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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

時空物語・短編

自由猫・短編・IF

作者: 黒田明人

 

 何ともまあ、滅びの世界とでも呼べば良いのか。


 あちこちに魔物ばかりが横行しているが、人の姿はあんまり無い。

 確かに各所に避難所みたいなところはあるものの、かつてのような世界のトップのような勢いが無い。


 物資もかなり困窮しているようで、こういう事態になってどれぐらい経過しているのか。

 世界を探ってみると、あちこちの倉庫には手付かずの物資が大量にあるものの、魔物だらけだから取りに行けないのが現状のようだ。

 いかにレトルトと言えども5年で風味が落ちるだろうに、取りに行かないとそのうち腐る事にもなりかねない。

 缶詰もまだ膨らんでないところから、そこまでの年月が経過したようにも見えない。

 製造年月日から推測してみると、どうやらこういう事態になったのは半年前ぐらいらしい。

 それ以前の製造日時はあるものの、それ以降が無いからだ。

 正確な日時は分からないものの、春先に起こった事件のようだ。


 これから寒くなるというのに、暖房器具はあるんだろうか。


 とりあえず取りに行けそうにない物資の回収を始める事にした。

 管理がどういうつもりで放置しているのかは知らないが、どのみち風化するならもらっても構わないよな。


 専用フォルダーを拵えて、この世界専用の倉庫空間を設置して、そこに様々な物資を入れていく。

 こういうのがやれるから自前の倉庫は便利なのだが、それはともかく様々な物資を大量に確保する。

 そのうち避難所に寄付してやるのも良いが、シナリオはどうなっているんだろう。

 誰かが救済するシナリオの邪魔はしたくないので、とりあえずは回収を重点的に行う事にした。


 バッテリーも腐食する前に回収し、電池も自己放電する前に回収する。

 酒類も缶が朽ちる前に回収し、食料品も可能な限りは回収する。

 畑の作物で残っている物は回収し、果物が実っていれば回収する。

 稲穂があれば回収し、米穀倉庫の中身も回収する。

 どれだけ魔物がうろつこうと、精神体で回収するオレの邪魔は出来ない。


 シナリオはどうやら関東から始まっているようで、まだまだ都内で何かしているようだ。

 となると地方に何時流れるのか分からないし、もしかしたら流れないかも知れない。

 それでも数年後にはどうなるか分からないので、その頃に行っても腐っていそうな物資は回収する事にする。


 カビた菓子パンの棚とか使い道も無かろうし。


 普通のパンはもうダメになっていたけど、ロングライフなパンはまだギリギリいけるようだ。

 賞味期限は過ぎていそうだけど、こんな事態なら腐ってなければ問題もあるまい。

 災害用の食品はまだ余裕なので、それらも含めて食えそうな物を回収していく。


 確かにオレの倉庫には大量の食料品もありはするが、それを出すのはこの世界の物資が尽きてからで構わないだろう。


 どれぐらい滞在するかにもよるけど、最低1年は過ごして欲しいと言われているので、その対策で様々な物資を集めておこうと思っている。


 調査は確かに終わったけど、相談役と言うか手伝いと言おうか、そういうのをあちこちの世界でやってくれと言われ、この世界にやって来た訳ではあるものの、体験自由何しても自由だけども世界は滅ぼさないでくれとだけ言われている。


 もう滅んでいるから滅ぼせないと言いたいが、ちょっとしたシナリオが進行しているらしい。


 システムには概要しかないのでオリジナルシナリオと思われるが、やはり流れるままが基本なので特に介入の予定は無いらしい。


 どうやら無限倉庫という名のスキルを持った存在を据えて、世界がどうなるかの検証をしているらしく、彼がどのような生き方を選ぶかは自由であり、人助けをしてもしなくても特に問題は無いらしく、魔物に殺されても構わないという、かなり大雑把なシナリオになっていた。


 今は自販機活用の自由落下魔物討伐作戦をやっているようで、あちこちに潰れた自販機が転がっており、彼の作戦が順調なのを知る。

 どうやら魔物を倒したら食糧が出るらしく、彼が滞在している避難所の食糧は彼が半分以上は供給しているようだ。


 恐らく依存されて身動きが取れないのだろう。


 移動も徒歩か自転車になっているようで、都内からおいそれとは出られないようだ。

 メインを高校生にしたのが拙かったのか、車の免許持ちじゃなければ放置車の活用も巧くいかないようで、自転車での移動範囲も知れているところから、活動範囲外の物資が放置になっているんだろうな。


 ざっくりとしたシナリオでは、車の練習をして北陸とか関西とかに行く可能性もあるように、様々な避難所での役割も用意されているようだけど、行かなければ何とかするしかなく、どうしようもない避難所は閉鎖に追いやられているようだ。


 そうして避難所は統括されてますます食糧供給が足りなくなり、餓死する者達も出るように……。


 ◇


「配給が来たぞ~」


 見かねたので食糧を供給する事にした。


 だって主人公が都内から動かないんだもん。


 体力の無い者達が動く気力も無くなっているのに、到来するはずの存在が来なければ餓死するしかない。

 それは可哀想なので、あちこちの避難所に物資を放り込んでおく。


 下手に会うと依存されそうなので、配給は来たもののすぐに帰ったと思わせておく。


 その代わり、あちこちで集めた足の早い食料品を中心に、後は畑で採れた野菜なども置いておいた。

 今後は栽培する者もいないだろうから荒れるに任せるだろう畑でも、春先に植えた野菜の収穫は可能だったので大量に集められたけど、来年からはもう食べられない可能性もある。

