第二十三話 夢――目標 Ⅲ
「カスミ先生、それは本気ですか」
「本気よ。 この国を変えるの。 ……実はね、前々からどうにかできないかなって考えていたの」
「でも今日、やっと、実行できることを確信したわ。 これも、ソナちゃんとアスナちゃんのおかげね」
ああ、あの違和感は納得ではなく確信だったのか。
「具体的な計画はあるってことですか」
ハジメが問う。 ……乗り気なようだった。
「それなのよねー……。 まだ道具とか、そういう準備ができていなくて……」
「それはそうですよね……。 結構時間はかかりますか? 」
ソナが言う。 そりゃ時間はかかるだろう。
国を変えるということは、つまり独裁的な有安の政治を止めるのとイコールだろう。 それには大賛成だ。 一刻も早くこんな国は変えるべきだと思う。
ただ、それはお引越しとか転校とかそんなんじゃ比にならない変化である。 大変なことである。 規模が違い、責任も違う。 そんな大変なことをするためには多大な時間が必要になってくる。 ……が。
「それがそうでもないのよ。 あと……」
という思いもよらないカスミ先生の声。 ……そうでもない?
「……なるほど。 じゃあこれは……」
と、このようにカスミ先生をはじめとするソナ、ハジメはどんどん話を進めていく。 蚊帳の外となった俺は唖然と、その小さくて超巨大な会議を見ることしかできなかった。 ……わけではなく、蚊帳の外の人物はもう一人いた。
「……ねえ、ユウ」
アスナが話しかけてくる。
「……な、何だ? 」
「大前提としてあなたが私と同じ考えを持ち合わせているとして話すけれど、いいかしら? 」
「ああ。 100%同じだ」
「人数差的に考えてあっちの方が優勢なのだけれど、私たちの考えの方があっているわよね? 」
「……俺もそう思う」
それは、“できるわけがない”という考えだった。 これがもし失敗すれば、もちろん死刑だろう。 俺ら一般人に何ができるのだ。 相手は国である。
いつだって何かを変えるときには力がいる。 始めるときも然り。 その力というのは“信じる力”である。 信じるだなんてありきたりな言葉、俺は好きではない。 ただ、どんなものにだって信じる力はいる。 どんなものにだってついてくる。
変えることでその後がきっと良くなると信じる力。 それを実行するための計画を信じる力。 人を信じる力等々。
特に、人を信じるときの力の消費量は大きい。 その消費量が少なくて済む人ほど、無論負担が少なくて済む。
それは俗にいう友人、仲間である。
そして今回の目標――国を変える。 こんな超巨大な計画にどれだけの“力”を使うのか……。 と思ったが。 改めて、ここにいる人の表情を見る。
……どうやら、残念ながら、その“力”の消費量は少なくて済むようだ。 少なくとも人に限っては。 全く、カスミ先生も突拍子もないことを言い出す……と思っていたが。
「だが、まあ、悪くはないんじゃないか? 」
それに流されている俺も、残念な人だった。
「何せ、もしそれがうまくいったのなら、俺の夢――目標も達成するわけだからな」
「……1%もあっていないじゃないの」
アスナはガクッと肩を落とした。




