刀身の仕上げ
刀身の仕上げ、と言えば焼入だろう。
今回は急ぎ仕事ではあるので、刃文を決める土置きもなるべく早く済ませたい。
ということで、刃文は直刃にした。手を抜くというわけではなく、揺らぎがないぶん、迷いなく作業できるからだ。
土や炭、藁灰を混ぜたものを刀身に塗っていく。まずは全体にまんべんなく塗り、その後で刃から数ミリのところを並行に削る。
削る作業は切先のところでも行って、鋩子にする。あまり切先が大きくないが、突きの性能を考えれば必要な作業だ。
今回は反りも入れない直刀になるので、鎬地にもあまり土を置かないことにした。
これでギリギリのところまで熱して焼きを入れれば、思った通りの形になってくれる……はずである。
土置きを素早く済ませて、次はいよいよ焼入である。このあと刃をつけて刀身を磨けば、刀身が完成なので、最後の山場ということになるだろう。
なので、こればかりはチートの手助けがあっても、いざ出来上がるまでは緊張してしまう。
「よしよし」
土に覆われた刀身を火床に入れ、熱していく。今のところ想定通りの上昇率で鋼が熱くなっていっている。
適温の見極めはチートに手伝ってもらわなければならない。本来、人の身なら夜間か外光が入らないように暗くし、炎と鋼の色で判断するような繊細な作業だ。
そこを白昼の鍛冶場でやっているのだから、随分と楽をさせてもらっている。
適温になったことをチートが教えてくれ、俺は素早く火床から刀身を取り出すと、水槽に浸けた。
ジュウ、ブスブスと音を立てて、水槽から湯気が立ち上る。ほぼ反りが入らないようにしたので、手に伝わってくる感覚は鈍い。ニルダの刀を焼入したときのようにコンコンと小さく叩くような感触ではなく、弱くギュッと締まるようなそんな感覚だけが伝わってくる。
温度が十分下がったところで水槽から引き揚げると、刀身からも湯気が立ち上っている。生まれたての生きもののようにも見えるな。
加熱やらでこびりついて残っている土を削り落とす。
「おお、いいな」
現れたのは真っ直ぐな刀身と、真っ直ぐな刃。思ったよりも期待していた感じにできあがった。
ほんのり青みがかっているのは成分によるものか、それとも魔力が篭もっているからだろうか。
何にせよ、失敗ということはなさそうだ。
夕方前までをかけて、刀身を磨き、刃を研ぐ。スッと真っ直ぐな刀。家族の皆はこっちの形が馴染み深いかも知れない。剣は両刃で、こちらは片刃だが。
うーん、鞘は明日に回して柄を優先し、一度自分で振るってみるか……。
俺は木材を置いてあるところへ行くと、そのうちの一つを手に取った。




