完成
ひとまず刀身は完成した。……まぁ、本来はもっと丁寧に磨いたりといった作業が必要になってくるのだが、ちゃんと使える状態にはなった。
幸いと言うべきか、刃文や地肌も良い感じには見えるし、手入れでテンションが下がることもないだろう。
翌日。今日は最低限、武器として使えるところまで、つまり、拵のうち柄や鞘といった部分を作ることになる。
「そういえば、〝薄氷〟の拵もちゃんとしてやらないとなあ」
いつも佩いているアポイタカラ製の刀、〝薄氷〟にも柄や鍔や鞘はあるが、漆が入手できなかったので、未だ白木のままである。
今住んでいる王国や、あるいは帝国にはあまり鞘を装飾する風習がない。
もちろん、王侯貴族が帯びるようなものは貴金属を含めた飾りがふんだんに盛り込まれているが、そうでないものはせいぜいが木製の鞘に革を貼るか、あるいは固い革で作ってしまうかだ。
おそらく北方は湿度が高いので、外側から鞘へ湿気が侵入するのを防ぐ必要がある一方、こちらはそこまで高くないので、剣を納めることができれば取りあえずは事足りるのだろう。
ともあれ、〝薄氷〟も含め、漆塗りの鞘を作るなら、カミロには早いうち漆を入手してもらうように頼んでおかないとな。
どうやらカレンのルートで北方のものはそこそこ手に入りやすいようだし、平紐や鮫皮も一緒に仕入れてもらおうかな……。
漆塗りの立派なものはさておき、取りあえず握れて納める。それができるものを作るなら、さほど時間はかからない。
前日にヘレンに割ってもらった木材を、ナイフで削って形にしていく。
刀身を木材にあてて、おおよその長さや形を見極めたら、あとはいったんチートに頼る。
すると、どこを削れば良いかが「わかる」ので、それに従って削っていくだけだ。
チートに頼ることに思うところもないではないが、自分のものでもあるので、ここは積極的に使わせてもらう。
木材がなかなかの速さで形を変え、楕円形の断面をした、一本の棒のようになった。
前の世界で木工旋盤を使うような速さでも綺麗さでもないが、チート頼りとは言え、人力だけでやっていることを考えればなかなかの精度だと思う。
まあ「よく切れる」ナイフのおかげもかなりあるのだが。
できた棒を柄と鞘に分ける。これもナイフでストンと切るだけだし、それらを半分に割るのも一瞬でできた。
昼食を挟み、半分に割ったものが中空になるよう、柄も鞘も中を削る。
今回の刀は反りがないので、鞘の中の反りを合わせる必要が無いので、その分作業はスムーズに進む。
柄のほうは目釘が通る穴を今のうちに空けておいた。
中を削ったものに膠を塗り、貼り合わせる。鞘も柄もピッタリと張り付き、試しに差し込んでみたが、特に引っかかるようなことはない。
俺はホッと胸をなで下ろして、もう一つ作らなければいけないものを作る。
ハバキである。基本的には鞘から刀身がすっぽ抜けないようにするための金具で、日本刀の刃元あたりにある金色のものがそうだ。
これも普通なら、それなりの時間がかかるところだが、塗った膠が乾いていく合間に作れた。まぁ、そんな大きなものでもないからな。
「ここを削って、と」
柄と鞘、両方でハバキが当たるところを削る。アタリを見ながら削るので、貼り合わせてからのほうが都合が良い。
修正の作業も終えて、刀身を柄に差し込み、目釘で茎を止め、それを鞘に納めた。
一本の棒が俺の手に握られている。
「完成だ!」
俺がそれを掲げるようにすると、鍛冶場の中に感嘆と拍手が響くのだった。




