わせるために引率(いんそつ)中。次回も出番ないです。

ナライ ……主人公・兄。真・主人公。賊徒(ぞくと)から妹を護って負傷するも回復。次回も出番ないです。

カヤ  ……主人公・妹。兄よりも要領(ようりょう)がいい。次回も出番ないです。

黒雲(くろくも)  ……アザミの愛馬。黒い方。次回も出番ないです。

疾風(はやて)  ……ナライの愛馬。茶色い方。次回も出番ないです。

はるかぜ……カヤの愛馬。白い方。次回も出番ないです。


柴馬(しま)  ……ナライを治療するため、しばらく滞在していた村。

深沢(みさわ)  ……主人公兄妹の父が賊徒討伐(とうばつ)のために()めている村。


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