イケメンからフツメンへ
乙女ゲーム。
ゲームの中でイケメン達と恋愛をする。
ただこれだけ。一見すると生産性のない現実逃避に思われるこのジャンルに、全てを費やした男がいた。
「はぁ、今日もトウワ様は麗しゅうなぁ」
佐々木ケイ。真っ暗な部屋で液晶と向き合い、そこに映る1人の女性に愛を語りかける変態である。
都市部にある名門大学へ入学し、一人暮らしをする大学2年生であるケイは、地獄の受験戦争を勝ち上がったエリートであった。
運動神経も良く頭も良い。加えてすこぶる整った顔をしていたケイは、高校時代モテにモテまくっていた。
ケイは自分の顔の良さを自覚し、尚磨きをかけるため勉強とスポーツに人一倍取り組んだ。
ついた渾名は『王』。
あまりに出来すぎたこの男に、人は羨むことも忘れただただ敬服したのである。
と、ここまでが高校時代の話。
一人暮らしを始める際、これまでの人生であまり触れてこなかったゲームを趣味にしようと思い立ち買ってみた。
高校時代からの友人である御影という男にオススメされ手にした『俺様キングダム』というアホみたいな名前のゲームは、メインターゲットを女性に絞った乙女ゲームである。
生まれて初めての乙女ゲームであったが、登場する様々なイケメン達のどれもが俺様キャラというカオスな状況に混乱していた。
これが女性向けゲームであるということを知らない無知なケイは、何故これがそこそこ売れているゲームなのか理解出来なかった。
しかしケイの性格上、途中放棄はありえない。
1人、また1人とイケメン達を攻略していく中で、運命と巡り会う。
「見つけた」
以来1年間、授業とアルバイト以外部屋から出ない生活が続いている。