 だから避難所が学校とかの場合、グラウンドを畑にしている所もあった。


 置いてきたジャガイモも半分は種芋になるかもな。


 こういうのも本来なら主人公の役割なのに、どうして都内から出ないんだよ。

 別にもう警官もいないんだし、無免許運転に挑戦しろよな。

 無限倉庫に大量に入れて、トラックでも乗って配給ごっこでもやれば良いものを、親兄弟が引き留めるわ友人連中も引き留めるわ、女連中が色気で引き留めるわでどうにも身動きが取れない様子。

 精神を探ればもうこのままでも良いとか諦めの胸中にあり、どうにもシナリオが放棄されている様子。


 それならそれで代わりに配ってやろうな。


 ◇


 世界はあるけど人がいないこの世界では、日本でシナリオが終わりになるっぽい。


 なのにそれ以前の状況なので、可能な限りの配給はやっておいた。

 システムの情報では日本全国で100万人という、1パーセントの生存率での開始になっていたようだけど、今の人数はその半数ぐらいに減っている。


 記録を見てみると、お花畑がまず消えて、頭の堅いのがその次に消えたらしく、今の人員はこの状況に適応した人員というのが分かる。


 死亡した人は死体を残さずに消えるようで、自動浮遊素子化がシステムに組み込まれているようだ。


 まあそれぐらいしないと、こんな世界では歪の発生も派手だろうけど、浮遊素子がふんだんにあればその修復も楽だろうな。

 俯瞰はひたすら歪の修正に明け暮れているようで、うなぎとあなごを貸し出しておいた。


 それも修練の一環だし。


 さて、魔石から電気を取り出す魔導具を配りますかね。


 ◇


(どうやら無意識の拒絶も想定の範囲内で収まりそうですね。確かに魂の供給はありがたいですけど、メインがシナリオから逸脱してしまい、シナリオを止める訳にもいかず、どうしようかと思っていたのですが、メインの代わりに人員の保全をしてくれたようで、後のシナリオに繋げられそうですよ。苦肉の策の最中に到来してくれたのは盟主の意向だとは思いますけど、実際の助けは本人の意向でしょう。本当に助かりますよ。しかも俯瞰の手助けまでしてくれるとは。使徒でしたか……その心意気も盟主に似通っているのですね)


 さて、物資は全て均等に供給したし、歪の発生も落ち着いたし、あれから3年は過ぎたからもういいだろう。


 神様、そろそろ世界を出るよ。


 ◇◇


 神様に連絡したら別の案件を頼まれた。


 シナリオをやっていると世界が不安定になるからその対策を頼まれた神様が、オレに依頼を出した訳で。

 それは良いんだけど、行ってみて驚いた。


 迷宮探偵「こいつが犯人です」

 迷宮警察「連続殺人の容疑で逮捕する」


 いやね、ちゃんとした動機とか証拠とかあればいいよ。

 そんなの関係なしに状況証拠のみで犯人と断定して、またそれを警察が鵜呑みにして逮捕するってどうなんだ。


 しかもだよ、そいつが犯人だとすると、アリバイ的に無理があるとか、他に怪しい奴がいるにも関わらず、捕まった奴は罪を認めてしまうんだ。


 つまり、犯人にされた人は身体を乗っ取られた状態で自白をし、本来ならあるはずのアリバイも無かった事にされ、ライセンスも持っていた事にされたうえで、犯行当日に当該迷宮に潜っていた事にされちまうんだ。


 その無意識の拒絶、いかばかりか。


 調べてみたのは女の子だったんだけど、夜のニュースで殺人事件ってのをやっていて、家族との団欒でそれを見ていたにも関わらず、肝心の家族の証言に彼女は含まれず、当日は外出中だったって証言するんだ。


 そんなのをあちこちでやるもんだから、世界拒絶無意識が干渉し合って伝播して、嫌でも世界は不安定になるわな。


 大体さ、シナリオメンバーに最初からライセンスを受けさせておけば良かったのに、そういうのを無視して主人公の思うままに冤罪を発生させ、それの辻褄を管理が無理矢理合わせていたのがこの世界だ。


 神様に報告したら呆れていたよ。


 ◇


 結局、最初から中途半端な設定と途中での管理の茶々が原因として、シナリオをやり直す羽目になり、しっかりと道筋を付けたうえで、主人公を俯瞰にやらせる事で合意。


 まあ、新人管理には熟練俯瞰が付くんだから、主人公をやりながらでも歪みの修復と記憶のフタはやれるだろうと言う事で、管理には余計な事をさせないようにと、神様からの直接通告をしてもらったんだ。


 使徒の提言じゃ聞いてくれなくてさ。


 そんなこんなでとりあえず終わってさ、最後に一言文句を言ってやろうと管理空間に行ったらさ、世界内存在の分際でどうのこうのと煩かったから、神様へのご挨拶とばかりに連れて次元転移してさ、帰りは知らぬとばかりに逃げちまったんだ。


(やんちゃな彼も少しは成長したみたいですね。実力で知らしめる方向に変わったのなら、それをどうこう言えませんか。ですが、世界内存在でのその実力は、殆どありえないですよ。本当に、早く上に登って欲しいものですが、中々その気にならないみたいですね)


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